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107話─明かされる出会いの秘密

 まだギリギリ許容限界は来ておらず、アーマーも破損を免れている。今なら行けると判断し、ジェディンは一気に走り出す。


 目指すは、巨大な大砲と化したリリーとルルー。必殺の一撃を叩き込むことさえ出来れば、その時点で勝利が確定する。


「むお~、まだ死なない! こうなったら、エネルギー限界突破だー!」


「ありったけの魔力を~、ブチ込んでやるー! 覚悟しろコラー!」


「向こうも最後の攻勢に出てくるか……。なら、先手必勝で仕留めるのみ! 行くぞ……エネルギーチャージ、七百パーセント!」


 全魔力を乗せた攻撃が放たれる直前、一瞬だけレーザーの威力が弱まる。その隙を逃さず、ジェディンは蓄積したエネルギーの一部を使い加速した。


「わっ、はやっ!?」


「ダメ、もう間に合わない!」


「これで決着だ、海産物コンビ! ……オボロがそうしたように、お前たちにも教えてなる。先生から預かってきた記憶を見るがいい! そして、敗北と共に思い知れ! フィルの過酷な半生を!」


 一気にリリーたちの目の前に移動し、四本の鎖を伸ばし……二本ずつ、相手の身体に突き立てる。膨大なエネルギーと共に、あるものを流し込む。


 ギアーズの記憶の一部を抜き出し、魔力へと変換したものを。彼女たちに記憶を見せることで、フィルを認めさせるつもりなのだ。


「食らえ! アブソリュートペイン・アベンジャー!」


「あびゃーーーー!!!」


「な、なんか来るぅぅぅぅぅ!!!」


 鎖を通して、リリーとルルーは膨大な魔力を流し込まれる。激しい魔力の奔流で頭が狂いそうになる中、彼女たちは見ることとなる。


 ギアーズとフィル、二人がどのようにして出会ったのか……当時の記憶を。



◇─────────────────────◇



『うー、今日も寒いのう。もう一年も終わりか……今年も資金繰りに苦労したわい』


 雪が降る大通りを、ギアーズが一人歩く。所属していた大学を追われてからはや数年、彼はインフィニティ・マキーナの研究に精を出す日々を送っていた。


 一年の最後を祝う祭り、輪廻祭がもうすぐ行われるとあって街は賑わっている。懐は寒いが、祭りにでも参加しようか……と考えながら道を歩く。


『みな楽しそうじゃな。どれ、今年くらいはわしも祭りに……ん? これ、そこの君。一体何をしておるんじゃ?』


 その時、ふとギアーズは気配を感じ横を向く。狭い路地裏に、うずくまる人影があった。もしや、具合でも悪いのではないかと心配し、近寄っていく。


『お前、誰だ……。僕に近寄るな!』


『子ども、か? そんな薄着で……靴も履いておらぬではないか。一体どうしたんじゃ』


『うるさい! 僕に関わるな! どうせ、お前だって僕を……う、うえぇっ!』


 路地裏には、ぼろきれを纏ったみすぼらしい浮浪児……フィルがいた。残飯をあさっていた少年は振り返り、敵意に満ちた目でギアーズを睨む。


 当時のフィルは仲間の仕掛けた冤罪で冒険者ギルドを追われ、人間不信に陥っていた。今にも襲いかからんとしていたが、突如嘔吐しはじめる。


『ああっ、いかん! 君、すぐ医者に診せてあげよう。さ、わしと来なさい!』


『うる、さい……あっち、い……け……』


 なおも敵意を剥き出しにするフィルだったが、その場に倒れ気絶してしまう。ギアーズは吐瀉物まみれになるのも構わずフィルを抱え、大通りを走る。


『おじいさん、危ないところでしたね。この子、かなり胃腸を悪くしてますよ。あと少し治療が遅れていたら死んでいましたよ、ええ』


『そうですか……いや、間に合ってよかった。この子は治りますかのう?』


『薬を五日分出しておきますので、それを飲ませてあげてください。あとはしっかりした食事を摂らせてあげれば、すぐ回復します。では、お大事に』


『年の瀬に済みませんのう。いや、ありがとうございました』


 医者に診てもらったことで、フィルはギリギリで生を繋いだ。当時ギアーズが住んでいた借家にて、二人の生活が始まる。


 最初はギアーズを拒絶し、頻繁に家出を繰り返していたフィル。が、その度にギアーズは彼を根気強く探し出し、家に連れて帰っていた。


『……ねえ、おじいさん。なんでおじいさんは僕に構うの。おじいさんと僕は赤の他人……僕が死んだって困らないでしょ』


『何を言っておる、このおバカめ。行く当てもない孤児を見殺しにするほど、わしは薄情ではないぞ。そんなことをしたら、教え子たちに顔向け出来ん。ほれ、スープが出来たぞ。はよう飲め』


『……うん。おじいさん、その……ありがとう』


 ギアーズの優しさに触れ、少しずつフィルの人間不信が解消されていった。二人で暮らすうちに、ギアーズはフィルの過去を聞かされる。


『……そうか。そんなことがあったのじゃな。おぬしも気の毒に……よし、これからはわしの孫として暮らすがええ。もうひとりぼっちにはさせぬからな、フィル』


『うん! ありがとう、おじいさん!』


『ほっほっ、ようやくわしにも孫が出来たか。うむ、新年早々喜ばしいことだわい』


 すっかり打ち解けた二人は家族となり、貧しいながらも幸せに暮らしていた。そんなある日、ギアーズは研究のことで悩んでいた。


『むうう……ダメじゃ! どうこねくり回してもインフィニティ・マキーナの動力問題が解決せん! くぅ……やはり、夢は夢のままで終わるのか……』


『……博士、また悩んでいるんですか?』


『おお、フィル。なに、心配いらんよ。おぬしが気にすることはないさ』


 設計図をビリビリに破き、投げ捨てるギアーズ。そこに、牛乳配達の仕事を終えたフィルが帰ってきた。落胆しているギアーズを見て、フィルは決心する。


『博士、もし……僕が博士の悩みを解決出来ると言ったら、協力させてくれますか?』


『なぬ? それはどういう……』


『今まで話していませんでしたが……実は、僕は』


 ここに来て、フィルはこれまで隠してきた素性を全て話した。並行世界を渡る力を持つ、特別な一族の一員であること。


 決して尽きぬ無限の魔力を持っており、研究に役立てられるかもしれないということ……全てを、信じてもらえないかもしれないと思いながら打ち明けた。


『僕、博士に助けてもらってからずっと考えていたんです。いつか、今度は僕が博士を助けたいって。役に立って、恩返ししたいって』


『フィル……』


『僕の力があればきっと、インフィニティ・マキーナを完成させられる……。そうすれば、博士の夢が叶う。そのお手伝いをしたいんです!』


『……ありがとう。よく打ちあけてくれたのう。わしはそう言ってもらえただけでも嬉しいよ。では……わしのために、力を貸してくれるか? フィル』


『はい! 博士のためなら、喜んでこの力を使いますよ!』


 一切の疑念を抱くことなく、ギアーズはフィルの言葉を、想いを受け入れた。そうして、二人は協力して研究を進め……やがて、最初のインフィニティ・マキーナであるシュヴァルカイザースーツを作り出すことになるのだった。



◇─────────────────────◇



「きゅう~……ハッ! ルルー、大丈夫? 生きてる?」


「生きてるよ~……ぐちゃぐちゃの肉塊になっちゃったけど、ぜんぜんへいきー……ごめんむり……」


「……驚いた。オボロの話を聞いてはいたが、ここまでやってまだ死なないとは。神……いや、まるで怪物だなこれは」


 一連の記憶を見終えたリリーとルルーは、意識を取り戻す。二人ともおぞましい肉片に変わり果てていたが、それでも生きていた。


 ジェディンはその光景を見て、改めて魔神の恐ろしさを認識させられた。とはいえ、彼ももう限界。お互いに、これ以上戦うのはもう無理だ。


「はー、すっごい痛かった。でも、結構楽しかったねルルー」


「そうだね、リリー。シュヴァルカイザーの過去も知れたしねー。あの子も、苦労してたんだねー」


「ああ、そうだ。先生がいなければ、フィルはとっくに死んでいたろう。彼がヒーローとなり、人々を救うこともなかった。フィルは……先生に救われて、今度は自分が誰かを救う存在になれたんだ」


 アーマーの維持も出来なくなり、生身に戻ったジェディンは座り込みながらそう口にする。とりあえず首から上だけ再生させたリリーとルルーは、互いに見つめ合い頷く。


「いいよ、認めてあげる。シュヴァルカイザーは悪い子じゃないって」


「むしろいい子だったねー。あんなやさぐれてたのに、バッチリ再起してたもん」


「……認めてくれたか。よかった……これで、少しは休んでも……バチは当たらないな」


 リリーたちにフィルを認めさせることが出来たジェディンは、安堵の笑みを浮かべる。そのまま寝転がり、疲れた身体を癒やすのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] これがフィルと博士のビギンズナイトか(ʘᗩʘ’) ここから二人が二人三脚で歩んで来たのか(◡ω◡)聞く人にもよるがリリ・ルルコンビの頭ならお涙頂戴のシーンでズビビ泣きするかと思ったが(゜o…
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