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呪賦ナイル YA  作者: 城山古城


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第九話 演習 一日目 その八

 二


 昼食を挟み、午後、忠陽たちは野外演習場に集められた。そこには八雲といけ好かないハンサム顔の金髪男と、銀髪の爽やかな男、鼻に絆創膏をつけたやる気のなさそうな男、金髪の三つ編みお団子姿でヘアバンドをした綺麗な女がいた。


「は~い、皆さん、こんにちはー!」


 いけ好かないハンサム男が楽しげに挨拶をした。だが、誰一人として返事をしない。


「あれあれ? 皆さん、元気がないようだけど、もう一度挨拶するぞ。こん、にち、は!」


 まばらに挨拶が返ってきた。


「ビリー隊の隊長、ビリー・シンです。親しみを込めて、ビリーくんって呼んでね」


 超絶笑顔で女性陣を見ながらお願いしていた。


「隊長、皆引いてるって……」


 鼻に絆創膏をつけた男が引き気味に忠告した。


「お前は黙って――」


 ビリーが言いかけた瞬間、良子によって蹴飛ばされた。ビリーは数メートル先で無様な姿で倒れる。


「酷いっすよ、姐さん……」


「話が進まん。全員揃っているな? 今から基礎訓練を行ってもらう。まずはそのリュックサックを持ってのランニングだ。周回コースを一時間。その後に筋力トレーニングだ」


 突然のことで忠陽たちは理解が出来なかった。


「返事は?」


 忠陽たちはまばらに返事をする。


「返事はサーイエッサー! 分かったか!?」


「サーイエッサー!」


 全員が背筋を伸ばし、返事をする。


「お前らとともに基礎訓練をするビリー隊を紹介する」


 良子はその場から離れると、ビリーが前に出た。


「改めて、ビリー隊、隊長のビリー・シンだ。狙った女は必ず落とす、俺のスナイピングからは逃げられないぜ、お嬢さんたち……」


 手で作った銃で女性陣を撃ち抜く真似をした。女性陣全員から(さげす)まれていた。


「あっ! 彼女募集中なんで、連絡先待ってま―」


 良子がビリーを蹴っ飛ばす。


 そして、申し訳無さそうに銀髪の爽やかな男が前へ出てきた。


「あの、自分の名前は葛城蔵人(くろうど)と言います。ビリー隊の副隊長です。以後よろしくお願いします」


 蔵人の名前に誰もが良子の顔を見る。だが、良子は一ミリたりとも表情を変えていなかった。忠陽と由美子は再び、蔵人を見ると温和だが目元が九郎にそっくりなことに気づいた。


「自分、服部平助って言います。てっか、なんでめんどくせえことになってんだ?」


「平助……」


 蔵人の声で、平助は後ろからの殺気に気づき、姿勢を正す。


「いえ、精一杯やらせて貰います!」


 そう言って、平助は下がっていった。


 金髪の三つ編みお団子ヘアの女性がお淑やかに頭を下げた。

「アリス・プレザンス・シュタイナーと言います。私はドイチェランド軍部から交換留学という形で大和皇国に来ています。宜しくお願い致します」


「以上が、ビリー隊だ。貴様らのことはもう知っているから挨拶の必要はない。さて、始めるぞ」


「あの、すいません」


 朝子が手を上げていた。


「何だ?」


 良子は朝子を睨む。朝子は怯みながらも反抗した。


「なぜ私達が基礎訓練をしなければいけないんですか?」


 誰もがアイツ、今日で殺されるという顔をして、朝子を見る。


「私の部屋に来たときも言ったはずだ。ここは軍隊だ。貴様らの都合は聞かない。我々と共に生活をしてもらうと」


「それは、そうですが、訓練までとは――」


「朝子くん、黙ってやりい。君らの基礎能力が上がった際に呪具への影響がないかも知りたいんや」


 伏見は朝子の言葉を遮り、命令した。


 朝子は舌打ちをしながら、そのまま黙った。


「他に何か質問はあるか?」


 手を上げていたのは八雲だった。


「俺は何でここに呼ばれたんですか?」


「キサマもやれ、キサマへの懲罰だ」


「懲罰? そりゃないぜ、りょ……二佐……」


「先の演習ではキサマだけが得点を上げていなかっただろう?」


「いや、ちゃんとゆみをリタイアにさせて――」


「お前の得点ではない。リタイアは得点にならないのがルールだ」


「はあ!? そりゃないでしょ?」


「ルールはルールだ。零点の無能は修正対象だ。つべこべ言わず、やれ!」


 八雲は頭を掻いていた。


「返事は!?」


「サーイエッサー! ったく、相変わらず……」


 八雲は銃を抜く音が聞こえ、言葉を止めた。


「八雲二尉、誠心誠意、やらせていただきますー」


 八雲は用意されたリュックの前に行き背負った。


「貴様らもボサッとするな。さっさと背負え!」


 忠陽たちはすぐに動き、ザックと装備一式を持ち上げようとする。


 その物体を忠陽は持ち上げられなかった。他の人を見ると、蔵人、平助、アリス、ビリーはらくらくと持ち上げ、背負っていた。だが、学生の連中はザックの前で固まっていた。


「良子さん……持ち上がらない……」


 由美子はそう呟く。


「何を言っている。貴様らには通常の訓練の負荷より軽くしている」


「何キロですか……」


「三十キロだ」


 その重さに忠陽たちは汗を垂らす。


「持てないのか?」


「普通、呪力を使わない限り無理ですよ……」


 由美子の小声の抗議で、良子は無言になった。


「よし、ザックだけ持っていけ、そうすれば十キロぐらいだろ」


 全員がそうじゃないとツッコミを入れたかったが、黙っていた。


 忠陽達はザックをなんとか背負い、千鳥足で走り出す。


 ビリーが先頭になり、後方を蔵人とアリスが位置取り、忠陽たちを前後で挟むように列を作り、走る。ビリーは陽気に歌い出す。


「俺たち、最強、独立隊!」


 それに続くように平蔵と蔵人が歌う。


「おませなあの子も知ってるぜ!」


 その歌声は空に響き、ミリタリーケイデンスに合わせて足音が鳴り響く。

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