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20話 国落とし

「国落とし、か」

「……いけるか?」

「当然」


 残党掃討戦や復興支援という名の再統治が多かった最近の遠征の中で国攻めがやってきた。現皇帝は武力介入で領土を広げる主義なのだから当然あるだろうとは思う。割りきるしかない。

 介入する国はレースノワレ王国よりも小さいが東側の近い所に新興国イルミナルクスがあり、そことの交易で栄えていた国だった。


「副団長、残党含めて全て公爵邸に集まっています」

「我々は公爵邸に急ごう。第四部隊は残って公国民の手当と誘導を」


 武力についてはからっきしで精々自警団程度しかなく、圧倒的に不利にも関わらず併合の話に対し縦に首を振らない国。

 武力王国レースノワレを併合してからは極端に抵抗する国と即座に併合を受け入れる国とで二分されていた。


「副団長」

「ああ」


 道すがら材木や家財で路地が塞がれ道が一つに絞られている。明らかに何かを仕込んでいるのだろう。

 人数を半分にし警戒を強め先に進む。しばらく進むと足元は問題ないが頭上から家財が降ってきた。


「成程」

「副団長感心してる場合ではありません!」


 家財を避けるために前方に走り出すしかないが、前方にロープが仕掛けられ避けながら進むのは難しい。私は問題ないが後続は多少手こずっているようだった。

 路地を抜け少し開けた場所に出る瞬間、光と共に目の前に剣が現れた。

 

「!」


 左手から地面と平行に振りきられた剣をすれすれで頭を反って避ける。膝を抜けるように避けたから目の前を剣が通るのがよく見えた。

 続けざま最初の敵の影から違う剣の突きがきて、体勢を崩したまま身体を左に傾けるが掠ってしまう。最初の一撃をくれた敵との距離が詰められたので、横腹を剣の柄で殴打したら低く唸ってふっ飛んだ。

 右足を一歩斜め後ろに踏み込み体勢を戻すも同時に左肩を刺される。殴った敵の影で見えてなかった。三人目がいたのか。


「副団長!」


 遅れた騎士が叫ぶも他に控えていた敵が出てきて中に入ってこれない。

 すぐに左腕を後ろに振るえば肩を刺した敵が回避できず顔を殴打できた。遅いし守りもできないのか。左斜め前にいた敵が剣を構えたところで後ろに引いていた左腕を前に振って殴れば私を攻撃してきた内の残りはあっさり倒れる。

 

「剣を使うまでもない程なんて」

「副団長!」


 自分達で敵を倒し、騎士達が中に入ってきた。敵はこれ以上の追撃の気配がない。


「怪我を!」

「ああ、大したことは」


 三人目の持っていた得物を拾い見せる。多少血が滲んでいるのは仕方ない。防具の隙間をうまく刺せたのは獲物が剣でないからだ。


「これで刺されただけだから」

「え? ええとナイフでしたっけ?」

「食事用のね」


 まだそこまで普及していない食事のカラトリーがここにあるのは、やはり東のイルミナルクスとの交易があるからだろう。あの新興国は次々と新しい物を世に広めている。

 そしてこの国は剣という武力がないかわりに食事で使うナイフを持つしかない。ほぼ丸腰で戦争に臨んでいるようなもの。


「少なかったですね」

「僅かに足止め出来れば良かったと考えれば、公爵邸に避難中だったという事でしょうか」

「恐らく」


 さらに奥には狭い路地があったが敵が現れることはなかった。人手も減っただろうし、逃がす事が目的なら深追いは必要ない。


「判断がいいですね」

「感心してる場合ではないと先程も」

「まあまあ」


 予想通り、公爵邸に残党が終結していた。戦える者もいれば女性子供ですら窓からこちらを凝視している。

 庭はいくらか戦える者たちがバリケードを作って控えていた。飛び越えて中に入って殲滅するまでに数分もかからなそうだ。


「副団長」

「はいはい」


 ヴォックスが対話を臨んでいる以上、私が出来ることはない。他の騎士の報告も踏まえ、残党は全てここにあると判断できた。後はヴォックスが役目を果たすだけ。


「団長に伝えて下さい。第三部隊は予定通り動いて」

「はい」


 民は全て公爵邸にいるのなら対話のタイミングとしては今だろう。

 程なくしてヴォックスがやってきた。


「我々は対話を臨んでいる。公爵閣下に伝え頂きたい」


 ピリピリした雰囲気の中、一人屋敷の中に入り公爵本人が外に出てきた。直接こちらと話をしようとしてくれるのはありがたい。

 こちらの主張は降伏をし投降してもらうこと、先にあるのは併合。対してあちらの主張は否定だ。こちらが国の形はそのまま生活も保障し変わらない形をとれるようはからおうとするヴォックスに対し、国自体が失われるなら死んでいるのも同じだと公爵はかたい表情のまま静かに応える。

 レースノワレ王国と同じだ。国としての矜持を持って武力介入と併合を拒否した。


「どうしても……」

「ええ、貴方が誠実に私達に向き合って下さるのは分かっています。しかし侵攻を続けるだけの帝国には私達小国の決意は理解し難い事でしょう」


 貴方なら、と公爵が私に視線を寄越した。


「貴方なら分かりますか?」

ユツィが悪いわけではないんですけど、こういう時どうしても白羽の矢がたちますよね。あ、シリアスにいきそうな感じですが、明日の後半は軽めになります。ご安心ください。

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