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呪賦ナイル YA  作者: 城山古城


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第七話 誰そ彼、輝くは天と地と、祓い清め給ふは弓の姫 其の十二

 大地は八雲との会話を思い出す。


「なぁ、相手が自分より強かったらどうすんだ?」


「そりゃあ、逃げるさ」


「なんだよ、グラサン先生と同じこと言ってるな……」


「当たり前だよッ」


 八雲は大地の頭をチョップする。


「叩くことねえだろ?」


「お前はこうやったほうが覚えるだろ?」


 大地は否定しなかった。


「逃げられるときは逃げていいんだよ。大体、逃げるのが悪いみたいなことを言ってる大人の方が逃げる奴だからな」


「そうなのか?」


「本当に逃げちゃいけないときは、逃げられないようにできてんだよ」


 八雲の笑顔は大地の脳裏に焼き付いていた。


 大地は深呼吸をする。目の前にいる浪人笠の視線は見えない。しかし、その構えから強さは想像できる。自分の格闘戦では近づく前に棍で払われてしまう。


「逃げるぞ…」


 そう呟く大地が、忠陽は意外だった。いつもの大地なら猪突猛進に挑むはずだ。


 忠陽は頷き、式符を束で取り出し、ばら撒いた。


 浪人笠は動きを止める。


 式符は地面に落ち、そこから黒色の物体が滑り出てきた。出てきたのはカラス。無数のカラスは浪人笠に群れ始めた。


 浪人笠は棍の両端を引っ張り、三節棍のようにして、迎撃をした。


 その間に二人は後方へと走り出す。


 走り出した同時に、忠陽たちの前のコンクリートの地面に何かが突き刺さったように抉れた。


 忠陽達はその何かによって、動きを止め、浪人笠の方を振り返る。


 浪人笠に群がっていたカラスはすべて倒されており、浪人笠は忠陽たちに何かを放つ格好をしていた。


「動くな」


 浪人笠は低い声で忠陽たちを呼び止める。それだけで忠陽たちの背中に冷や汗を掻かせた。


 そこへ一筋の光が走った。光は浪人笠に向かい、風を舞起こしていた。


 風が止むと、忠陽たちの目の前には八雲が立っていた。


「あれ? 仕留めたと思ったんだけど、な」


 刀と棍は鍔迫り合い、お互いの力を押し合っていたのを、八雲は一度引き、さらに力を入れて、押し出した。


 体勢を後方へと崩す浪人笠は、棍を振る。そうすると、棍は瞬く間に伸び、穂先が八雲の刀に当たり、押し返した。


 すぐに穂先は戻り、また形を棍へと変えた。浪人笠は棍振り回しながら、八雲の顔に、棍の穂先を向けた構えにした。


「八雲さん!」


「話は後、先ずはこっちだ。手を出すな」


 八雲は浪人笠を見る。構えからは間合いを図っているのは分かった。繰り出されるのは突き、打ち落とし…。懸念は三節棍にもなる特殊な形状なこと。持ち手は末端を持ってることから、形状がばらけたとしても、縦薙ぎ、間合い伸ばした突き…。いずれにしても、こちらの得意な間合いには入れさせないようにしている。


 八雲は、唾を呑む。そして、目の色が変わった。


 忠陽たちはその様子がはっきりと分かる。鍛錬とは違う。その目には闘志が宿り、戦いを楽しんでいる目だった。


 八雲が脇構えを取る。そして、忠陽たちの前から消えた。


 浪人笠も一瞬のことで驚きを隠せなかったが、すぐに塀の音に気づき、自分の左側面からの攻撃を防いだ。


 常人の領域を超えた移動速度と斬撃に、浪人笠は押されていた。八雲はまたふっと消えると、浪人笠は誰もいない方向へ親指で数度、何かを弾くようにしていた。


 すると、塀と地面が抉れ、八雲が姿を表した。


「闘気の指弾か……」


 浪人笠は棍を振り回し、遠くにいる八雲に突き出した。棍は関節が伸び、七節棍になっていた。


 突きは八雲に斬り返されるも、浪人笠は七節棍を引き、形を三節棍へと変え、左右に持ち手を変えながら縦回転に振り回した。


 回転はすぐに凄まじい勢いになり、その勢いを保って八雲に近づく。近づいているとき、地面に触れた瞬間、その地面を抉っていた。


 浪人傘は八雲が自分の間合いに入ったとき自らの体も捻りながら、打撃を繰り出す。


 八雲は刀で受けることはせず、後ろに飛び退いているが、三節棍の一撃目が終わると同時に体を撚ることですぐに二撃目がほぼ一撃目と同時に繰り出されいた。


 浪人笠は八雲がさらに後ろに飛び退くのを見て、三節棍の攻撃を止め、指弾を数発放つ。


 八雲は見えない弾をを切り落とすが、浪人笠はその間に三節棍で近づいた。


 浪人笠が穂先を叩きようとすると、八雲はそれを避けながら斬り払う。

 

 その斬り払いで、浪人笠は間合いを取り直す。


 浪人笠は攻撃を仕掛けようと構え直すが、突然構えを解き、夜の空を見る。


 八雲は様子を伺った。


 浪人笠が再び、八雲を見る。懐に手を入れると、筒状の物を取り出し、筒から出ている紐を口で引き、八雲たちに投げつけた。


 筒は破裂し、閃光を放ち、三人の視界を塞いだ。


 光が止み、元の暗い夜の風景に戻ると、浪人笠は消えており、病衣を着た死体だけ残されていた。


 八雲は辺りの気配を探るが、浪人笠の気配が徐々に消えていくのを感じた。


 八雲は納刀とし、死体に近寄る。しゃがみ込んで、死体を見ると、頸動脈を噛みちぎられたような不自然な痕だった。


「なあ、お前ら。お前らがアイツを見たとき、この死体はどうなっていた?」


 近づく忠陽たちに八雲は問うた。


 二人は首を傾げる。


「いや、わかんないッス」


 大地が答えた。


「そうか……」


「いや、それよりもあいつは何者なんだ!?」


 八雲は立ち上がった。


「さあ、何者なんだろうな? 暗殺者の類だと思うが――」


「暗殺者!?」


 二人は口を揃えて言っていた。


「あの格好と武器、指弾、どう見ても軍人じゃないだろ? 傭兵と言っても殺し屋に近いほうさ」


 二人は平然としてる八雲に驚いた。


「さて。なんでここにいるんだ、お前ら?」


 二人の背筋は直立に伸びた。


「お前ら……。軍に釘刺されてるんだろ?」


「いや……ちょっと……」


 大地がそう言うと、二人は八雲に頬を殴られ、地面に手をついていた。


「ささっと、ここから離れろ。子供が居ていい場所じゃない」


 忠陽たちに立ち上がり、八雲に敬礼をして、その場を速やかに離れていった。


 静まり返る道路。これだけ暴れたというのに、人っ子一人出てこない。それに異常性を八雲は感じていた。


 八雲の携帯に電話が掛かってきた。電話に出ると、嫌な声がした。


「お疲れさん」


「浪人笠は追えたか?」


「いいや、いつもの忍者に足止めされたわ」


「使えねーな」


「そう言う君こそ、あんな奴も倒せへんとは英雄も型なしやな」


 八雲は奥歯を噛み込む。


「おい、この島にはあんな連中が多いのか?」


「分からん」


「何だよ、それ?」


「君なら一人で突き止められるか?」


 八雲は鼻息を鳴らす。


「二人の件、ありがとうな」


「なんだよ、気持ち悪い。言っとくが、あれには首輪を付けたほうが良くないか?」


「そうなんやけどな……」


「なんだ歯切れが悪いな」


「死体はどうする? 軍で持っていくか?」


「いや、呪捜部に引き渡す」


「さよかい。呪捜部には連絡はしとくさかい、あとはよろしゅう」


「分かったよ」


 八雲は電話を切り、呪捜部が来るまでさらに死体を改めて検分することにした。


 死体は女だった。患者衣を着ており、下着すら来ていない。それがこの住宅街を歩いていたのも不思議だった。頸動脈を食いちぎられており、右肺に槍みたいなもので突き刺された跡があった。死因は右肺破裂によるものだろうか。


 八雲は少女に手を合わせた。


 *


 翌日、朝から忠陽と大地は、翼志館に呼び出され、生徒指導室で反省文を書かされ、更には生徒指導室の前の廊下でずっと正座をさせられた。


 学校中の生徒からクスクスと笑う声に大地は怒りを覚えていた。


 由美子は正座された二人をわざと見るために、鞘夏とともに訪れていた。


 由美子は、大地の情けない姿を見て、せせら笑う。


「鞘夏さん、見なさい。これが他校の頭の悪い猿みたいよ」


「てめえ!」


「大地くん、動いたらもう一時間追加になるよ」


 大地は舌打ちををして、我慢した。


 由美子は鼻で息をした。


「賀茂君。これに懲りたら、夜で歩くなんて辞めなさい。人の思いを踏み躙らないで……」


 忠陽は何を言ってるのか分からなかった。


 由美子は悠然と教室へと踵を返す。鞘夏は忠陽に深い礼をして、帰っていった。


 放課後、鍛錬で二人は八雲の容赦のないシゴキで体をボロボロにしていた。半分は八雲の憂さ晴らしかと思うぐらい、その当たりが強い。


 休憩をする八雲に伏見が近づく。


「あんまりやりすぎると、また保健室で怒られるで」


「いいんだよ。あれぐらいやらないと実戦じゃあ戦えない」


 伏見はため息をつく。


「そうや。君に言うとくことがある」


「なんだよ、改まって」


「昨日の死体、警察署の霊安室から盗まれてしもうた」


 八雲は立ち上がり、伏見を胸ぐらを掴む。


「誰か掴んでいるのか?」


「監視カメラもすべて記録が改ざんされとった。今、この島の呪捜局の局長と警察署の署長が大忙しいや」


 八雲は手を離す。


「行政内部に内通者がいるってことだよな?」


「さて、きな臭いことになってきたなあ」


「他人事じゃねえぞ」


「僕に館山が平謝りしたんや。それ以上は責められへん。ここは荒事専門の英雄様に任せるしかあらへんやろ。僕の生徒をボコボコにしてるようにあの笠漢をのしてください」


 八雲は引き攣った顔をしていた。

浪人笠というと、時代劇。名だたる悪役はこの浪人笠を被って、無言で現れます。

人斬りの姿図というとこの浪人笠が必須かもしれませんね。

私が今、一番に思い出したのは、YAIBAの柳生十兵衛です。この柳生十兵衛、鬼丸が刃を殺すために刺客として、魂に狼を憑依させて復活するのですが、その目的を忘れたまま武者修行をしている所で刃たちと出会います。なので、非常に好青年でしたが、酒を飲むと狼男に戻り、刃たちと戦います。それがかなり強い。かなり苦戦しますが、要は酒を飲ませなければこの狼男は現れないので、以後酒を与えないように刃たちは動きます。なので、柳生十兵衛というのはそんなに活躍する様子もなく、最後まで行くのですが、最後の最後にこの柳生十兵衛が対戦相手として現れます。

ごめん、お前のことを見くびっていたというほどに凄まじく強く、堂々と難敵と言っていいほどのキャラクターでした。

そもそも、YAIBAって何よって思われている人がいると思いますが、私の中では名探偵コナンや四番サード、マジック快斗などよりも好きな作品です。雷神の玉、竜神の玉、覇王剣、木刀。子供がワクワクするアイディアと技には感服します。


管弦楽曲 ジャイアント・ロボ 完全盤 天野正道

「アルベルトの襲撃」を聞きながら

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