とある楽屋にて
ここはテレビ局の楽屋。そこにはスタイリストさんが居て、全く眠れなかったせいで出来てしまった目下のクマを綺麗に削除。生放送は昼過ぎで、本来なら30分前の打ち合わせに間に合えばOKだけど、私は朝一からスタンバイしているのだ。
「きらら、落ち着いた?」
「はっ、はい! もう平気へっちゃらですよマネージャーさん!!」
「あはははは、駄目だこりゃ」
「ううっ、すみません」
アイドルなのに、初のテレビ出演がまさかのワイドショーで、私が座るゲスト席の隣は年配の政治家さんと大学教授。こんな場違いデビューを飾るアイドルが今まで居ただろうか?
「あの? それで私は一体何を話せば?」
「台本通りに喋ればOK。あとは司会が上手く回してくれるから、とにかく笑顔! 頭が真っ白になって台詞を忘れてもいいから、笑顔だけは忘れないでね」
「はっ、はい!」
笑顔を忘れない。
それはアイドルとして当然のスキルで、ずっと練習してきた事だから、きっと大丈夫!!
「それにしても、まさかこんな形でチャンスが巡ってくるとはねぇ。私もマネージャー長いけど、こんなの初めてよ」
「私も急にマネージャーさんからの電話で『テレビを見ろ』って言われた時は何事かと思いましたよ」
そこには私の名前が表示で、ツイッターも物凄い事になって、訳が分からないまま呆けていたら、またマネージャーさんからの電話で、翌日テレビ出演決定。もうシンデレラもビックリなサクセスストーリーである。
「今のトレンドは間違いなくあなた! 500万を注ぎ込んでまで会いたいアイドルがどんな子か? 世間はそれを知りたがっているのよ! しかも騙されそうになった彼氏を彼女が止めて詐欺グループ逮捕。いい具合に笑い話になったのが功を奏したわ」
「でも私、何もしてなのに良いのかな?」
「良いに決まってるでしょ! 今までの地道な活動があってこその500万だと思いなさい。だからこのチャンス、絶対ものにするのよ!!」
「はっ! はひっ!!」
マネージャーの気迫に圧されてコクコクと頷く私。
チャンスは突然やってくるものだけど、もうちょっとソフトにしてほしかったかな。
「この知名度UPは大きいわ。広告で500万使うよりよっぽど効果的で、ファンの特別視は駄目だけど、それでもこの高校生カップルには感謝しないとね」
高校生カップル。
つまり同世代で、私と同い年だったりするのかな?
「すみません。その高校生カップル、名前って分かります?」
「ちょっと待って。非公開だけど警察官に探りを入れたから。えっと……、彼氏の名前は“固城一途”だそうよ」
「えっ!? 固城一途くん!?!?」
「あら? 知ってるの?」
「はい。私のデビュー当初から応援してくれて、最近の握手会にも来てくれたので」
「へぇ、それは嬉しい限りだけど、その固城君、大丈夫なの? 必要なら出禁にしておくけど?」
「いえいえ! 固城くんなら大丈夫です!」
「そう? ならいいけど」
彼のおかげで知名度UP・テレビ出演に至った以上、その見返りが出禁は余りにも可哀想だ。それに固城くんは悪いイメージが全然で、しかもパワフルな彼女が居る。
握手会で固城くんが私に告白をして、その横に居た彼女がニッコリ笑顔で割り込んできてから、
“因みに私は、たった今あなたに大好きって宣言した男の彼女で~す”
ぷっ(笑)
あの時は我を忘れて素のツッコミをしちゃって、今思い出しただけでも笑いが込み上げてくる。
「すみません、彼女の名前は分かります?」
「ええっと…、“見守優子”だそうよ」
「固城一途くんに、見守優子さん」
私を応援してくれるカップルさんで、きっとラブラブなんだろうなぁ。だからもし次の握手会で2人に会えたら、ちゃんとお礼を言わないとだね。
「落ち着いた?」
「はい、もう大丈夫です」
ずっと緊張しっぱなしだったけど、2人のおかげでリラックスできたかな。
それじゃあ2人がくれたチャンス、頑張ってものにしよう!!!
これで3人が関わっても大丈夫なフラグが立ちましたね!(笑)




