表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/54

49話 ユツィ、ヴォックスを尾行する

 他人のを見るからいいんじゃん、とモンスが再び不貞腐れる。確かにモンスを喜ばせる為に私とヴォックスは婚約していない。まあ政治的な意味合いを考えると私と彼の婚約は他者を喜ばせるものなのかもしれないけど。

 と、モンスが瞳を輝かせた。


「あ、ほら団長外に出そうですよ」


 休憩に入ったところに現れたヴォックスがいくらか騎士に声をかける。そして静かに去っていった。相変わらずいつも通りだ。


「副団長に声をかけない時が多いのは分かってますよね? この流れで外に出ますよ!」


 よく見てるな。でもまあ確かに気になるのは事実だ。モンスの期待に応えるわけじゃないけど、このまま真実を邪推するぐらいなら今はっきりさせてしまいたい。ならやることは一つ。


「……ここは任せても?」

「お! 尾行します?」


 おれも行きたいと言うが、場を任すために断る。修羅場かもしれないのにと悔しがっていたがマレに抑えてもらって急いでヴォックスを追った。

 ヴォックスは一度執務室に入り着替えてから出てくる。そのまま迷いない足取りで進でいった。


「城を?」


 外に出た。割と軽装で姿を隠すように出掛ける時用の長いフード付きの外套を使っている。周囲を最低限気にしているが、視察でもなさそうだった。


「おや」


 待ち合わせていたのだろうか。早い段階で途中一人が合流した。長い外套と目深に被ったフードの為、個人の特定はできなかったけど女性なのは確かだった。その姿、毎朝の手紙の女性と一致している。背格好、姿勢、歩き方、僅かに見えた手首の細さや指先が一致している。おっと、そこまで彼女を観察している自分が少し気持ち悪い。けど気になってしまうのだから仕方ないと自分に言い訳してみる。

 あれ、こういうのはもしかしてモンスのいうところの修羅場? いやちょっと違う? 


「ふむ」


 伴って店に入った。さすがに中に入るとばれるかと思い外で待機する。そんなに時間はかからずに、二人して外に出て女性が一人去っていく。帰りのエスコートはしないとは……いやでも顔を知られるわけにはいかない立場なら下手に長く一緒にいるわけにはいかないか。

 するとヴォックスは再び店に戻る。その後また暫く待機だ。


「……」


 ヴォックスが出てきた。今度はどこへ行くのだろうかと後をつける。あの女性は現れない。尾行するよりもあの店について調べておけば良かっただろうか。


「あの」

「!」


 油断した。ヴォックスへの尾行を優先して考えるばかりだったから、自分の周囲には警戒を怠った結果、今の今まで他人の気配に気づけなかった。


「騎士様、もしかしてプレケスの英雄様ですか?」

「ああ……」


 自分が下手に有名人であることが裏目に出た。様子を見ていた周囲がそわそわしながら囲んでくる。


「プレケスの英雄、ユラレ伯爵令嬢ですよね?」

「ええまあ……」


 騒がしくなってきた。こうなると気づかれる。ちらりと背後、ヴォックスを見ると騒ぎに振り向いてくるところだった。

 目が合ってしまう。その中に明らかな気まずさが見えた。


「すみません! 任務がありますので!」

「ああ英雄様!」


 人混みを掻き分けヴォックスとは反対方向に走る。知っている人間が自分を尾行しているなんて気持ち悪いだろう。気まずい以前に怒るのではと思って振り返ったら案の定。


「……げ」


 追ってきた。かなりのスピードで駆け抜け、先程囲んできた民衆が唖然としている。こうなったら撒くしかない。

 幸い帝都視察を行っていたので細かい裏路地までばっちり頭に入っている。ヴォックスとて私と同じで頭に全部帝都の道は入っているだろうが、逃げ切るしかない。トップスピードを保ったまま走った。


「……撒いたかな?」


 何度も入り組んだ路地を通り抜けヴォックスの姿が見えなくなる。ほっとして城に戻った。後は顔を合わせないよう先に家に戻って食事も別にしとこう。明日になってからなに食わぬ顔をしてすごせばいい。時間が経っていればヴォックスも話をしづらくなるはずだ。


「よし」

「ユツィ」

「っ!」


 わざわざ城の裏の侍女侍従御用達の出入り口から戻ってきたのに、ヴォックスが城壁に体を預けながら待っていた。追うのを諦めて待ち伏せる方を選んだのか。しかも私がどこから戻るか予測立てて。思考が完全に読まれていて辛い。


「待て」

「くっ」


 逃げられないよう手をとられる。素早い。

 そのまま別棟の家に連れていかれた。やはり話しづらいことなのか。

 部屋に二人、扉を閉じてヴォックスと向き合う。


「最初から見てた?」

「ええと……」

「どこから?」


 帝都の視察もなければ個人的な用事もない。うまい言い訳が出てこなくて素直に尾行していたことを認めてしまった。


「……そうか」


 いや待て、そもそもヴォックスが怪しい行動をしていたのが問題ではないだろうか。


「ヴィーがどこぞのご令嬢と会っていると聞いて」

「令嬢?」

「店に一緒に入っていった」

「ああ……」


 なんてことないように言う。少し不服だ。

修羅場なんじゃないの、これ?(笑)と思いつつ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ