第七話 誰そ彼、輝くは天と地と、祓い清め給ふは弓の姫 其の十五
次の日、由美子は車で忠陽のマンションまで迎えに来ていた。
車から出てきた由美子は白いシャツに黒の長いスカートを着ていた。どこから見ても、令嬢であり、すれ違う人は彼女を目で追っていた。
由美子は漆戸を引き連れて、マンションの入り口へと入る。昨日の鞘夏から電話で教えて貰った部屋番号をインターホンに打ち込み、呼び出す。
呼鈴がなり、しばらくして、鞘夏が出た。
「こんにちは、鞘夏さん。昨日のお話したように迎えに来たわ」
「すぐにお伺いします」
数分後に鞘夏が降りてきた。その姿は制服だった。
「制服……」
由美子はそう呟いた。
「なにか、お気に召さなかったでしょうか?」
「いえ、そうじゃなくて、普段着は持ってないの?」
「いえ、何着かはありますが、後は給仕服と制服です」
「使用人の鏡ですな」
漆戸はホッホッホッと笑った。
「学校以外では制服を着る決まりではないのですか?」
「誰かそんなこと言ったの?」
由美子は眉間にシワを寄せていた。
「鏡華様はお休みのときに制服で出かけられていたので……」
「そういうこと……。たぶん、それは一つのファッションだと思うわ。翼志館では外出時でも制服を着るなんて校則はないわよ」
「でしたら、着替えて来たほうが良いでしょうか?」
「その必要はないわ。私、いいことを思いついたし」
「いいこと?」
鞘夏は首を傾げる。
漆戸はホッホッホッと笑っていた。
「それより賀茂君は居なかったの?」
「朝、宮袋様からお呼びがあり、外出しました」
「そう。爺や」
「はい、畏まりました」
「どうかされましたか?」
「ううん、何でもないわ。さ、行きましょう」
由美子は鞘夏の手を引き、車へと乗り込む。その後をゆっくりと漆戸が歩いていた。
三人が乗り込むと、車が走り出す。二十分ぐらいで中央街へと着いた。そこから中央街の外れにある複合施設形ショピングセンターへ車は進んだ。
由美子はそれを見て、ガラス越しから綺麗なモノを眺めるかのように目が輝いていた。
鞘夏はたまに鏡華と一緒に来るため、真新しさはなく思えた。
三人は車から出ると、由美子は鞘夏の手を引っ張った。その足取りは軽やかで、弾んでいた。
「早く、早く!」
急かす由美子を見て、鞘夏は戸惑う。いつも毅然とした態度の由美子ではなく、鏡華のように明るく、活発な少女だった。それが嫌というわけではない。その違いが鞘夏の中では整理できなかっただけである。
二人はショピングセンターに入ると、由美子は感嘆とした声を上げる。ショピングセンター入り口から見える人でも数十人は居た。家族連れや、恋人、友人と、千差万別だった。
「初めてでいらっしゃいますか?」
由美子は二回頷く。
「すごいわ。遊園地に来たみたい!」
鞘夏は後ろに居る漆戸を見る。漆戸はにこやかにしていた。
「行きましょう! でも、一日で回れるかしら……」
由美子が走り出そうとした。
「神宮さん、走っては―」
その前に由美子は他の客とぶつかっていた。
「ごめんなさい……」
他の客は別に何も言わず、笑いながら通り過ぎた。
「気をつけないと……」
由美子はあざと可愛い顔を鞘夏に見せた。その顔がなぜだか、鏡華を思い出す。
二人は一階から一通り店を見ることにした。午前中で見回ったのは雑貨屋や洋服屋、合わせて十件。由美子は買うというわけではなく、物珍しそうに見ていた。時たま鞘夏に品物を尋ねるも、鞘夏もすべて知っているというわけではなく、困った顔をしてしまった。
昼食を八階にあるレストラン街で食べることにした。二人は色んな食べ物に驚きつつも、由美子が選んだのはなんとラーメン屋だった。
その店はキャチィーな店のテーマ曲流れている全国区のチェーン店だ。音楽からはヤサイオオメ、アブラカラメという言葉が可愛い女性の声が歌い上げている。店の名前は「RyuRyu亭」と呼ばれ、龍龍系と呼ばれるラーメンのジャンルを作った人気店であった。
その二人を追うように帽子被り、黒いサングラスを掛けた青年が後を入っていった。
二人は昼食を食べ終え、RyuRyu亭から出ると服飾屋巡りを始めていた。
「鞘夏さん、なにか着たい服はあるかしら?」
「とくに有りません……」
「そう。なら、私が服を選んでいいかしら?」
鞘夏は驚いた。
「服にあまり興味ないでしょう?」
「はい。普段は給仕服を着ていますので……」
「それは、それでみたいわね……。賀茂君、毎日見ているのでしょう? ズルいわ」
「神宮さんの家には給仕が大勢いるのではないのですか?」
「本邸にはいるわよ。でも、同い年は流石に居ないわよ。それにこんな風に話せる人なんて」
「そうなのですね……」
「敬語止めてくれない? 友達でしょ?」
「それは……」
「なら、ゆみって呼んで。親しい人はそう呼ぶから」
鞘夏は目線を反らした。
「急には無理よね……。私も真堂さんじゃなくて、鞘夏ってよんでもいいかしら?」
鞘夏は頷く。
「ねえ、鞘夏。あの店に入りましょう」
そこは全国にチェーン展開をする服飾店だった。生地の質がよく、その割にはリーズナブル金額であるため、幅広い世相まで人気店である。
二人が入るのを見届け、帽子被り、サングラスを掛けた男もあとを追って入ろうとした。その時、漆戸がそれを遮るように立ちはだかる。
「気になりますかな?」
男は黙っていた。
「まだまだ、隠業が甘うございます。それでは姫様を誤魔化せても私は誤魔化せませんな。術の性質変化に感情の色が付いています。まだまだ青い」
男は後ずさる。
「少し、あそこの席でお茶でも飲みませぬか。私も歳ゆえずっと立っているのが辛い。どうですかな、賀茂殿?」
忠陽はサングラスを取った。
「分かりました……」
漆戸と忠陽は、二人が入っていった服飾店が見える位置の長椅子に座った。
漆戸に通りすがった男がお茶を二本渡した。その行動を見て、忠陽は辺りを見回す。
「貴方が気づかないうちに、貴方は他の誰かから見られていたのですよ。温かいお茶で申し訳ない」
漆戸はペットボトルを忠陽に渡す。
「こういうことは初めての試みでして、意外に骨を折ります」
「貸し切りなんですか?」
漆戸は笑う。
「そのようなことは致しません。ただ、事前に警備計画をしています。ざっと百人くらいは居ます」
忠陽は青ざめた。
「そう驚かないでください。それだけこの島を、私は信用していないということです」
「港湾事件があったからですか?」
「あれは……。いえ、あの事件は貴方の知ってのとおり施設が破壊されたことは些細なことです。ですが、神無様が久遠を放たねばならなかった敵だったという認識はしていますが……」
忠陽は漆戸を警戒した。
「私は神宮家に仕えて長いのですよ。あの方の母君にも仕えておりました。ちょうど、今の姫様のように……」
漆戸はペットボトルを開け、口をつけた。
「意外にこのお茶は美味いですな」
「僕に何のようですか?」
「いえ、姫様は貴方を捕まえて、真堂様の件で疑いを晴らしたいと思っています。ですが、私はそのようなことは必要なく、ただ純粋にこの時を楽しんでほしいのです」
「そうですか……」
「姫様にとって、何が大事かを考えたとき、姫様には思い出と友達が必要だと思いました」
忠陽はため息をつきながら、俯いた。
「貴方も、姫様が真堂様を引き抜くなんてことをする人ではないと、表面上ではご理解頂いている。ですが、一分の疑いがあるのなら、それを捨て置くことができなかった。それほど貴方にとって彼女は家族のように大切な人だ」
「鞘夏さんは、今まで自分から何かをしたいという人ではなかった。だから……」
「その気持ちは分かります。私とて、貴方たちに対して同じ事を思っていますから」
「どうしてですか?」
「姫様はよく笑われるようになった。それに今まで自分を抑えて、こういう所へ行くこともしなかった。私には、そうさせてあげることができなかった」
「そう、なんですね……」
「貴方は、真堂様を、どうしたいのですか?」
「どうって……」
「彼女は貴方を裏切ったりはしません。従者生活五十余年、私が保証しましょう。彼女の中には常に貴方がいます。私には、そう見えるのです」
漆戸は立ち上がる。
「さて、そろそろ姫様に気づかれるので戻ります。真堂様はお家まで安全にお帰し致しますのであしからず」
漆戸は礼をすると、すっと離れていった。
忠陽は長椅子に座りながら、帽子を深く被った。
RyuRyu亭というのは、とある声優さんのシングルから来ています。
本当にキャッチーな曲なんですよね。キャッチーな曲にも関わらず、販売もまたキャッチーです。
Newどんぶりシングルって・・・。どんぶりを販売して、そのお椀の下にQRコードがある販売方法にM3まで行って、並んで買いました。
また、すごいのが二郎系のラーメンを自分で作ってしまうところなんですよね。昼間から半日かけてラーメンを作る工程を視聴者は見守る。よく自炊するのでラーメンの作り方が見れて楽しかった。
二郎系というと、私がよく食べているのはラーメン二郎です。
どこの店とは書きませんが、月に一度はそこのラーメン小(半分)、最近まではラーメン小(汁なし、少な目)を食べていました。
本当に月一なのですが、その時は罪悪感を解き放ちます。
Kawaii♡Dragon 山村響
「Kawaii♡Dragon」を聞きながら




