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なぎっちゃの異世界満喫生活~ネトゲキャラになって開拓村で自由気ままに過ごします~  作者: Leni
第二章 なぎっちゃと世界の神々

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37.異世界だけど東へ行っても特に和風の国は存在しない。

 ある日の午後、私は雑貨屋の開店準備に飽きて、村へ散歩しに行くことにした。

 店舗の扉を開けて、広場へ出る。

 すると、広場に人が集まっているのが目に入った。


 集まっていたのは、村の子供達。村ができて十年ということで、十歳以下に見える子供が大半だ。

 その子供達が、木剣を持って素振りをしている。

 そして、子供が一人、木剣を持って村長の娘のジョゼットと向かい合っており、構えるジョゼットに木剣で斬りかかっていた。それをジョゼットが軽々と木剣でいなしていく。


 ジョゼットから攻撃することはせず、あくまで彼女は受けに徹しているようだった。

 なるほど、掛かり稽古ってやつかな。


 しばらく二人の戦いを見ていると、ジョゼットは「そこまで!」と言って稽古を終了する。

 さらに、「休憩!」と全体に向けて号令を出す。すると、子供達は素振りを止め、用意されていた水桶に群がるように駆けだした。

 今の季節は夏。みんな汗だくだ。水を勢いよく飲んでいる。


 しかし、そんな中でもジョゼットはうっすら汗をかいているだけで、特に疲れた様子は見せていない。

 彼女は成人した大人だから、子供程度の攻撃などなんともないのであろう。

 それに、ジョゼットは経験値チケットで『Lv.8』になっている。体力は常人を余裕で超えているだろうね。


「やっほー、ジョゼット。子供達の訓練?」


 私は、子供達の水飲みを見守るジョゼットに話しかけた。


「なぎっちゃか。今日は子供達の合同訓練だ」


「もしかして、子供は全員参加?」


「そうだな。ああいや、ソフィアだけは免除だ。あいつは強すぎて、足並みを乱すからな」


「あー、ソフィアちゃん、貴族のたしなみとか言って格闘術使えるし、なにより経験値チケット使っているからね」


 村の子供達は、経験値チケットをまだ使っていない。村長さんの方針で、成人するまでは使ってはいけないことになっているのだ。

 曰く、分別もつかないうちに強くなりすぎたら無茶をする、だそうだ。

 確かに、強くなったからって、勝手に魔獣の森とか行きそうだよね。


 私は、そんなやんちゃ盛りの子供達を見回す。


「槍を使っている子は、いないんだね」


「狩りに必要だから、槍も教えるぞ? だが、今日は剣の日だ」


「狩りかー。森の中でも、槍って振り回せるんだ。木にひっかかりそう」


「いくさに使う長槍でもあるまいし、そんな無様なことをしては戦士にはなれん」


 ジョゼットの言葉に、なるほどと納得する。

 しかし、木剣か……。


「木剣って、結構危なそうだね」


 経験値チケットはまだ使っていないので、うっかりで頭をかち割ったら、死傷するかもしれない。どうにも不安がぬぐえないな。


「幸いポーションは豊富だから、今のところ死人が出たことはないぞ」


 ポーションか。魔石と薬草を組み合わせた即効性の薬だっけ。村人から何個か買い取ったことがある。

 でも、ポーションを使う前に即死しちゃったら、どうしようもないよねぇ。


「あ、そうだ、木工スキルであれを作ろう!」


「む? あれとは?」


「ちょっと出かけてくるね!」


「あ、おい、なぎっちゃ!」


 私はその場で転移魔法を使い、はるか上空、ホワイトホエール号へと飛んでいた。


 ホワイトホエール号を駆って私が向かったのは、開拓村からはるか西へ行った場所。

 大陸を飛び出し、海原を越え、もう一つの大陸へ。


 その大陸に来るのは二度目で、以前は私の歓迎会のために酒を手に入れに来た。

 だが、今回の目的は酒ではない。


 竹だ。竹を確保するのだ。

 そう、私の今回の目的は、安全な武器である竹刀を作ることだ。


 私が降り立ったのは、以前来た国にある初めて訪れる町。私はまず、換金所に向かった。

 そこでこの国のお金を手に入れ、次に竹屋さんを訪れる。そして竹を仕入れて、その場で木工スキルを使って竹刀を一本完成させた。


 ゲーム時代の竹刀は、武器の見た目を変える素材くらいにしか使われないネタアイテムだったが、この世界だと竹刀は可能性に満ちあふれている。なにせ、安全に剣の稽古ができるのだ。これがあるのとないのとでは、剣の腕前もだいぶ変わることだろう。


 私は、驚く店員さんに完成した竹刀を一個ゆずってあげて、竹屋さんを後にした。

 あの一本の竹刀が、この国でどうムーブメントを起こすか、ちょっぴり楽しみである。


 ちなみに、換金所でお金を確保したときのことなのだが、換金材料として魔獣の森で取れた魔石を持ち込んだら、大騒ぎになってしまった。

 魔石は東の大陸から仕入れるしか入手手段がないため、大変貴重なのだとか。なるほど、魔獣はこの大陸では出現しないのか。


 魔石はいっぱいアイテム欄に所持しているので、私は魔石を数個、遠慮(えんりょ)なく売り払った。


 魔石の代金としてこの国のお金がたんまり手に入ったので、竹を仕入れたついでに市場を眺めることにした。

 どこか西洋風だった開拓村がある国とは違い、なんとも異国情緒のあふれる町並みである。


 市場に売っている品も、向こうの大陸では見ない物ばかり。

 何かお土産になる面白い物でもないかと、ふらふらと見回っていたときのこと。


「こ、これは……!」


 思わぬお土産を私は見つけた。




◆◇◆◇◆




 村に取って返したら、子供達はまだ稽古を続けていた。頑張るなぁ。いや、私が戻ってくるまで一時間も経っていないけどさ。

 そこで私は竹を取り出して、その場で大量に竹刀を生産した。


「これは……!? なぎっちゃ、すごいぞ!」


 早速、竹刀で元気にぶっ叩き合う子供達。

 今までは、防具をしていない頭に向けて木剣を当てる行為など、したことがなかったのだろう。真っ直ぐ頭に竹刀を振り下ろして、「めっちゃいてえ!」と騒ぎ合っている。


「ありがとう、なぎっちゃ。おかげで、剣に変な癖がつかなくて済みそうだ」


「どういたしまして。でも、竹刀だって当たると痛いよね?」


 ゲーム上の竹刀は攻撃力がゼロだったが、別に攻撃時のダメージ自体がゼロになるみたいな特殊効果は、付与されていない。


「この程度の痛み、我慢できなければ戦士にはなれん」


 うーん、戦士って厳しい。

 と、子供達の様子を眺めていると、神殿から神様のヘスティアが出てきた。


「お、なぎっちゃ。帰ってきおったか」


 木製の団扇(うちわ)で顔をあおぎながら、ヘスティアが近づいてくる。


「村の外へ出かけたらしいが、なにか珍しい食材はなかったかの」


 そう尋ねてきたので、私はニヤリと笑って、アイテム欄からお土産を取り出す。


「こ、これは……!」


 私から手渡されたお土産を見て、ヘスティアが驚愕の表情を浮かべる。


「タケノコではないか!」


「うん、竹林のある地方にさっき行ってきて、買ってきた」


 私がそう言うと、ヘスティアがプルプルと震える。


「竹林とな……はるか西方の大陸ではないか!」


「私にかかれば、大陸の一つや二つ、簡単に越えられるよ」


「なんと……!」


 ヘスティアは、タケノコをいろんな方向からじろじろと眺めている。この国の周辺で普段活動しているとなると、相当珍しいのだろうなぁ。


「なあ、なぎっちゃ。あの謎の物体は、食品なのか?」


 と、ジョゼットがヘスティアの手にあるタケノコを見ながら、そう尋ねてきた。

 タケノコって、知識がないと食材には見えない見た目をしているよね。


「うん、タケノコっていって、竹っていう竹刀の材料の若芽だよ」


「む、しないは食べられるのか」


「竹刀の材料になるほど育ったらもう食べられないよ。あくまで若芽だけ」


「なるほど」


「今日の晩ご飯に一品出してあげるから、楽しみにしていて」


 私がそう言うと、ジョゼットは嬉しそうにして子供達の監督に戻っていった。

 ちなみに私はまだ村長宅でご厄介になっている。まだ新居の家具、そろいきっていないからね。


「むむむ。西の大陸まで行けるとなると、確保してほしい食材がいろいろと……」


 タケノコの確認は終わったのか、ヘスティアが今度は私の便利さに気づき、何やら独り言を言いながら考え込んでいる。

 そんなヘスティアに、私は言う。


「私、行商人だから、対価さえ貰えれば食材くらいなら買いつけてくるよ」


「むむむ! しかし、残念ながらそんなに金は持っていないのじゃ」


 ヘスティア、神様やっているのに貧乏なのか……。

 だが、私は物を売るだけではなく、買い取りもやっているのだ。


「魔石なら高く買い取るよー」


「魔獣の森を踏破してくるのじゃ!」


「ほどほどにねー」


 タケノコを持ったまま北へと駆けていくヘスティアを見送り、私は開店準備を再開させるため、雑貨屋の店舗へと戻っていった。


 ちなみに、晩ご飯に作ったタケノコの煮物は、村長一家に珍味として受け入れられた。タケノコのあの独特の食感、私、大好きなんだよね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 向こうではいろいろ話題になってそう
[良い点] 更新乙い [一言] たけのこ!! 鰹節と醤油でこう、煮物っぽいのにしてみたり、混ぜご飯してみたり ううん、お酒下さいよ!!お酒ぇ!! 竹刀も整備しっかりしないと、色々刺さったりするらしい…
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