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年末

 あっという間に時間が過ぎていく。

 二学期も終わり冬休み。

 雪がちらつく日もあったりでちょっとびっくりだ。

「モールと商店街。モールがいいなぁ。レニーちゃん」

「『無限回廊』によってみたいんだけどね。モールの『KUGUTSU』も気になるから別にどっちでもいいけどね」

「じゃあモールねぇ」

「商店街の方行きたくないの?」

「んー。佐伯さんのお店、商店街にあるからさぁ」

「あー。そうだね。裏イベントの時、ようやく気がついたみたいだしねー。佐伯のおじさん」

「学校終わるまではあんまり近づきたくないんだよね」

 チラッと責めるような眼差し。

「卒業式が終わってからねー」

 向こうのご両親とうまくいけるといいんだけどなー。

 レニーちゃんと一緒に人に贈るクリスマスプレゼントを選んだり、一人だと踏み入れるのが戸惑われるカフェに入ったり。

 クリスマスと年越しは和泉と過した。

 和泉と和泉の弟君をアパートに招いての小さなクリスマス会。

 二十八日には久しぶりに兄に会った。

 両親は離婚して、それぞれに家庭を持っている。

 父親とは連絡を取らなくなってもう十年くらいになる。生活費は入金されるが連絡先は知らない。

 母親はメアドを何とか知ってるけど、こないだ届かなかった気もする。

「結婚したらむこうの家を手伝うのか?」

「手伝う気はあるけれど。他でバイトか、パートをするつもり」

「そうか」

 兄は言葉が少ない。

 きっと私が出て行けば、このアパートを引き払って新しい生活に入るんじゃないかと思う。

 実は恋人とかいたりするのかなぁ?


「まぁ。ここにいるから。いつでも帰ってきたり、遊びに来ればいい。家にいるとは限らないから、鍵はちゃんと持っていけよ?」


 え?

 なんだろう。似合わないよ?


「まだ先の話だよ?」

「気がつけば過ぎているものだからな」


 普段、何も言わないくせに、時間なんか作ってくれないくせに何で今、こんなコト言うんだろう?

 そうだね。時間なんかあっという間に過ぎるんだ。


「実感は持ってるのか?」

「んー。そうするって決めたからそうなるんだよ? 大丈夫。いい人だから」

 ちゃんとお互いに条件はわかってるもの。

「ニートは困るが、しばらくは大丈夫なんだぞ?」

「いつまでもお父さんにお金かけさせるのもねー。今の家庭だってあるんだと思うしさ」

 私が結婚すれば養育費を払う必要はなくなる。

 あんまり、景気がいいとは思えないしね。

 だいいち、

「後戻りしろって言うんなら、このタイミングは遅いよ。兄さん」

 それでも、気にかけてくれてたのがすごく意外で嬉しかったかな。

「遅いのか?」

「遅いよ。そんなんじゃ、タイミング計りそびれて彼女に振られ続けちゃうよ?」

 彼女が居るのかいないのかは知らない。

「はは。彼女にもそう言われたよ」

 力なく笑う。

 兄の言う『彼女』電話だけで繋がっている謎の女性。

 

 兄が学生の時に付き合い始めた彼女との関係と受験の兼ね合いに困って友人に電話相談をしようとして繋がった相手それが『彼女』だ。

 早い話が間違い電話が縁の電話友達だ。

 今のご時勢なら『俺オレ詐欺』扱いだと思う。

 電話口の開口一番、『俺だけど~』が兄の口癖だ。まぁ、そんな間違い電話に三十分付き合ってから『彼女』はようやく『間違い』を指摘したらしい。だが、恋愛、悩み相談はその後も続き、今ではすっかり困った時の電話相談窓口だ。『彼女』もよく付き合ってくれるものだと思う。

 知る限り兄の面白ネタはそれぐらい。

 平凡で特徴のない兄なのだ。

 もしかしたら、兄は『彼女』が好きなのかもしれない。

 だとしたらそれはどんな好きなんだろう?


 


 そう、いつの間にか今年も終わる。


 新しい年。

 私の明日はどんな形になっていくんだろう?


 時は止まることなく、流れていく。

『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』から『無限回廊』

『曖昧MEなうろな町生活』から『KUGUTSU』を話題としてお借りしました。

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