第九話 演習 一日目 その一
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伏見は控室の前に立つと、忠陽たちを呼び、円陣を組ませる。
「作戦なんて、さっき言うたけど、そんなもんは君らに必要ない」
「はあ!?」
由美子が伏見を睨む。
「どうしんたんや、姫? もしかして、僕の作戦を楽しみにしとったんか?」
「違うわよ」
「でも、グラサン先生、この前、俺等四人係でも八雲さんには勝てなかったぜ?」
「なんや、臆病風吹かれたんか? あれから一ヶ月以上経っとんで。僕が君ぐらいの頃は日々成長しとった。君らも成長してるやろう」
大地はムスッとした顔をする。
「誰も臆病風に吹かれてねえよ。分かったよ、やってやろうじゃん」
忠陽は二人が伏見にうまく乗せられていることが分かった。
「忠陽くん、どないんしたんや?」
「いえ、べつに……」
「まあ、皆、他にも言いたいことはあるやろうけど、相手は呪術特科の中でも指折りの部隊や。まずは君らがやりたいように戦って、強さを見てき。ええか、小手先の技はいつでも覚えられる。だけど、真っ向からぶつかることができるのはこの一度きりや。楽しんでき」
伏見はそう言うと、控室の奥へと入っていった。
「伏見先生!」
藤は伏見を呼び止めるも、聞く耳持たずのようだった。
「もー。どうしてああなのよ」
藤は忠陽たちをみて、鼻息を荒くしていった。
「皆、頑張るのよ! 伏見先生をギャフンと言わせてやりましょう!」
藤は両拳を握りしめて、意気込んだ。
「藤ちゃん、ありがとう」
朝子はさらりと言っていた。
「藤先生、速くアイツに追いつかないと迷子になりますよ」
由美子は武器を確認しながら言っていた。
そのギャップに藤は戸惑っていた。
「藤くん、速く来いや。置いていくで~」
「分かってますよ!」
藤は控室の奥へと走り出し、すぐに伏見に追いついた。
伏見は藤が来るの見て、エレベーターへと向かう。
エレベーターの前にまで行くと藤が口を開いた。
「ねえ、京介。やっぱり、作戦と考えてあげたほうが良かったんじゃない?」
伏見の後ろで、藤は両指を遊びながら言った。
「さっきも言うたやろ? 小手先の技はいつでも覚えられる」
「でも、私達はあの子達に自信をつけさせてあげるのが先生としての役目でしょ?」
「自信? 自信ね……」
エレベーターの前に到着し、二人は乗り込んだ。
「自信なんて意味のない言葉や」
「ちょっと……」
「日那乃くん、一番大事なのはどんな時でも折れない心や。これから彼らが生きていく中で、僕らが想像している以上の苦難が訪れるかもしれへん。そのときに折れなければ生き残ることはできる」
藤は生き残るという言葉に疑問だった。
エレベータが着き、正面にはある演習場の展望室に二人は入った。
中には良子が席に座っており、その右隣にはいかにもスカした亜麻色の髪の男が居た。男は立ち上がり、藤に握手を求める。
「ビリー・シン。貴方の心を撃ち抜く男です」
藤は身の毛が逆立ち、手を握ろうとしなかった。
「おっと、すいません。僕の心は貴方に撃ち抜かれていました」
キザなセリフに嫌悪感を抱き、伏見の後ろに隠れた。
「あれ? やりすぎたかな?」
「ビリー、ささっと座れ」
「はい、姐さん!」
伏見は良子と間を空けて座った。藤は伏見の左隣の席に座った。
「伏見、何か作戦でも与えたのか?」
良子は口を開く。
「なにも」
「そうか。なら、奴らの実力が見れるということか」
伏見は黙っていた。
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演習場に警報音がなり、演習が始まる。
八雲たちが演習として選んだのは山岳高地帯だった。それに合わせて八雲たちの戦闘服が山岳帯の迷彩に変わっていった。
八雲は樹に高台から敵の位置を探るように指示し、自分たちは岩影に溶け込むように潜んだ。
「うわ、ここからじゃ、どこにいるか全然分かんない」
藤は展望室から景色を見て、八雲たちを探していた。
「当たり前や。そのための迷彩やからな」
伏見は冷静に答えた。
「あの子達は演習着ですよ。ズルいじゃないですか!」
「戦いにズルイもない。持ってるものをいかに有効活用するかや」
樹は高台に登り、忠陽たちの位置を探る。
八雲は腕輪にある呪力による念話機能を使って、樹に報告を促す。
「ちょい、待ち……」
樹は狙撃銃の望遠を覗く。
「どうだ、あいつらの様子は?」
八雲は再び樹に確認した。
「あーあー、ダメだな。素人丸出しだぜ」
「学生なんだから仕方ないじゃない」
奏は冷たく言った。
「あの頭の悪そうな奴は真っ直ぐ進んでる。加織から零時方向、距離百かな……」
「あのアホ、正面突破と考えてるじゃねだろうな……」
八雲はそう呟きながら、頭を抱える。
「その子、天谷であんたが訓練してた子でしょ? アンタ、何教えてたのよ……」
奏の言葉が八雲の胸に刺さる。
「頭の悪さまで面倒見きれねぇよ」
「そういうタイチョーもたまに脳筋みたいなこと言うからなー。類は友を呼ぶってことかな?」
加織は笑っていた。
「お前に言われたくないよ!」
八雲の一言に樹と奏が笑っていた。
「不貞腐れていた女の子、発見。なんだ、なんか彷徨ってるな。頭の悪そうなの後方五十。後回しでもいいっぽい」
「了解」
八雲は返事する。
「さてさて、ゆみちゃんは居ないかな……」
樹は由美子を探すもの見つからなかった。その代わり鞘夏を発見する。
「ゆみちゃん、見つかんないよー。代わりにお人形さん、見つけた。なんか、九時の方向に移動してるな……」
樹はその先を見ると、忠陽を発見した。
「もう一人、発見! あの優しそうな男の子。岩影を使いながら隠れてるよ。この子、分かってるじゃん」
「大地のヤツがアホなだけだよ。気をつけろ、そいつは完璧に近い隠行ができる。残しておくと厄介だ」
「おっ、本当だ。スゲーな。次の岩影に移った後、もう追えなくなった……。奏!」
「分かった。おおよその場所を教えて」
「八時方向、距離二百」
奏は呪力を放出し始める。
「よし、奏は賀茂の索敵。加織はそのまま奏を守れ。大地と接敵したら容赦なく返り討ちにしろ」
「アイサー」
「樹、ゆみは必ずお前を狙ってくる。賀茂を一発で仕留めろ」
「見つけた! 八時、距離百五十。私の呪力でマークした。いいわよ!」
樹は奏に指示された場所を見ると淡い光が動くのを見える。
「さて、一人目、いっただくよーん♪」
樹は狙撃銃のトリガーを引く。弾道は忠陽を目掛けて走り、腕輪が生成する薄い膜を通る。
その瞬間に忠陽の呪防壁は自動的に起動し、忠陽の呪力を抜き取った。
呪防壁は狙撃銃から放たれた訓練弾を弾くも、その衝撃で忠陽は体制を崩し、倒れてしまった。
「あー。頭外しちゃったよ……。八雲、あと頼む」
「了解。奏、そのまま索敵頼む」
「ええ」
樹が狙撃場所から離れようとした瞬間に弦音が鳴り、樹が居た高台を破壊し、霧散させた。
「ひゅー。やっぱり、ゆみちゃんに狙われてた。威力も申し分ない」
「奏、ゆみにもマーク――」
「やってるわよ!」
「サンキュー。じゃあ、俺も動くとするかな」




