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呪賦ナイル YA  作者: 城山古城


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第十話 ずっ友? やっぱりお姫様よね……

 真は立ち上がり、体の感覚を確かめていた。さすがに今まで通りとはいかない。だが、技が出せないというほどではない。あとは気持ちだけ。気持ちだけは他の誰にも負けないつもりでいないといけない。


 真がそう思い、気持ちを切り替えるために深呼吸をする。深い息を吐き終えると、建物の瓦礫が落ちる音がする。真はその方向を見ると、肩で呼吸をする朝子が居た。


「氷見朝子……」


 朝子は構えた。それと同時に弦音が鳴り響く。真横の方向から由美子の矢が跳んでくることが分かり、真は構えた。


「天野川流、奥伝。乾為天(かんいてん)!」


 真は由美子の矢を吸収し、自らの闘気に変換し、その闘気を朝子に向けて放つ。闘気は広範囲に放射し、朝子がいる建物ごと破壊する。


 朝子は防御姿勢を取っており、前方に呪力を高めていたため、何とか防ぎ切るも、二軒先の建物へと吹き飛ばされていた。


「氷見さん!?」


 由美子の呼びかけに朝子は体を起こし、返事をする。


「大丈夫。まだ、やれる」


 真は氷見が吹き飛んだ方へ片腕を向け、もう片方の拳を引きながら力を入れる。


「天野川流、極伝。羅刹天(らせつてん)!」


 繰り出した拳から闘気が捻り狂うように発生し、眼の前の建物ごと破壊し、朝子へ向かう。


 由美子はその技を見て、氷見に逃げるように指示するとともに、矢を放つ。


「陣風!」


 由美子から放たれた渦巻いた風は建物を削りながら真の技へとぶつかり、その進路を変えた。その光景を見て、由美子は忠陽の呪術を受けて体力が削られているのに、力が増していることに疑問を持つ。可能性として上げられるのは自身の放った矢を利用された。それに気付いたとき、由美子は奥歯を噛みしめる。


「氷見さん。私にあなたの命を預けてほしい……」


「いきなり、何よ!?」


 朝子は眉間に皺を寄せながら、その場から離れる。


 真は朝子を追おうとはせず、由美子に向いた。


「武さんは私の呪力を利用して、自分の技の力を強くできる」


「そんなの、賀茂が言ってたじゃない」


「さっきみたいに私が矢を撃てば、それを利用して、私やあなたを倒しに掛かる」


「だから、何が言いたいの?」


「なら、一撃で仕留めるしかない」


「そうね。でも、私にはあいつを一撃で仕留める自信なんてない。あんたはどうなの? あの雷の矢で倒せる?」


「紫電では無理。たぶん次は利用される」


「なら、さっき使った技は」


「飛燕でも無理だわ」


「じゃあ、何ができるのよ」


「一つだけある。でも……」


 由美子の自信なさげな口調から朝子は悟った。


「他にやれることは?」


「それしか思いつかない」


「なら、それをしなさい。さっきも言ったでしょう? 私は負けるなら今やれることをやりたい」


 由美子は俯く。


「ムカつくけど、今の私じゃあ、あの武は倒せない。でも、あんたなら倒せると思っている。それは賀茂も、宮袋も同じ。言いなさい。私は何をすればいいの?」


 由美子は一呼吸して口に出す。


「あなたの全力の攻撃を、あいつに叩き込んで」


 朝子は吹き出し、大声で笑う。


「なんで笑うのよ!」


「だって、一番簡単だから」


 由美子は口を尖らせる。


「もし、奇門遁甲の陣を使われたら、私だけでも無理だし……その対策としては同時攻撃が必須なわけで……」


「分かってるわ。あんたのことだから、武に飛びついて動きを止めろだの、噛みついてでも動きを止めろだの言いそうだから」


「言わないわよ!」


「そう? 賀茂にはそんなことを言ってるでしょう?」


「それは……賀茂くんは……」


「あとで、ちゃんとお礼を言いなさいよ。ここまで来れたのはアイツのおかげだし」


「そんなのは分かってるわよ。あと、あなたと宮袋くんのお陰でもある……」


「私は自分のためよ。あのバカは戦いが好きで戦うためにやってる。このチームがチームとして来れたのは賀茂や、藤ちゃん、葉、真堂のおかげよ。もちろん、あんたも。でも、私は――」


 朝子は空を見上げた。その日差しを見ると、まだ夏のようにも思える。


「ううん、なんでもない。前にも言ったけど、今日まではあんたの味方でいてあげるわ」


「これからもずっと味方で居なさいよ!」


 由美子の言葉に朝子は目を丸くした。


「なによそれ! この前もそうだけど、別に今日までじゃなくてもいいでしょう!? ここまでずっとやってきているんだから! 学校が違うっていうのは、少しネックだし、学戦とかではいがみ合うかもしれない。正直、性格は合わないけど、それでも……それでも、ずっと友達では居られるでしょう!?」


 朝子は何故かその言葉が単純に嬉しかった。葉は朝子の性格を知っているため、言葉にせずとも行動で好意を示すことが多い。だが、由美子は違う。自分が心を許せる相手にははっきりとものを言うタイプだ。


「やっぱり、お姫様よね……」


「ちょっと!」


「でも……ありがとう」


 由美子はその返事に喜んでいたが、朝子の顔は自嘲していた。


「仕掛けるタイミングはいつでもいいの? お、ひ、め、さ、ま?」


「いいわけ無いでしょう! 私が言うわ」


「なら、よろしくね」


 朝子はすぐに真へ向かい、姿を表して対峙した。真は一瞥するだけで、視線は由美子に向けていた。その行為自体でも腹ただしいが、すぐに自分の言葉を思い出し、それが当たり前かと落ち着く。


「余裕みたいだけど、私を無視していいわけ?」


 それでも真は朝子の方を向かず、答えた。


「君には僕を倒せない」


「そう。なら、私でも倒せるって証明してあげる!」


「君は嘘を付くのが下手みたいだね」


 朝子はその言葉に怒りを覚え、鉄鞭を捨て、警棒に呪力を集中する。


「さあ、ここで氷見選手が武選手に真っ向からぶつかっていくつもりだ! おっとここで神宮選手が弓を引き始めた! だが、矢は持っていない!」


 富沢の声は観戦会場に響き渡る。

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