134話─助っ人降臨!
「オボロ様、オボロさま!」
「シエル殿!」
カーテンの隙間からこっそり戦いを見守っていたシエルは、決着がついたのと同時に孤児院を飛び出し走り出す。
オボロも走り出し、二人は熱い抱擁を交わした。愛する者の無事を喜び、シエルは肩を震わせながら涙を流した。
「よかった、本当に……オボロ様が、勝って……生きていてくれて……」
「心配させて済まなかった。だが、悪は滅びた。もう、ここを狙う者はいない。それがしは、守り抜けたのだ……シエル殿たちを」
「はい、はい……!」
すすり泣くシエルの背に、オボロは腕を回し抱き締める。もう、彼の身体に金属の冷たさは宿ってはいない。
「シエル殿。それがしはキカイではなくなった。そなたと同じ、人間になったのだ」
「はい……以前にも増して、とても凛々しいお顔になられました」
少しだけオボロから身体を離し、シエルは相手の顔を見つめる。精悍な顔つきの青年となったオボロを見て、頬を赤くしていた。
「そなたは、変わらずそれがしを愛してくれるだろうか? キカイではなくなってしまったそれがしを」
「ふふ、おかしなことを言いますね。わたくしが愛しているのは、優しい心と勇敢な精神を持ったあなたなのですよ? 人であろうと、キカイであろうと。何の変わりもありません」
「……ありがとう。その言葉を聞けて、それがしは安心した。今、ここで誓おう。これからも、そなたへ変わることのない愛を注ぐと」
「……はい。わたくしも、同じく。あなたへの愛を、永遠に……」
二人は見つめ合い、再び互いの身体を抱き締め愛を確かめる。不死鳥のように、二人の愛もまた……不滅のものとなったのだ。
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オボロとカストルの戦いに決着がついた頃。アンネローゼはどうにか基地に帰り着くことが出来ていた。基地に入った瞬間、スーツが解除される。
メルクレアの最後の抵抗によって行われたスーツへの浸食が、ついに完了してしまったようだ。
「わっ、危なかった……ギリギリセーフってとこね。早く博士に直してもらって、戦線に復帰しなきゃ。博士ー、ギアーズ博士ー! どこにいるのー?」
ダイナモドライバーの中にバルキリースーツを収納し、アンネローゼは基地の中を歩く。ギアーズを呼ぶも、応答がない。
「変ね、基地にいるはずなのに……まさか、敵に襲われて!?」
「違イマス、現在ギアーズ博士ハメディカルルームニテ治療ヲ行ッテオリマス」
「あ、なーんだ。そうなの……って、誰かやられちゃったの!?」
嫌な予感を覚える中、一匹のつよいこころが飛んできて状況を説明する。ギアーズの無事にホッとしたのも束の間、アンネローゼは驚く。
「ハイ、フィル様ガ負傷シタ状態デ急遽オ戻リニナラレマシタ。胴体ニ弾丸ヲ」
「フィルくんが!!? 急いでメディカルルームに連れて行って、早く!」
「カシコマリマシタ、最短経路デオ連レシマス」
フィルが負傷したと聞き、アンネローゼはつよいこころの角を掴んでブンブン振り回す。彼女に急かされ、解放された虫型ロボは廊下を進む。
目的の部屋に案内されたアンネローゼは、早速中に入ろうとする。が、扉が開かない。よく見てみると、扉の上には『手術中』のパネルがあり、点灯していた。
「手術……って、そんな重傷なの……?」
「ハイ。胴体ヘノ弾痕ヲ二ツ確認。片方ハ左脇腹ヲ貫通シ、モウ片方ハ体内ニ留マッテイマシタ。現在、博士ガ弾丸ノ摘出手術ヲ行ッテイマス」
「助かる、のよね? フィルくん……死んじゃったりしないよね?」
「……計算シタ結果、成功確率は八十四パーセントデス」
「中途半端ね……でも、今は手術が成功するのを祈るしかないわ。フィルくん……博士……」
すっかり気力が抜け落ちてしまい、アンネローゼはその場に座り込んでしまう。今の彼女には、何も出来ない。
無事手術が終わり、フィルが助かることを祈ることしか出来ないのだ。そんな彼女たちの元に、忍び寄る気配が一つ……。
「ブロロロ、見えてきたぞ。あのテーブルマウンテンの中に、奴らの基地があるのだな」
ヴァルツァイト・ボーグとの連携でフィルを退け、一人進軍していたルック・ゴライア。彼はついに、基地の目と鼻の先まで到達していた。
「この辺りで……よかろう。あまり近すぎても……迎撃兵器に破壊されかねん。今こそポータルを……む?」
最後の兵団を送り込むためのポータルを設置するための準備に取りかかろうとするゴライア。その時、遙か上空に二つの気配が現れたのを察知した。
「見えますか? あの平べったい山……テーブルマウンテンが彼らの拠点です」
「うひょ~、マジ壮観~。チョーいい眺め、みたいな~?」
遙か上空に、一つのワープゲートが開く。その中から、骨で出来た怪鳥が飛び出して基地周辺を旋回し始める。
その背に乗るは、二人の人物。片方は、怪鳥……スケルトンバードを操るアゼル。もう片方は、全身をキラキラにデコったフード付きマントで覆った女だ。
「あまり近付き過ぎると、迎撃用の兵器が作動しかねません。ここで降りてもらいますが、大丈夫ですね?」
「もっちのロン! うち、これくらいの高度からなら飛び降りても全然へーきだし~」
「忘れないでくださいよ、今の貴女はもうサイボーグではないんですからね? 蘇生の炎を三回分与えてあるとはいえ、無茶をすれば死にますよ」
ヘラヘラ笑う女に、アゼルが釘を刺す。が、あまり効果はないようだ。グッとサムズアップし、女は笑いながら答える。
「あいあい、わぁってま~す。ありがとね~、アゼルっち。今度、お礼に美味しーパンケーキ奢ったげる」
「ええ、楽しみにしてますよ。忘れ物はないですね? コリンさんに持ってきてもらった『ダイナモドライバー』を忘れたなんてなったら、洒落になりませんよ!」
「だいじょぶだいじょぶ、ちゃーんと着けてるから。んじゃ、行ってきゃ~す!」
「ご武運を、貴女に生命の炎の加護があらんことを!」
やり取りを終えた後、女はボーンバードの背から飛び降りる。アゼルはそう声をかけ、ワープホールの中に戻っていった。
「うっひゃ~、自由落下さいこー! えっへへへ、アンネちん驚いてくれっかな~。見事復活したうちの大活躍を!」
風に煽られ、フードがはだける。現れたのは……満面の笑みを浮かべる、レジェの顔だった。アゼルの手により、復活を遂げたのだ。
「ブロロロ……何か落ちてくるな。まさか、新手の敵……か? 有り得る、援軍が来たようだな……」
「ひゃ~! 流石にこの高さは死ぬぅ~! へべっ!」
勢いよく飛び出したはいいが、アゼルの言った通り今のレジェは生身の闇の眷属。復活に際して多少身体を強化してもらってはいるが……。
数百メートルの高さからダイブした程度では死なないものの、痛いものは痛い。おもいっきり地面に叩き付けられ、びったんびったん跳ねる。
「ふおおおお! 顔、顔打ったぁぁぁぁほぁぁおおおおお!!」
「ブロロロ……貴様、まさかエモーか!? マッハワン共々、奴らに討たれて死んだと思っていたぞ」
「ふお……む、その声! ブロちんじゃな~いの! おっひさ~☆」
「おひさー……ではない! 貴様、今まで何をしていた? まあいい、ちょうどいいところに来た……手伝え、シュヴァルカイザーを仕留める準備をする」
突如降ってきた相手の正体を知り、そう声をかけるゴライア。だが、彼は知らない。とうの昔に、レジェはカンパニーと袂を分かっていることを。
「……やーだね。その子さ~、うちの親友の彼ピッピなんだよね。殺させるわけにいかないんよ」
「なに? ……ああ、そうか。貴様……裏切ったのだな、ヴァルツァイト様を」
「ふーんだ! 辞表を受け取ってくんないブラック企業なんてもう知らないし~! うちはこれから、アンネちんたちの仲間として生きるのだ! ってわけで、手始めにブロちんを倒して土産にしちゃうよ!」
「ブロロロ……やってみろ。貴様の実力で、オレを倒せるのならな!」
ヴァルツァイト一味との最終決戦。第一の助っ人が今、人知れずカルゥ=オルセナへ降り立ったのであった。




