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なぎっちゃの異世界満喫生活~ネトゲキャラになって開拓村で自由気ままに過ごします~  作者: Leni
第二章 なぎっちゃと世界の神々

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50/104

50.一日一万歩は、ちょっと時間がかかりすぎる。

 商品の仕入れに、村から出かけた帰り。

 私は直接店舗に戻らず、村の中を散歩していた。


 雑貨屋をやっている以上、村人との交流は大事だ。たまにはこちらから出かけて、顔を見せてまわるのも悪くないだろう。

 そんな私が向かったのは、村の外れにあるガラス工房だ。


「こんちはー。見学いいかな?」


「おーう、なぎっちゃか。くれぐれも邪魔するんじゃないぞ」


「大丈夫だよー」


 工房は広く、他の家々と違って石造りの床だ。炉があるので、火事を防ぐための処置だろう。


 現在作業中の職人さんは三人いて、それぞれが吹きガラスで瓶を作っている。

 長い筒に息を吹き込み、ガラスの玉を膨らませるやつだね。


「おーおー、大量に作っているなぁ」


 ずらりと並ぶ完成した小瓶を見ながら、私はそんなことをつぶやいた。

 すると、休憩していた一人の職人さんが、こちらに近づいてくる。


「おう、ポーションを増産するってんで、てんてこ舞いだ」


「ガラス瓶に入れるとか、贅沢だよね」


 二十一世紀の日本ならともかく、この国ではまだガラス瓶は高級品のはずだ。

 普通なら、液体を保管するには陶器の瓶を使う。


「ポーション自体が高級品だからな。高級品は高級な器に入れるのが相応しいってもんさ」


「そんなものかぁ」


「そんなものだぜ、商人さんよ」


 職人さんに商人としての価値観を教えられてしまった。


『ちなみに、ガラスの器は高級感以外にも、薬品に溶けにくいという利点がありますよ』


 と、そんなことをイヴが横から伝えてくる。

 なるほど、科学的根拠があるんだね。


「しかし、こんだけガラス瓶を作るにしても、材料はどこから買ってきているの?」


「ああ、買っているんじゃないんだ。南の山を一つ越えたところに、珪石(けいせき)の鉱床があってな。村所有の鉱山扱いになっているから、そこから採ってきている」


「ガラスの材料って、珪石なんだね」


「そこからかよ。珪石を砕いた砂にいろいろ混ぜて溶かすんだよ」


「いやー、単に砂を使うとしか知らなくて」


 パソコンで遊んでいたサンドボックスゲームでは、砂をかまどで熱するとガラスが作れたんだよね。しょせんはゲーム知識か。

 せっかくだから作る様子を見せる、と言われたので、私は職人さんの横についてガラス瓶ができるまでを見学してみた。

 うーむ。


「しかし、炉があるから暑いねー。真夏は大変だったんじゃない?」


 ガラスを溶かすための炉が稼働しているため、室内はものすごい温度だ。職人さん達は、こまめに水と塩を補給している。


「なぎっちゃにも、暑いって感覚あったんだな」


「そりゃあるよ。まあ、火に当たっても火傷はしないと思うけど」


「うらやましい体質だな!」


 その後、私はお土産にトンボ玉を貰って、ガラス工房を後にした。

 村長さんが自慢するだけあって、しっかりした人達だったね。


 さて、次はポーション関連ということで、村の薬草畑を見にいこう。

 私はのんびりと歩きながら、村の北側へと向かった。


 薬草畑に到着。ジョゼットが何やら作業をしていたので、私はジョゼットに手を振って叫んだ。


「おーい、ジョゼット! 遊びに来たよー」


「なぎっちゃ……私は仕事中なので、かまえないぞ」


 ジョゼットが呆れたように言うが、その近くにいたおじさんが彼女に向けて言う。


「ちょうどいい。ジョゼット嬢ちゃん、休憩しな」


「む、そうか。では、少し休ませてもらう」


 ジョゼットは作業手袋を外して、首に巻いていた手ぬぐいで額の汗をぬぐうと、こちらに向けて歩いてくる。

 私はそんなジョゼットに、アイテム欄からジュースを取り出して渡してあげた。


「これは……ありがたい」


「スタミナ持続回復効果があるジュースだから、疲れが吹っ飛ぶはずだよ」


「お前はまた気軽にそんな物を……」


 そう言いながらも、ジョゼットはジュースを一気飲みした。よほど喉が渇いていたんだろう。

 そして、ジョゼットがジュースを飲み干すと、彼女が持っていたジュースの瓶は虚空に溶けてなくなった。


 それを驚くこともなく見ていたジョゼットは、ふう、と一息ついて手ぬぐいで首回りを拭き始めた。

 そんなジョゼットに私は言う。


「ジュースのお代として、ちょっと畑見学に付き合ってよ」


「それくらいならかまわないが」


 それから私は、ジョゼットに案内されて、どの区画にどのような薬草が植えられているかを見てまわった。


「そこは緑肥(りょくひ)にするために、豆を植えているところだな」


「緑肥かぁ」


 確か、豆類とかを育てて、草が青い状態で畑にそのまますき込む、肥料の一種だったかな。


「同じ作物を連続して育てると、土壌に必要な栄養分が足りなくなってしまう。そのため、畑を休ませたり豆を育てたりするのだ」


「へー、意外と科学的だね」


「科学的か……学問は知らないが、昔からの知恵で、一度栽培した後は豆を植えるといいとされているな」


「土壌の窒素回復になるんだよ」


「ちっそってなんだ?」


「えっ……」


 あらためて聞かれると、なんだろう。


「空気……かな?」


「は? 空気を土に含ませるということか?」


「いや、そうじゃなくて、空気に含まれる窒素って成分が、作物の栄養になってね……詳しくは知らないけど」


「よく解っていないのではないか。うろ覚えの知識など披露されても、どうしていいか判らんぞ」


「うっ、そうだね……」


 私には現代知識チートをするだけの、農業知識は無い!

 イヴだったら解るかな、と聞いてみたが、農業関連を地球で調べた履歴は特に残っていない、と返ってきた。

 神様の名前とか調べているのに、農業ノータッチかよー、かつての私。


 と、そんなやりとりをしていたときのこと。村の北側が急に騒がしくなり、魔獣の森の中から村の戦士達が複数名、走り出てきた。

 何事だ、と農夫達の作業の手が止まる。


「大変だ! 狼王(ろうおう)が出た!」


 その戦士の言葉に、周囲がざわりとする。


警鐘(けいしょう)を鳴らせ! 戦士を集めるんだ!」


 その言葉に、農夫達は一斉に行動を開始した。

 ジョゼットも「武装してくる」と言って、村の中央へと駆けていった。


 えーと、私はどうすれば? そう思っていると、村に鐘が鳴り響き、しばらくすると武装した村長さんが『Lv.8』の驚異的な身体能力で南側から駆けてきた。


「なぎっちゃ! いいところにいた!」


「あ、うん。戦線に加わればいいかな?」


「ありがてえが、相手は群れで来る。北の見張り台の上に登って、戦況を見守っていてくれ! 必要なら、そこから魔法を撃ってくれ!」


 指示を受け、私は魔獣の森のすぐそばにある見張り台に向けて駆けだした。

 村の戦士達があわてる狼王。どんな魔獣なのだろうか。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新乙い [一言] 高い所から、一番の大物が居る所へなぎっちゃんをシューッ!!
[一言] もしかしたらワンチャン、ポメラニアンやチワワみたいな見た目の可能性も微レ存
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