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26話 やっと笑った

「今度は一次産業交流か」


 現皇帝の体調が優れないらしく、皇弟が次代になると噂される昨今、その皇弟が表だって出てくるようになった。まるで自分の治める世はこうなると言わんばかりに、新しいことを国の外にアピールしてくる。


「どうした、ユツィ」

「い、や、最近活発だなと思って」


 寝ぼけたヴォックスからの告白から妙に意識してしまうようになった。あの時の声に乗った色合いで呼ばれることも愛を囁かれることもないけど、思い出してはこそばゆくなってしまう。そもそも公的な場であろうと隙を見て名前を呼ぶのはどうなのか。


「団長、副団長、こちらへ」

「今行く」


 ヴォックスとは別れ、視察と挨拶にまわった。

 農業を主とする国は多い。それ以外で国益があるか否かで発展が決まるところがある。とはいえ、自給自足ができないと、国としての地盤が固まらないから農業を始めとした一次産業は国には必須だ。


「騎士様!」

「はい、いかがしました」

「やはりあの時の!」


 各国から来ているとはいえ、帝国に併合された国も多い。その中で武力侵攻の後、再興を遂げた国の人間と再会した。この国は併合したので国として残っていない。レースノワレ王国と同じだ。


「騎士様のおかげで我々は生活できています」

「それは良かったです。何かお困りのことはありませんか?」


 併合後も友好的で非常に順調に再興したから良いモデルケースとなっている。周辺との貿易もうまくいっているようだから残された国民は安定した生活をしているのだろう。


「なんとお礼を言えば……」

「それは騎士団長に直接言って下さい。喜びますよ」

「しかし騎士様が率先してされたことだと伺っておりますが」

「いいえ、そんなことは」


 妙に会話が嚙み合わないと思ったらこれか。

 ヴォックスが主となりやっていることが私主体になっている。わざとそうしたのか。


「僭越ながら同じ境遇の身だからこそ、我々の気持ちを鑑みてくれていると勝手ながら思っております」

「……まだまだこれからです。無理なくやっていきましょう」


 ヴォックスめ。

 心象として帝国の皇子であるヴォックスが主導するよりも、武力併合された国の騎士である私が行う方が同じ併合された他国の民の反発が弱まる。

 私が突如副団長として現れたのも、併合された国の人々のため成り上がったとすれば印象がいい。


「ヴォックス」

「どうした?」

「情報が異なる」

「……うまくいっているなら、このままでもよいかと思うが」


 否定しない挙げ句この言い様が真実を告げていた。


「団長の成果とするべきだろう」

「俺は成果が欲しくて騎士をしているわけではない」

「そういう問題では」

「団長、副団長」


 と、声をかけられて話が中断する。ぱっと見、並んでにこやかに立っているから我々がどんな話をしているか分からないだろう。


「遅れていた公国の代表が到着しました」

「これで全員だな」


 ヴォックスが頷き、一次産業の交流会が正式に始まった。遅れてきた公国民がヴォックスに挨拶をとやってくる。


「この度は遅れまして大変申し訳ありません」

「貴殿の国は山間深く、帝国に来るのは大変難しいと聞いています。お気になさらず今日の集まりを有効活用してほしいと思います」

「ありがとうございます……それと公主からの手紙を預かってきています」

「ああ」


 そこには以前狩猟大会に迷いこんだ自国の子供を保護してくれた事への改めての感謝が綴られていた。あの時すぐに感謝の意を示したのに再び手紙を届けるとはマメだ。


「こちらからも手紙を出します。公主殿にはくれぐれもよろしくお伝え下さい」

「はい」


 変わった色合いの野菜を持ってきていた公国代表は周辺の国々に次々と話しかけられる。皆、その道のプロだ。気になるのだろう。


「ステラモリス公国?」

「そうだ」


 ああとヴォックスが閃いたように目を上げる。


「遠乗りはそちらの方にするか」

「ステラモリス公国へ?」

「遠くから見るだけでもいいだろう。公主へ挨拶しても構わないが」

「プライベートだからそこまでしなくても」

「そうだな……あちらの公主は金色の混じる白髪で奥方も一人娘も美しいという話だ」

「ほう」


 一人娘となる少し年下の公女を想像し、つい王女殿下を思い出してしまう。重症だな。

 いやそれにしてもだ。


「どうした?」

「君が女性の話をするとは珍しい」

「! ……そういう意味で言ったのではなくて」

「はは、分かってるよ」


 少しからかう素振りを見せるとすぐに動揺する。その真面目さについ笑ってしまった。するとヴォックスは瞳を下げて微笑んだ。


「やっと笑ったな」

「え?」

「ここ数日緊張していただろう?」

「ああ、まあ」


 寝ぼけた君の譫言うわごとのせいだとは言えなかった。


「よかった」


そしてこの時、既に遠乗りが決まっていたことに気づいてなかった。

ほんのりいちゃつく奴ら(笑)。そしてデートを取り付けているヴォックス(笑)。この二人真面目なのに仕事は割と公私混同してるというか、無駄にいちゃつきますよね!普段真面目だからよしです、よし。

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