136話─決戦! 騎士VS銃士!
「今度はこっちの番っすよっ! ビブラゼートブレード!」
「ふむ、バヨネットによる二連撃……なれば防げばよいだけのこと! ギガナイツシールド!」
攻撃を防ぎきったイレーナは、銃剣を振動させながら斬撃を放つ。それに対抗し、クラヴリンは大盾を構えて守りを固める。
刃と盾がぶつかり合い、その衝撃で両者は吹き飛ばされていく。あまりにも勢いが強く、お互い反動を殺せなかったようだ。
「ほう、ただのぶつかり合いだというのにここまで吹き飛ばされるとは。面白い、真っ向勝負とはこうでなくてはな!」
「まだまだ攻めの手は緩めないっす! フルバレットファイア!」
距離が離れたのを利用し、イレーナは連続射撃を行いクラヴリンを攻撃する。が、全弾掃射を行ってなお相手の守りが崩せない。
「いい選択だ、わざわざ我輩が接近するのをボサッと待っている阿呆はおらぬからな。しかし! この鎧も盾も、簡単には砕けぬぞ!」
「ちぇー、どうやらそうみたいっすね。なら、貫通力を高めるまで! ドリルバレット・ショット!」
素早くリロードを済ませ、攻撃のアプローチを変えるイレーナ。数で押すのではなく、一発一発の破壊力を高めて一点を狙うことを決めた。
突進してくるクラヴリンを見ながら、どこを狙うべきかを考える。撃ち抜くべきは頭か、胴か。イレーナの導き出した結論は……。
「よっし、あいつの胸板を撃ち抜いてやれー!」
「来るか……我が鎧と君の弾丸、どちらが勝るか勝負と行こう! アサルトホースドライブ!」
弾丸が発射されたのを見たクラヴリンは、急加速して自分から突っ込んでいく。全てを貫く弾丸と、あらゆる攻撃を弾く鎧。
両者がぶつかり合い、耳をつんざく金属音が広野に鳴り響いた。直後、何かが砕ける音が響きクラヴリンの脚が止まる。
「……これは驚いた。まさか……」
「あ、相打ちっすかぁ!?」
弾丸と鎧。ぶつかり合いの結末は、両者共に砕けるというものとなった。弾丸の破片が地に落ち、鎧の胸元に亀裂が走る。
「この鎧に傷を付けるとは。いや、本当に見事だ。実にいい気分だよ、なんなら歌でも歌いたいくらい心が高揚している」
「……不思議っすね、アタイもっす。今ので貫いてやるつもりだったのに、こういうオチになるとは思わなかったっすよ」
「ふっ、我輩もだ。この弾丸を打ち砕き、その勢いのまま反撃してやろうと思っていたが……よもや、よもやだこれは!」
両者共に思惑が不発になったものの、そんなことはどうでもいいようだ。ここまで互角の戦いが出来る相手との出会いに、二人とも喜んでいる。
「アンチェイン・ボルレアス……いや、イレーナ。我輩は君が気に入った。ここまで食らい付ける者が現れるのは久しぶりだぞ」
「こっちは逆に自信無くすっすよ、せっかくパワーアップ形態になったのに互角だなんて」
「ハハハ、そう拗ねないでいただきたい。逆襲のチャンスなど、まだいくらでもあるだろう!」
「それもそうっすね、なら遠慮なくいかせてもらうっす!」
話は終わりとばかりに、二人同時に走り出す。接敵と同時に、揃って攻撃を仕掛ける。クラヴリンがランスを突き出し、イレーナがそれをかわす。
お返しとばかりにバヨネットを振るい、斬撃のフルコースを見舞う。当然とばかりに猛攻を大盾で防ぎきり、さらにシールドバッシュを放つ。
「隙アリ! ウォールスパンダム!」
「来た! なら……とおりゃあっ!」
「!? バヨネットを……突き立てただと!?」
大盾を叩き付けられる瞬間、イレーナは咄嗟に刃を構える。バッシュの勢いを利用して、刃は盾に突き刺さった。
もっとも、大盾自体が分厚いため貫通まではしていないが。これで、クラヴリンは二択を迫られる事態となってしまう。
盾を捨てて離脱するか、盾を捨てずそのまま戦うかを。
(まずいな……盾を手放せば、攻撃を防ぐ手段を一つ失うことになる。鎧の強度が落ちている以上、ここで守りを捨てるわけには……)
(ふっふっふっ、迷ってる迷ってる。こうなった時点で、あんたはもうドツボにハマッてるんすよ。盾を捨てようと捨てなかろうと、利はこっちにあるっす!)
クラヴリンが盾を手放せば、イレーナが格段に攻めやすくなる。仮に手放さずこのまま密着状態から攻撃されても、問題はない。
リアクティブ・パンツァーによるカウンターが行える以上、今のイレーナに死角はない。咄嗟の行動が、圧倒的なアドバンテージを生んだのだ。
「……仕方あるまい。短期決着をつければよいだけのことだ!」
「盾を手放した……やっぱりそう来るっすね!」
「守りが薄くなるのはちと不安だが、追い込まれる前に仕留めてしまえばいいことだ! それに……盾が無い分、機動力はさらに上がる!」
数秒の逡巡の末に、クラヴリンは盾を手放すことを決めた。リーチの長いランスでは、密着状態での攻撃には不向き。
リアクティブ・パンツァーがある以上、必要以上に近寄るのはかえって不利になる。そう判断しての苦渋の決断だった。
クラヴリンが離脱し、イレーナは刃に刺さった盾を銃撃して破壊する。これで、相手の持っていた守りの手札は一つ消えた。
「さあ、覚悟するがよいイレーナ! 我がランスで貫いてくれる!」
「! は、速い! 目で追いきれな」
「獲った! ストレートフィニッシャー!」
「っぶな! リアクティブ・パンツァー!」
重い盾を手放したことで、格段に突進速度が上昇するクラヴリン。イレーナが気が付いた時には、すでに眼前に相手がいた。
攻撃を食らう直前、すんでのところでカウンターを発動し何とか窮地を逃れる。そのまま一発叩き込もうとするも、その前に離脱されてしまう。
「こうなった我輩はもう止まらぬぞ! アサルトラッシュ・トリリオン!」
「うっ、ぐっ! まずいっす、速すぎて全く反応出来ない……!」
身軽になった騎士は、縦横無尽に駆け巡りながらランスを振るう。連続攻撃を前に、イレーナは防戦一方に追い込まれた。
幸い、一撃そのものは軽くさほどダメージはない。が、それが積み重なれば……いくらアンチェイン・ボルレアスといえど耐えることは不可能。
「このまま一気にアーマーを削り、本体を仕留めさせてもらう! イレーナ、覚悟せよ!」
「むうう、こいつはやべぇっすね……でも、速すぎて攻撃を当てられるか……あいたっ!」
イレーナが反撃を叩き込めるタイミングはたった一つ。クラヴリンが方向転換する瞬間だけ。しかし、相手もそれを理解している。
方向を変えるタイミングをズラし、容易に反撃に転じられないよう慎重を期した攻めを続けている。不用意に守りを解けば、そのまま狩られるだろう。
(……何だか、思い出すっすね。アッチェレランドと戦った時も、だいぶ追い詰められたっけ。……あの時は、シショーたちがいたから勝てた、でも今は……)
今は、彼女一人だけ。仲間はカルゥ=オルセナの各地に散り、それぞれの敵と戦っている。今、盤面をひっくり返せるのはイレーナ本人だけなのだ。
「……アタイは諦めない、絶対に! たった一発、一発をブチ当てればあいつは倒せる。なら、やるしかない!」
「いい顔になったな、イレーナ。さあ、名残惜しいがそろそろフィナーレとしよう。我が腕に抱かれ息絶えるがいい、イレーナ!」
「そうはいかないっす。アタイは勝たないといけないんだ。シショーや姐御たちのために!」
装甲を穿たれながら、イレーナは叫ぶ。チャンスは一度、外せば次はない。全神経を集中させ、一発の弾丸をリロードする。
狙うは一カ所、亀裂が入った鎧だ。イレーナの動きを察知し、クラヴリンは大きく距離を取ってトドメの体勢に入る。
「これで終わりだ! 奥義……インフェクションドリラー!」
「見えた、今っす! 心眼一閃撃ち!」
クラヴリンが方向転換し、奥義を打とうとしたその一瞬。その隙を見逃さず、イレーナは弾丸を放つ。決して狙いを外さない、文字通り『必殺』の一撃を。
「まずい……一度この体勢になったらもう解けん!」
「いっけえええええ!!!」
「くっ、ならば今度こそ押し通るまでだ!」
ランスを回転させながら、イレーナ目掛けて突撃するクラヴリン。一度走り出したら、目標を撃破するまで止まれない。
二度目こそ、弾丸に打ち勝てるはず。そう信じて攻撃を敢行するが……勝ったのは、イレーナの想いの強さ、そして弾丸の力だった。
「! 鎧の亀裂が、広がって……まさか、我輩が負けるのか……!」
「これで……終わりだぁぁぁぁぁ!!」
「ぐっ……がはぁっ! イレーナ……見事!」
弾丸がクラヴリンの胸を貫き、遙か後方へ消えていく。走ることはもう出来ず、騎士は徐々に速度を落とし……ついに、倒れた。
己を下した、宿敵を讃えながら。




