その5
気まぐれ更新気まぐれ更新。
おっさんのほうが色々あって怖いんです。
「さーて、ぱっぱと片付けないとね~」
「姉さん、お手伝いします」
クレアはもちろんだが、なぜかジェシカまでが拓朗の家を家事を片付けていく。二人とも特に科学魔法を使っている形跡は無いが、協力しあって文字通りぱっぱと片付けていく。金髪の美女と、栗毛の美女二人が日本の一般家庭の家で家事をやっている姿はなんとも表現しがたい風景である。
ジェシカは身長162センチぐらいで髪型をセミロングにしており、大人しめの雰囲気を漂わせている。 顔はシミなどは一切無く、美人と可愛らしいの中間と言う表現が似合う。 体系のほうは胸こそクレアほどでは無いが大きく、全体的にバランスが良い。突然の登場だったのに、クラスメートが声をかけるのも納得な美人さんである。
「これでひと段落かな、後はご飯までのんびりできるかな~?」
「さすが姉さん、無駄が無いですね」
拓朗一人でやるとなると、おそらく1時間以上は間違いなく掛かってしまいそうな掃除に洗濯物の取り込み、晩御飯の仕込みなどなど、結構な量の家事だったのだが……それを20分掛からずに、クレアとジェシカの二人は全て済ませてしまったのだ。
「で、姉さん。今の姉さんの状況はどうなっているんです?」
ジェシカはそうクレアに質問を投げかけた。まあわざわざクレアの事を遠くから追いかけてきたぐらいなのだから、今の状況を知りたいと思うのも無理は無い話だろう……。
「今? 今はたっくんのお嫁さんになる途中カナ? いやー、たっくんがかなり手強くてね~」
と思ったら、言葉のビーンボールが予想外の角度から拓朗に向かって飛んできた。
「オイオイ……クレアは突然やってきて、この家に居座っちゃっただけだろ」
必死で拓朗は言葉のビーンボールを必死に回避する準備に入る。ところが。
「ふむ、たっくんさん? 本当のお名前は?」
「あ、はい。拓朗と言います」
そこに予想外のジェシカと言う存在がででんと姿を現す。
「私の姉さん……つまりクレア姉さんなんですが、姉さんの髪の毛の色、何色に見えていますか?」
「え? 綺麗な金髪ですよね?」
拓朗は頭に? を浮かべつつジェシカに返答を返す。
「姉さんの髪の毛を金髪として見れる人の条件は、姉さんが親しいと思っている人か、私達のような魔人、魔女に限られているってご存知でした?」
哀れ、クレアから投げられた言葉のビーンボールは、ジェシカと言う存在に起動を曲げられ、拓朗に見事命中、と言うか直撃した。
「それ、本当なのか?」
拓朗は冗談だよな? と願いつつクレアの顔を見るが。
「うん、ジェシカちゃんの言ってる事は本当だよ、私の本来の髪の毛の色を見る事が出来るのは、一般人だとたっくんだけだよ~? 嬉しい? ねえうれしい?」
キャッ♪ と、明らかに作った動作で、恥ずかしがる振りを大げさにするクレア。
「何でそんなマネを?」
純粋な疑問の為に、拓朗は更にクレアに対して質問を重ねるが。
「うん、魔女ってことで今までに色々とあったから……その点日本はいいね。宗教とかを原因とした差別は本当に少ないもの」
そういうことか、と拓朗も納得する。以前よりは少ない、とはいっても魔人、魔女という呼び方は過去にヨーロッパであったあの出来事を連想させる。日本人にはあまりぴんと来ない話なのだが、他国では大本が同じ宗教であっても、派閥が違うと言うだけで争いが繰り返されてきた悲しい歴史がある。その影響は今の時代になっても残念ながらしっかりと残っており、人類は大して進歩できていないと評する歴史家もいる。
「そんな姉さんも、とうとう本当の自分を見せれる人を捕まえたのですね」
うれし泣き? をしそうな状態になっているジェシカに向かって拓朗は『捕まる予定は一切無いんですけど!』とは流石に言い出せず、黙っているしかなかった。
「ジェシカちゃんの方は相変わらず?」
「──はい」
一転して、暗い表情になるジェシカ。
「ああ、たっくんは訳がわからないよね。 恐らくたっくんもうすうす気が付いてきていると思うけど、ジェシカちゃんも魔女よ。魔女特性は空気」
「!」
さらっとクレアから言われた内容に、拓朗は驚きを隠す事が出来なかった。空気を操れると言う事は……人助けも可能だが、殺しの技術として一級品だと理解してしまった。 人の周りにある空気の濃度を変えれば、~が出来るという事を書いたマンガも多い。
「だから、ジェシカちゃんも色々と苦労しているのよ~」
「姉さん、私の特性を拓朗さんにわざわざばらさなくても!」
ジェシカはクレアにそう詰め寄るが……。
「たっくんなら大丈夫。驚きはしてるけど逃げようとはしてないでしょ?」
何が大丈夫なんだ、とクレアに反論したくなった拓朗だが、捨てられた子犬のような目をしているジェシカを見た途端何も言えなくなった。
「拓朗さんも恐らく想像したでしょうが、私の事を"天然暗殺の魔女"と呼ぶ人は悔しいですけど少なくありません。もちろん実際はそんな事をやっていませんし、暗殺を指示をされたときは証拠をつかんで、指示した人間を逆に牢獄に送りましたから。その苦しい時に協力してくださったのが、クレアお姉さまです」
「魔人、魔女にもジェシカちゃんは恐れられていてね、友達も居ないし誤解もいっぱい受けていたの。だから私がお姉さんがわりに~ってね」
ジェシカがクレアを姉さんと呼ぶのは、そういう経緯があったからか……絶望の淵からすくい上げた……言葉としては実に陳腐だけど、実際にその事を成すことは難しい筆頭格の内容をクレアはやってのけたわけだ。だからお姉さま、と呼んで慕っているのだろう。
「しかし、音に空気か……二人が組んだら、ちょっかいを出そうと言う輩はいないんじゃ……?」
もし悪用する気なら、とっくに悪事を実行していてもおかしくない組み合わせである。そういった自分にすら簡単に思いつく幾つかの悪事を多分、一切行なっていないであろうこの二人は、基本的には善人だろうと思いたいと拓朗は考える。
「あー……アハハ……」
「少し前の話になるのですが、姉さんに惚れているらしい魔人が数人いましてね、あまりに失礼な態度を姉さんに取るので、その時の国に申請して正当な決闘を行い、叩き潰してあげたこともありましたね」
苦笑するクレアに、過去にあった武勇伝の一部を教えてくれるジェシカ。
「なるほど。まあ俺としては派手に暴れるとかしないでくれるのなら、これと言って文句を言うつもりは無いけど」
極端な争いが無いのなら魔人・魔女も一般人も変わらない。逆に言えば一般人だって変に包丁や科学魔法を振り回せば危険人物だ。だからそういう意味でも魔人だから、魔女だからで区別すること自体に意味は全くない。
「そういってくれる人は本当に少ないのですよ、拓朗さん」
寂しそうにジェシカが笑う。
「こっちが何もしないのに言いがかりをつけてくる馬鹿が多いから、たっくんは実に癒されるね」
クレアの言葉も偽りなき本心だろう。やはりどうしても、そういう人間の想像から来る身勝手な恐怖が言いがかりへと発展し、それが行き過ぎると魔人、魔女の施設を襲撃と言う動きに繋がるのだろう。
「自分達の心の方がよっぽど恐ろしい凶器と化していることに、一切気が付いていないんだな……そういう連中は」
拓朗はそう結論付ける。
「まったくだよね~、こんな可愛い女の子が血なまぐさい事を好むわけ無いじゃない、ねえ?」
「自分の事を堂々と可愛いとか言うなよ……」
クレアの台詞に拓朗は呆れつつも突っ込む。ジェシカはそんな二人を見てくすくすと笑っている。
「ああそういえば。ジェシカちゃん、泊まる場所は決まっているの?」
「いえ、適当にホテルでもこれから探そうかなと考えていますが」
ジェシカの返答をきいたクレアはうーんと少しの間考えた後に、開口一発、こう言い放った。
「じゃあここに泊まりなよ! たっくんの両親は私が説得するから!」
「「はぁ!?」」
この予想外な提案に、拓朗とジェシカの声が見事にハモっていた。
ジェシカさんのプロフィールはそのうち。
クレアよりも可愛いと言う表現が似合う女性です。(クレアは美人系)




