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なぎっちゃの異世界満喫生活~ネトゲキャラになって開拓村で自由気ままに過ごします~  作者: Leni
第二章 なぎっちゃと世界の神々

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43/104

43.とっさの判断が難しいからPvPは好きじゃない。

 夏の大市が終わり、村に日常が戻った。

 マイハウスの雑貨屋は、世界中からかき集めた商品が一通りそろい、いよいよ明日にでも開店ができるだろう。

 村人に周知しないとなー、なんて思っていたときのこと、管理AIイヴの声が店内に響いた。


『マスター。村にマンジェトが訪れています』


 マンジェト。豊穣神マルドゥークの空飛ぶ神器だね。


「私に何か用事かな? ああいや、ヘスティアにかもしれないね」


 用事があったら店まで呼びに来るだろう。なので、私は出迎えには向かわず、商品の値札作りに戻った。


 それからしばらくしてから、店舗で作業を続けていると、店の扉が開く音が聞こえた。

 ドアベルの綺麗な音が響き、私は扉の方へと目を向ける。


 すると、そこには豪奢(ごうしゃ)な白い詰襟(つめえり)の服に身を包んだ、一人の男がいた。

 銀髪に褐色肌の美男子。彼は、こちらに目を向けると、何かをまくし立て始めた。


「――――」


「うん?」


「――――!」


 ホワイトホエール号の学習装置で学んでいない言語だ。

 私が首をひねっていると、美男子は親指を立て、クイクイと親指で店の入口を指ししめす。


「マルドゥークが呼んでいるのかな?」


「マルドゥーク――。――――」


 うん、マルドゥーク関連で何かあるっぽいかな。

 私は、美青年にうながされるまま、席を立って店の外へと向かった。


 店の外に出て広場に出ると、南の方角に空飛ぶ船が浮いているのが見える。


「おー、確かに船あるね。マルドゥーク来ているんだ」


「――――」


 美青年がスタスタと歩いていくので、私はそれについていく。が、美青年は広場の中央で足を止め、こちらに振り返った。


「――――!」


「うん?」


「――――」


「えーと、何が言いたいのかな? 言葉、通じてないんだよね」


「――!? ああ、通じておらんのか。バックスの国は、この言語でよかったか?」


 美青年は、想定外といった表情を浮かべると、私に理解できる言葉で話し始めた。


「あ、うん、その言葉で合っているよ」


「では、さっそく始めようではないか。先攻は貰うぞ」


「は?」


 美青年の謎の宣言。

 その直後、私は何かにぶつかり、後方に弾き飛ばされた。


「な、なに?」


 私は、尻餅をつきながら困惑する。


「まずは小手調べだ」


 次は、後頭部に衝撃。痛みはないが、HP(ヒットポイント)が削れた感覚がした。


「ふはは、さすが頑丈だな。では、これはどうだ」


 頭、背中、胸に同時に衝撃を受ける。

 な、なんなんだ。もしかしてこれは……襲撃!?


「どうした、我が神器を防いでみせよ」


 不可視の攻撃が、私に次々と命中する。

 って、神器による攻撃!? あわわ、まずは立たないと!


 ぎゃー、HPが、HPが削れていく! 今の私はただの村娘ファッションで、防具なんて装備していないんだ!

 大賢者は最上級(クラス)の中で一番HPが低いんだぞ! レベルがいくら百超えているからって、このままではHPがなくなってしまう!


 あわわ、私、PvPは大の苦手なんだ! まずはどうすれば……。


『敵性存在を確認。支援爆撃を開始します』


 !? やばい!


「ちょ、待って、イヴ、爆撃中止!」


 うおお、しゃべっている間にHP残り四割!


『!? なぜですか』


「村が更地になっちゃう!」


『しかし……』


「大丈夫、私は、大丈夫だから」


 イヴの支援爆撃は、要塞や基地といった地上の敵拠点を破壊するための機能だ。そんなものをここでやらせたら、村が跡形もなくなってしまう。


「……ふう」


 イヴの爆撃発言で、私の頭はようやく冷えた。落ち着いて行動開始だ。


 まずは、アイテム欄を操作して、エクストラポーションを取り出すことなく使用。

 すると、じわじわ減っていたHPが全回復する。


 さらに、アイテム欄の大賢者のローブを装備欄にドロップ。

 瞬時に私の服装が変わり、HPの減りが格段に減った。


 次は、武器である叡智の大図鑑を装備。

 それと同時に、詠唱が必要ない初級防御魔法を発動。

 衝撃が収まり、ようやく一息つく。


「!? おもしろい。では、本気で行くとしよう!」


 本気で来るらしいので、初級防御魔法を≪プロテクション≫の魔法で上書きしておく。

 そして、念のために、アイテム欄から一つの御守りを取りだし、首にかけた。


「飛べ、『暁の矢』! 天上神を打ち負かすのだ!」


 美青年が号令をかけるが、私は落ち着いて魔法を放つ。


「≪手加減攻撃≫≪マジックミサイル≫」


「ようやく反撃か! 『スヴァリン』よ、全てをさえぎれ!」


 おや? どこからか出現した光り輝く盾に、魔法攻撃が防がれた。もしかして神器かな?

 これは、本気でやっちゃってもいい感じかな。


 次なる魔法の詠唱に入ろうとした瞬間、私が展開していた魔法の防御壁に何かが突き立った。

 それは、赤く輝く返しのついた矢尻。なるほど、暁の矢だっけ? これもまた神器か。


「この神器が、私のHPを危険域まで削ったのかぁ」


「!? 暁の矢! 戻れ!」


 私が矢尻に手を伸ばした瞬間、男の号令で矢尻が防御壁から抜け、彼の手元に戻っていく。


「あの神器は危険だね。私を殺しうるよ」


『あれからは、そこまで強力な創世の力を感知できませんでしたが……』


「イヴ、知ってる? 人間は、投石を頭に受けただけで死ぬんだよ」


 神器は、天上界において、ほとんどが小石や小枝程度のちっぽけな存在だったと、かつてイヴが語っていた。


 でも、人間だって小石を投げつけられたら怪我をするし、当たり所によっては大怪我をする。

 さらに、先を尖らせたら、立派な武器になる。

 小枝だって、先を尖らせれば肌に突き刺さるだろう。


 おそらく、戦闘用に作られた神器とは、そういう鋭利で硬質な物体なのだ。ちっぽけな存在だからって、馬鹿にしたものじゃないね。


「でも、相手が矢の神器なら、やりようはあるよ。≪ミサイルガード≫」


 飛び道具を防ぐ魔法で≪プロテクション≫を上書きし、私は今度こそ攻撃魔法の態勢に入る。

 使うのは、余波が村の建物に飛んでいかないような、攻撃範囲がおとなしい魔法だ。


「≪ジャッジメントレイ≫」


「来るか! 力を見せよ、スヴァリン!」


 相手は盾を構えるが、残念。その魔法は上から来るよ。


 光の奔流(ほんりゅう)が上空から降り注ぎ、男を打ちすえる。だが、途中で盾を上に構えて、攻撃を防ぎだした。

 うーん、ゲームと違って、光が降り注いでいる間は、ずっと当たり判定があるっぽいな。これは大発見だ。


 魔法にはクールタイムという、次の魔法が撃てるまでの待機時間がある。

 継続して当たり続ける魔法を撃てば、そのクールタイム終了までの時間が稼げそうだ。

 そんなクールタイム終了と共に、私は次なる魔法を放つ。


「≪アイシクルレイン≫」


「うおお!」


 これも、それなりの時間、上空から氷の槍が降り注ぎ続ける攻撃魔法だ。

 それを男は盾で必死に防ぐ。

 その間にも、矢尻による攻撃は私を襲い続けるが、≪ミサイルガード≫によって防がれている。


 さて、今のうちに次の攻撃準備だ。


「≪魔法効果延長≫≪マキシマイズマジック≫」


 次に使う魔法の効果時間を長くする技能と、次に使う魔法の威力を高める技能を使う。

 そして、選んだ攻撃魔法は……。


「≪グラビティゾーン≫」


 先日、覚えたばかりの重力魔法だ。

 男の周囲に半透明のドームが展開し、男は勢いよく地面に突っ伏した。


「ぐうううう!」


「その盾、構えた方向しか攻撃を防げないみたいだから、方向が関係ない魔法を使わせてもらったよ」


「があああああ!」


 うーん、しかし、鉄のプレートアーマーをひしゃげさせる≪グラビティゾーン≫を威力高めて使ったのに、突っ伏しているだけで潰れてないぞ。これだけ頑丈なら、相手は神で確定だね。


「ううううう、があっ!」


「えっ!?」


 次は最上級魔法でも叩き込んでやろうかと思ったところで、男の身体が光り輝きだした。

 そして、次の瞬間、なんと男は巨大な生物に変身した。


「うおう!?」


 突然の体積変化で相手の身体が私にぶつかり、私は弾き飛ばされて後方に転がる。

 あわてて起き上がって、私にぶつかった物の正体を確認する。


 視界に映ったのは、なんと……銀色に輝く鱗を持った巨大なドラゴンだった。店舗付きの私の家よりでかい。

 重力魔法のドームは解除されたのか、ドラゴンが翼を広げて大声で咆哮(ほうこう)している。


 さらに、ドラゴンはその場で羽ばたき、村の上空に飛び立った。

 そして、広場の真上でホバリングすると、口にオーラらしきものを溜めだした。

 ブレスでも撃つつもり!? あの巨体から繰り出されるブレスは、いったいどれほどの広範囲をなぎ払うのか……。


「こりゃ、あかん」


 と、私は防御範囲がせまい魔法でのガードを諦め、アイテム欄から一つのアイテムを取り出した。

 それは、神器。

 邪神ファーヴニルから奪った『アイギス』というきらびやかなティアラだ。


 頭防具にアイギスをセットし、神器を発動させる。

 すると、開拓村全域を覆うような防御膜が瞬時に展開した。


 それと同時に、竜が口からブレスを放出した。

 魔獣の領域に出てくる魔竜とは比べ物にならないほど強烈なブレスが、アイギスの防御膜に衝突する。


 だが、防御膜は揺るがず、ブレスを完全に防ぎきった。


「よしよし、さすが防御専用神器」


 私はそう言いながら、魔法を発動。使ったのは、≪サイコキネシス≫だ。

 対象はドラゴンではなく、私自身。

 念動力を駆使して空に浮き、ブレスを放ち終えたドラゴンに近づき、取りつく。


「お、おのれ、何を!?」


 おお、ドラゴン、人間形態じゃなくても話せるのか。

 相手に理性があるなら、会話でどうにかする道もあったかもしれないね。


 でも、今更そんなことは言っていられない。私、怒っているので。


「今まで一人では怖くてできなかった実験に、付き合ってもらうよ。大丈夫、≪手加減攻撃≫してあげるから」


「何をするつもりだ!」


 ドラゴンが全身にオーラらしきものをまといはじめる。

 だが、もう遅いよ。次の魔法は詠唱がいらないんだ。

 いくよ! 大賢者が持つ、最大最悪の魔法!


「≪自爆≫!」


 アイギスの防御壁を揺るがす大爆発と共に、私のHPは全損した。


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― 新着の感想 ―
[一言] まさかの自爆攻撃!
[一言] トカゲの神はやんちゃじゃのう・・・ しからばメガンテ!!(蘇生付き)
[一言] スケープドール装備で自爆! 普通に攻撃しただけでも吹っ飛ばせるのに、自爆とかいうどのゲームでも威力ぶっ壊れてる攻撃したらどうなっちゃうの? お願い、死なないで知らない人!せっかく手加減で撃っ…
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