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なぎっちゃの異世界満喫生活~ネトゲキャラになって開拓村で自由気ままに過ごします~  作者: Leni
第二章 なぎっちゃと世界の神々

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52/104

52.ゲームじゃないから戦ってハイ終わりとはいかない。

 夜を徹しての解体作業が開始された。

 討ち取られた狼の数は多く、まだ晩夏の季節ともあって、早くしないと腐り始めてしまうかもしれない。


 かがり火が村の解体所に焚かれ、村人総出で作業が進められた。

 そして、森に魔石狩りへ出かけていたのか、ヘスティアが森の方角からやってくると、「夜食じゃ!」と言って料理の準備をし始めた。


 こうなると、私に手伝えることは食材の手配くらいしかない。倉庫にまだまだ余っていたマルドゥークの夏野菜を無償で提供し、高みの見物へと戻る。

 すると、ベヒモスが腕に何かを抱えながら歩いてきて、私の前に立った。


「ほれ、陸王獣の心臓を守る装甲の、一番よいところだ。これで、先ほどの紙切れと交換するのだ」


「ああ、そんな話もしていたね。んじゃ、受け取るよ」


 ベヒモスから一抱えほどもある物品を受け取ると、私はそのままアイテム欄に収納した。うん、『陸王獣の心臓装甲』ってあるね。確かに受け取った。

 代わりに私は、『経験値10000チケット』とイヴの査定によるお釣りの銀貨を取りだし、ベヒモスに渡す。


「外に持ち出し厳禁だから、この場で使ってね」


「ふむ、用心深いことだな」


 使い方を教えてあげると、ベヒモスはチケットの使用画面で迷いなく『はい』を選択した。

 すると、ベヒモスがレベルアップのエフェクトに包まれる。ベヒモスに対して≪看破≫技能を使うと……、うん、『Lv.8』になっているね。超神なだけあって、ステータスの数値はとんでもないけど、数値上は『Lv.8』である。


「ふむ……力があふれてくるな! ふはは! これで数百年停滞していた我にも、さらなる力が!」


「んー、残念なお知らせ。数パーセントしか能力向上していないよ」


 チケット使用前の≪看破≫で見えたステータスと、使用後のステータスは、ほんの少ししか変わっていない。

 もとの力がすごすぎて、チケットで身体に注がれる魔力は、雀の涙でしかなかったのだろう。


「ほう、数パーセントも上がったのか」


「あ、そう(とら)えるのね」


「天上神である我の数パーセントだぞ? それは、相当なものだろう」


「あー、そう言われればそうかもね」


 私がやっていたMMORPGではそうでもなかったが、数パーセントの攻撃力上昇を果てしない労力で得るゲームも地球にはよくあった。


「というわけで、もう一枚追加だ」


 と、ベヒモスが図々しくも、そんな要求をしてきた。


「残念ながら一人一枚だよ」


「なぜだ!?」


「数に限りがあるんだよ。だから、一人一枚」


「そうか。さすがにこれほどの秘宝、そう数はないか」


「日数が経てば自動で補充されていくけど」


「とんでもないな!?」


 うん、すごいよね、ログインボーナス。いったい、どこからアイテムを新たに増やすための力を補充しているのやら。


「我は天上神であり、完成した存在。地上神と同じように、己が持つ力は飽和しておった。その我に追加で魔力を注ぐなど、そなたは驚くべきことをしたのだぞ」


 あー、先ほど見張り台で言っていた話か。神は力が飽和しているので、魔石の力を取りこむことができないってやつ。超神でもそうなんだね。


「そなたの力は恐ろしいな。神の力を増す手段が存在すると知れ渡れば、そなたのもとに世界中の神が殺到してきかねんぞ」


「神だろうが貴族だろうが、村人以外には売らないよ。際限ないもん」


「ふはは、そうか。神の要求を無視するなど無茶な話であるが、その無茶を貫けるだけの力は、そなたにあるな。それでこそ天上神よ」


 それだけ言ってベヒモスは満足したのか、私のもとを去り、夜食を配っている方面へと向かっていった。

 すると、そこに集まっていた子供達が、「ベヒ様だー!」とベヒモスに群がっていく。ベヒモス、あいつ子供に慕われているのか……。想像以上に村へ溶け込んでいるなぁ。


 さて、手持ち無沙汰になった。やることがないので、私は解体の様子を見物しにいく。


 しかし、血が出るわ内臓が出るわで、あまりのグロテスクさに数分でギブアップした。私は気分を変えようと、夜食コーナーへと逃げる。

 そこでは料理をし終わったのか、ヘスティアが串焼きを両手に持って一息入れていた。


 ヘスティアは私を見つけると、串を持ったまま小走りでこちらにやってくる。


「おお、なぎっちゃよ。ベヒモスの奴がやけにご機嫌じゃが、何かあったのか?」


 どうやらベヒモス、経験値チケットを使って気分が向上していた様子をばっちり、ヘスティアに目撃されていたらしい。


「聞いても秘密としか言わないのじゃ! ベヒモスのくせにむかつく!」


 ヤモリくん、意外と口が固かった!

 でも態度を隠せないとか単純!


 仕方ないので、私はヘスティアに村人限定販売の経験値チケットの存在を話した。


「私も村人じゃよな!?」


「うーん、まあ、ヤモリくんを村人判定するなら、ヘスティアも村人かなぁ」


 とりあえず魔石でも持ってきたら売ってあげると話したら、ヘスティアはすぐさまどこかへ駆けていって、カバンを手に戻ってきた。

 そして、カバンを漁ると、中からそこそこサイズの魔石をこちらに差し出してくる。


「今日、採れたばかりの魔石じゃ!」


「そんな、果物じゃあるまいし……」


 そんなやりとりをしつつ経験値チケットをヘスティアに渡す。その場でしっかり使ってもらい、ヘスティアは無事に『Lv.8』になった。


「ふおおおおお! 力があふれてくるのじゃ! 無敵じゃ! なぎっちゃ、もう一枚! もう一枚!」


「駄目だよー。一人一枚」


「なんでじゃー! 私にだけ特別にもう一枚!」


「駄目ー」


「どうかお恵みをー! なぎっちゃ様ー!」


「ヤモリくんですら我慢できたのに、ヘスティアはできないの?」


 私がそう言うと、ヘスティアはピタリと駄々をこねるのを止めた。


「ベヒモス以下に扱われるのは嫌じゃ……」


「どんだけ嫌がっているのさ……」


 自分と他人を格付けしたがるところと、態度が尊大なところ以外は、割とまともだよ、あのヤモリ。

 その二つが致命的なんだけどさ!


「仕方ないので諦めるのじゃ。しかし、なぎっちゃ。今後、何かすごい商品を売るときは、真っ先に私に教えるのじゃぞ!」


 そう言いながら、ヘスティアは調理スペースへと去っていった。

 本当、この村に住む神様は個性的な人達ばかりだね……。


 情にほだされて貴重なアイテムを放出しないよう、気をつけなきゃ。なんて思いつつ、夜は更けていくのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 神様の移住が増えるかもしれないなぁ
[一言] バッカス(チラッ
[一言] 嗚呼、ヘスティアに頼まれると私なら上げまくってしまったに違いないw なぎっちゃの心は強いなw
感想一覧
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