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134話─助っ人降臨!

「オボロ様、オボロさま!」


「シエル殿!」


 カーテンの隙間からこっそり戦いを見守っていたシエルは、決着がついたのと同時に孤児院を飛び出し走り出す。


 オボロも走り出し、二人は熱い抱擁を交わした。愛する者の無事を喜び、シエルは肩を震わせながら涙を流した。


「よかった、本当に……オボロ様が、勝って……生きていてくれて……」


「心配させて済まなかった。だが、悪は滅びた。もう、ここを狙う者はいない。それがしは、守り抜けたのだ……シエル殿たちを」


「はい、はい……!」


 すすり泣くシエルの背に、オボロは腕を回し抱き締める。もう、彼の身体に金属の冷たさは宿ってはいない。


「シエル殿。それがしはキカイではなくなった。そなたと同じ、人間になったのだ」


「はい……以前にも増して、とても凛々しいお顔になられました」


 少しだけオボロから身体を離し、シエルは相手の顔を見つめる。精悍な顔つきの青年となったオボロを見て、頬を赤くしていた。


「そなたは、変わらずそれがしを愛してくれるだろうか? キカイではなくなってしまったそれがしを」


「ふふ、おかしなことを言いますね。わたくしが愛しているのは、優しい心と勇敢な精神を持ったあなたなのですよ? 人であろうと、キカイであろうと。何の変わりもありません」


「……ありがとう。その言葉を聞けて、それがしは安心した。今、ここで誓おう。これからも、そなたへ変わることのない愛を注ぐと」


「……はい。わたくしも、同じく。あなたへの愛を、永遠に……」


 二人は見つめ合い、再び互いの身体を抱き締め愛を確かめる。不死鳥のように、二人の愛もまた……不滅のものとなったのだ。



◇─────────────────────◇



 オボロとカストルの戦いに決着がついた頃。アンネローゼはどうにか基地に帰り着くことが出来ていた。基地に入った瞬間、スーツが解除される。


 メルクレアの最後の抵抗によって行われたスーツへの浸食が、ついに完了してしまったようだ。


「わっ、危なかった……ギリギリセーフってとこね。早く博士に直してもらって、戦線に復帰しなきゃ。博士ー、ギアーズ博士ー! どこにいるのー?」


 ダイナモドライバーの中にバルキリースーツを収納し、アンネローゼは基地の中を歩く。ギアーズを呼ぶも、応答がない。


「変ね、基地にいるはずなのに……まさか、敵に襲われて!?」


「違イマス、現在ギアーズ博士ハメディカルルームニテ治療ヲ行ッテオリマス」


「あ、なーんだ。そうなの……って、誰かやられちゃったの!?」


 嫌な予感を覚える中、一匹のつよいこころが飛んできて状況を説明する。ギアーズの無事にホッとしたのも束の間、アンネローゼは驚く。


「ハイ、フィル様ガ負傷シタ状態デ急遽オ戻リニナラレマシタ。胴体ニ弾丸ヲ」


「フィルくんが!!? 急いでメディカルルームに連れて行って、早く!」


「カシコマリマシタ、最短経路デオ連レシマス」


 フィルが負傷したと聞き、アンネローゼはつよいこころの角を掴んでブンブン振り回す。彼女に急かされ、解放された虫型ロボは廊下を進む。


 目的の部屋に案内されたアンネローゼは、早速中に入ろうとする。が、扉が開かない。よく見てみると、扉の上には『手術中』のパネルがあり、点灯していた。


「手術……って、そんな重傷なの……?」


「ハイ。胴体ヘノ弾痕ヲ二ツ確認。片方ハ左脇腹ヲ貫通シ、モウ片方ハ体内ニ留マッテイマシタ。現在、博士ガ弾丸ノ摘出手術ヲ行ッテイマス」


「助かる、のよね? フィルくん……死んじゃったりしないよね?」


「……計算シタ結果、成功確率は八十四パーセントデス」


「中途半端ね……でも、今は手術が成功するのを祈るしかないわ。フィルくん……博士……」


 すっかり気力が抜け落ちてしまい、アンネローゼはその場に座り込んでしまう。今の彼女には、何も出来ない。


 無事手術が終わり、フィルが助かることを祈ることしか出来ないのだ。そんな彼女たちの元に、忍び寄る気配が一つ……。


「ブロロロ、見えてきたぞ。あのテーブルマウンテンの中に、奴らの基地があるのだな」


 ヴァルツァイト・ボーグとの連携でフィルを退け、一人進軍していたルック・ゴライア。彼はついに、基地の目と鼻の先まで到達していた。


「この辺りで……よかろう。あまり近すぎても……迎撃兵器に破壊されかねん。今こそポータルを……む?」


 最後の兵団を送り込むためのポータルを設置するための準備に取りかかろうとするゴライア。その時、遙か上空に二つの気配が現れたのを察知した。


「見えますか? あの平べったい山……テーブルマウンテンが彼らの拠点です」


「うひょ~、マジ壮観~。チョーいい眺め、みたいな~?」


 遙か上空に、一つのワープゲートが開く。その中から、骨で出来た怪鳥が飛び出して基地周辺を旋回し始める。


 その背に乗るは、二人の人物。片方は、怪鳥……スケルトンバードを操るアゼル。もう片方は、全身をキラキラにデコったフード付きマントで覆った女だ。


「あまり近付き過ぎると、迎撃用の兵器が作動しかねません。ここで降りてもらいますが、大丈夫ですね?」


「もっちのロン! うち、これくらいの高度からなら飛び降りても全然へーきだし~」


「忘れないでくださいよ、今の貴女はもうサイボーグではないんですからね? 蘇生の炎を三回分与えてあるとはいえ、無茶をすれば死にますよ」


 ヘラヘラ笑う女に、アゼルが釘を刺す。が、あまり効果はないようだ。グッとサムズアップし、女は笑いながら答える。


「あいあい、わぁってま~す。ありがとね~、アゼルっち。今度、お礼に美味しーパンケーキ奢ったげる」


「ええ、楽しみにしてますよ。忘れ物はないですね? コリンさんに持ってきてもらった『ダイナモドライバー』を忘れたなんてなったら、洒落になりませんよ!」


「だいじょぶだいじょぶ、ちゃーんと着けてるから。んじゃ、行ってきゃ~す!」


「ご武運を、貴女に生命の炎の加護があらんことを!」


 やり取りを終えた後、女はボーンバードの背から飛び降りる。アゼルはそう声をかけ、ワープホールの中に戻っていった。


「うっひゃ~、自由落下さいこー! えっへへへ、アンネちん驚いてくれっかな~。見事復活したうちの大活躍を!」


 風に煽られ、フードがはだける。現れたのは……満面の笑みを浮かべる、レジェの顔だった。アゼルの手により、復活を遂げたのだ。


「ブロロロ……何か落ちてくるな。まさか、新手の敵……か? 有り得る、援軍が来たようだな……」


「ひゃ~! 流石にこの高さは死ぬぅ~! へべっ!」


 勢いよく飛び出したはいいが、アゼルの言った通り今のレジェは生身の闇の眷属。復活に際して多少身体を強化してもらってはいるが……。


 数百メートルの高さからダイブした程度では死なないものの、痛いものは痛い。おもいっきり地面に叩き付けられ、びったんびったん跳ねる。


「ふおおおお! 顔、顔打ったぁぁぁぁほぁぁおおおおお!!」


「ブロロロ……貴様、まさかエモーか!? マッハワン共々、奴らに討たれて死んだと思っていたぞ」


「ふお……む、その声! ブロちんじゃな~いの! おっひさ~☆」


「おひさー……ではない! 貴様、今まで何をしていた? まあいい、ちょうどいいところに来た……手伝え、シュヴァルカイザーを仕留める準備をする」


 突如降ってきた相手の正体を知り、そう声をかけるゴライア。だが、彼は知らない。とうの昔に、レジェはカンパニーと袂を分かっていることを。


「……やーだね。その子さ~、うちの親友の彼ピッピなんだよね。殺させるわけにいかないんよ」


「なに? ……ああ、そうか。貴様……裏切ったのだな、ヴァルツァイト様を」


「ふーんだ! 辞表を受け取ってくんないブラック企業なんてもう知らないし~! うちはこれから、アンネちんたちの仲間として生きるのだ! ってわけで、手始めにブロちんを倒して土産にしちゃうよ!」


「ブロロロ……やってみろ。貴様の実力で、オレを倒せるのならな!」


 ヴァルツァイト一味との最終決戦。第一の助っ人が今、人知れずカルゥ=オルセナへ降り立ったのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] オボロは勝ち星上げて新たな人生まで得たか(ʘᗩʘ’) アンネもギリ帰還できたけど戦線復帰は難しいか(↼_↼) フィルも容赦ない奇襲で緊急手術か(٥↼_↼) 敵は待ってくれないけどまさかコリ…
[一言] ……どうやら、オボロが人間に成って復活したのは この布石のようだなァァァァ!!!
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