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なぎっちゃの異世界満喫生活~ネトゲキャラになって開拓村で自由気ままに過ごします~  作者: Leni
第二章 なぎっちゃと世界の神々

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33.料理のさしすせその味噌だけ頭文字取っていなくて無理やり感ある。

 昨日はグリフォンで村の上を飛んで迷惑をかけたので、謝罪の意を込めて生活必需品の安売りセール。

 朝から奥さん達が詰めかけて、忙しい時間が続いた。

 そして真昼時。客足が途絶えて一息入れた私は、昼食を取ることにした。


 何を食べようかと迷っていると、新たにお客さんがこちらに向けて走ってくるのが見えた。

 神殿の見習いくんだ。


 神官さんのお使いかな? それとも神器のデザインが完成したのだろうか?

 ちょっと期待しながら待っていると、見習いくんが露店に到着し、息を切らせながら声をしぼり出す。


「なぎっちゃ様、神様方がお呼びになっています」


「んー、ああ、さっきペガススが神殿に降りていったけど、バックス、私に用事だったんだ」


 三十分ほど前だっただろうか。上空から降りてきたペガススが、私の露店の上を通って神殿に向かっていった。

 露店を開いているのは村の中央広場で、神殿も村の中央付近にあるため、はっきりとその様子が見えたのだ。


「はい。ああいえ、いらしているのはバックス様だけではありません」


「ん? 神殿のお偉いさんかな?」


「いえ、違います。神がもう一柱(ひとはしら)いらっしゃっています」


「おや? バックスのお友達かな?」


「お、お友達……バックス様と友好的な、放浪神様ですね」


「なるほど。それじゃ、神殿に行けばいいかな?」


「はい、お手数をおかけしますがよろしくお願いします」


「はいほい」


 私は、露店の中身をゲーム機能である倉庫にぶち込み、見習いくんの先導ですぐそばの神殿に向かった。


 そして、礼拝堂を通り神殿の奥に通される。行き先は……なぜか厨房だ。厨房には、神官さんと酒の神バックス、それともう一人知らない子がいた。


「来たか。おぬしが新たな神器の酒杯を持つ神じゃな!」


「ああうん、元気な子だね」


「子供扱いするでない! 私はこれでも千五百歳を余裕で超えておるのじゃぞ!」


 古風な喋り方をする、見た目十二歳ほどの黒髪のロリッ子だ。

 本人が言うには千五百歳のおばあさん。ということは、見習いくんが言っていた神はこの子か。


「私は天上界って言われているところから来た、なぎっちゃだよ。よろしく。ちなみに二十六歳」


「うむ。私はヘスティアである。よろしくなのじゃ」


 ヘスティアかぁ。

 ヘスティアといえば、北海道発の水曜深夜の人気番組に出ていた看板役者みたいな口調をした、ロリ巨乳な紐神アニメキャラが思い浮かぶ。

 この世界だとのじゃロリなのか。のじゃロリというか、この国の言語ですごく古風な言い回しをしているだけだけど。


「私は、かまどの守護神と人に言われておってな。まあ、実態はただの料理好きな神じゃ」


「料理の神様かぁ。バックスから、何度か料理神が居るって聞いていたけど、あなたかな?」


「バックスの知り合いの料理神は私しかおらぬはずなので、多分そうじゃな」


 料理が得意な神様か。あ、待てよ。まだ得意とは言っていないな。好きだと言っただけだ。


「料理は得意なの?」


「私にかなう料理人は見たことがないのじゃ! 千五百年の研鑽(けんさん)に勝るものなしじゃ」


「へー、それはぜひ、ご相伴にあずかりたいね」


「うむ。材料がそろえば振る舞ってやろう。そのために厨房に案内させたのじゃ」


 マジか。ちょうど昼飯時で、何を食べようか迷っていたところだ。


「材料は何が必要? すぐに用意するよ」


 私は、倉庫から、肉、魚、野菜と食材をポンポンと取り出して、すでに食材がいくつか置かれていた調理台の上に載せていく。


「お、おぬしなんじゃその権能は……何もないところから次々と物を生み出しおって。もしや豊穣神と同じく、食材を作り出す神器でも持っておるのか?」


「ああ、これ? 物を自由に出し入れできる能力だよ。中にしまったアイテムは一時的に時間が止まるから、食べ物を入れても腐らないし冷めないんだ」


「なんじゃと!? なんと、うらやましい権能じゃ……うぬぬ、神器でなく権能ならば、もらい受けることもできぬ!」


 まあ、便利だよね、アイテム欄と倉庫機能。


「で、食材は何が必要?」


「うむ、酒じゃ」


「酒? ワイン煮でも作るの?」


「おぬしもバックスと同じく、酒を出す神器を持っているらしいな」


「ああ、これ?」


 私は、アイテム欄から、無限に酒が湧き出す金の酒杯を取り出した。

 うん、相変わらず派手な色しているな。


「おお、それで、バックスの酒杯は果実酒しか出ぬが、おぬしの酒杯は果実以外の酒も――」


「気をつけて、なぎっちゃ。こいつ、僕らの酒を酢にしちゃうんだ!」


 ヘスティアの言葉をさえぎるように、なぜか部屋の隅で縮こまっていたバックスが私にそんなことを告げた。

 台詞を中断されたヘスティアは、むっとした表情を作り、バックスに向けて怒声を放つ。


「大事な話に割り込むではないわ! おぬしの酒蔵の酒、全て酢にするぞ!」


「ひいっ!」


 あー、なんとなく力関係を理解した。

 バックスはお酒を造る神様だけど、ヘスティアは酢を造れる神様なんだねぇ。

 実は酢って、酒を原料にして醸造するんだよね。ワインビネガーとか言うよね。


「それでじゃな」


 バックスを黙らせたヘスティアは、改めて台詞を再開させた。


「おぬしはワインなどの果実酒以外にも、自在に酒を出せると聞いた。それを酢にして料理に使ってみたいのじゃ」


「なるほど、そうなると、私に馴染みがあるのは米酢かな。日本酒……清酒を材料にすればいいね」


「米の酒か。南方の穀物を醸造した物じゃな」


「うん。私が日本……ええと、天上界に居た頃は、その米の酒を原料にした米酢を普段使っていたね」


「天上界の酒から造る酢……むむ、早く造ってみたいのじゃ!」


 ヘスティアが、うずうずといった様子で、両の手を平たい胸の前でにぎって、上下に振りだした。

 バックスもそうだけど、こいつら言動が千歳超えの老人じゃないんだよねぇ。


「神器の酒を使った酢か……私も気になるねぇ」


 私がそんなことをつぶやくと、大人しくなっていたバックスが、ぎょっとする。


「ええっ! 酒好きのなぎっちゃがそんなこと言うだなんて!」


「だって、気にならない? 神器の酒から造った酢で調理した、酢の物とかのおつまみ。絶対、神器の酒に合うよ」


「うっ、確かに、料理神のおつまみは最高だ」


「うはは、とうとうバックスも観念したか。それでは、酢を造るとしようか」


「了解。どれだけ造る?」


 私がそう言うと、今まで笑顔で私達のやりとりを見守っていた神官さんが、すっと動いて厨房の一角へと移動する。

 そして、大きなワイン樽の前で私に向き直った。


「こちらの樽をお使いください」


「樽一個分って、またえらい量造るな!」


 私は思わずそんなことを突っ込んでしまう。樽って、自家製の醸造量じゃないな。どこの業者だよ。


「うはは、料理に使った後に残った分は、この村の者に分けてやるとよいぞ。私からのほどこしじゃ」


「ほどこしって、材料の酒を用意するのはなぎっちゃじゃあ……」


「細かいことを気にするではないわ」


 バックスの突っ込みを一刀両断するヘスティア。でも、細かいことかなぁ、それ……。私、村人に神器の酒を無闇やたらと渡さないよう、気をつけているんだけどなぁ。

 まあ、酢は私も今のところ商品として扱ってないし、気にしないでおくかな。


「じゃあ、樽に清酒を注ぐね」


「うむ、頼むのじゃ」


 酒杯をかたむけ、用意された樽に清酒を注ぐ。何が米酢の材料として適しているのか知らないので、適当に好きな純米大吟醸を選んだ。

 樽は大きいので、早く出ろーと念じたら、水道の蛇口を全開にしたくらいの勢いで酒杯から酒がこぼれ出てきた。


「すごい勢いじゃのう。出せる酒の種類といい、酒の出る勢いといい、完全にバックスの神器の上位互換ではないか」


「解っているけど、これでも二千年以上連れそった神器なんだから、悪口言わないでよ!」


 ヘスティア、バックスをこれ以上いじめるのはやめてあげて。

 そこの見習いくんに説法を説いている神官さんみたいに、「神器に優劣や強弱はあれども、この世界に住む者にとっては全て天上から授けられた尊い存在です」って精神を忘れずに!


 と、樽が満たされたので、酒杯から酒を出すのを止める。

 これでどない?


「うむ、よい香りのする酒じゃな。これに、豊穣神から奪ってきたリンゴを切って入れるのじゃ」


 ヘスティアは厨房の水場で手を洗うと、調理台の上に最初から置かれていたいくつかの食材の中から、リンゴを手に取る。


 そして、右手でつかんだリンゴを樽の上でかかげてから、左手の指でリンゴのフチをなぞった。

 すると、リンゴが四つに切れて、樽の中に落ちる。


 それを二個三個四個……と続けてから、ヘスティアは「うむ」、とうなずく。


「ここで放置して運がよければそのうち酢ができるのじゃが、何日も待つうえに運任せなのは面倒だとは思わんか? そこで……」


 ヘスティアは唐突に右手の人差し指を樽の中に突っ込むと、そのまま三十秒くらい「むむむ」とうなった。

 すると、厨房に、酢の匂いが充満してきた。


「神の米酢、完成じゃ!」


「もうできたの?」


 私は、思わず驚きの声をあげてしまう。


「うむ。私の神としての権能、発酵促進なのじゃ。すごかろう?」


「何それ、すっげー。お酒造りが(はかど)りそう!」


 私がそんな称賛の声を上げると、ヘスティアは「うはは」と上機嫌に笑って言う。


「旅先ではたまに酒造りを手伝って、旅の路銀を稼ぐこともしておるのじゃ」


「路銀って、神様なのに働くんだ……」


「私は普段、好き勝手に放浪しているからのう。いつもいつもは、神殿のやっかいになれないのじゃ」


 十二歳くらいの見た目で放浪って、大変そうだなぁ。

 いや、神様の力があればそうでもないのか?


「しかし、いい酢ができたの。おぬしの神の酒に余計な酢を加えておらんので、純粋な神の酢になったのじゃ」


 なんでも、酢を造る際には原料の酒に酢を加えた方が、運任せにならず上手く発酵できるらしい。

 なにその、耐熱レンガを作るには、耐熱レンガを砕いた物を土に混ぜるとよいみたいなループ構造は……。


 ともあれ、酢は完成した。

 神の酢を使った料理神の作る昼食、どんな美味しい料理が出てくるのかな。


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― 新着の感想 ―
[一言] ヨーグルトも牛乳にタネのヨーグルト少し入れて作りますよね
[一言] ガリとかカブの酢漬けとかも良さそう
[良い点] 更新乙い [一言] 酢飯美味しいよ酢飯
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