第十話 チーム武帝の猛攻
観戦会場では忠陽たちの動きを見て、富沢は声を上げる。
「おっと! チーム五芒星は二手に分かれました。正面で二対三では中々厳しいぞ!」
「確かにな。ここに来て、氷見が完全に遊兵になってしまう。となると、作戦か?」
総将は動きを考えていた。
「あー。こりゃ、完全に跳ぶなー」
「トブ?」
八雲の言葉に富沢は反応する。
「たぶん、今の地点から氷見を連れて、遠山のところまで一気に移動するだよ。だけど、おれのゆみちゃんはそんな作戦は考えないだろう」
「では、誰が考えたでしょうか?」
「まずは、宮袋じゃない。あいつはそんな考えができない」
「とすると、賀茂か? それはらしくないな……」
総将も考えていた。
「消去法で氷見になるよな……」
八雲の中で疑問が残っていた。なぜ、今、その作戦を取るのか。
「総将、俺とお前がゆみと氷見だとして、ここで俺が跳ぶメリットはなんだ?」
「何故、俺に聞く?」
総将は真面目な顔をしている八雲を見て、ため息を吐き、サブモニターのマップ操作の端末を使って、口を開いた
「もし、お前と俺だとしても、この位置から跳んだとすると、遠山を完全に奇襲することはできる。恐らくは遠山はそれで落ちるだろう。だが、俺達ではやる意味はない。そもそも、天野川流への対策は大体できるからな。真正面から戦ってもいい」
「だよな……」
八雲は頷く。それを見て、総将は呆れていた。
「では、神宮選手、氷見選手の場合、どうでしょうか? 現状、武選手を相手にできる人は居ないように思えますが……」
「賀茂が居る。だが、賀茂の戦力では少しの足止めが精一杯というところだ。だから、二対三が愚策に思えてくる。氷見がいれば、さらなる対処法を生み出すことが可能だ。俺達の中では氷見が動くことはないと思っているんだ。作戦の発想としては悪くない。相手チームの一番の稼ぎ頭を倒すことは問題ない。だが、それは八雲妹が一人で奇襲をかければいい。その方が戦線を維持しやすいからな。そうしないわけは――」
「どうやら、ゆみとあの三人の中で何かあったな?」
「この場での不協和音、チームとしては少し痛い状態ですね」
「そうか? 戦場では自分の勘を信じろっていうだろう?」
「そのお陰で、尻拭いする羽目になるんだがな!」
総将は八雲を睨んでいた。八雲はその顔を見ず、苦笑いしていた。
「そう言っている間にもチーム武帝の三人が仕掛けてきました!」
浩平は忠陽たちに駆け寄りながら真と近藤に指示を送る。
「フォワードは俺と近藤、真はフォローだ」
近藤、真は頷く。
「氷見の不意打ちに気をつけろ。遠山、俺達が神宮と接敵したら頼むぞ」
「分かってる」
遠山のスコープは神宮由美子を捉えていた。
浩平は大地と数メートル前で止まり、腰を捻り、拳を地面に近くまで下げていた。その大きく振りかぶるモーションは隙だらけのように思え、大地は牽制のために炎を放つ。浩平はその炎を微動にせず、受けきり、自身の力が溜め終わると一気に開放し、地面を蹴る。それを見た忠陽は危険を感じ、大地に前に呪符を数枚投げ、土の壁を作り出す。
「ぬんッッッ!」
浩平が放った一撃は弾丸のような速さであり、大地との間合いを一気に詰める。間にあった土壁を簡単に壊し、防御態勢を取る大地を捉える。
「フルメタル・バレッド!!」
大地は両手でその攻撃を受けるも、体全体に振動と衝撃が走る。足で踏ん張るのもやっとで、体を忠陽の近くまで吹き飛ばされしまった。
「出た!! 松前選手のフルメタル・バレッド! もっと溜め作れば、その一撃は黄倉選手の鋼気功の体さえ破壊する一撃だぁぁぁ!」
観戦会場で富沢が吠えていた。
「大地くん!」
大地は両手を振っていた。
「やべーな、あれ。ボンの土壁がなきゃ、呪防壁は発動していたぜ。ありゃ、松島さんの本気パンチぐらいスゲー」
大地は楽しそうに言った。
「次、来るよ!」
「分かってるって! 離れろ、ボン! てめえごと焼くぜ!」
大地は自らに溢れ出てくる闘志のように炎を一気に巻き起こす。その炎を大地は前方に広がらせ、浩平たちを襲う。浩平たちは二手に別れ、建物に飛び乗り、そのまま由美子の元へと走り出す。
「あいつら!」
忠陽はすぐさま建物を飛び乗り、真を狙う。呪符を取り出し、鳥を五体呼び出し、真に纏わりつかせる。
真は焦ることもなく、その鳥に対処する。
「天野川流、初伝。旋風連脚!」
真は二度の攻撃でその鳥たちを打ち払う。追撃とばかりに忠陽が放った風の刃も気づいており、冷静に対処していた。
「天野川流、奥伝。巽為風」
真が動くことによって周りに穏やかな風が流れ始め、忠陽の風の刃を取り込む。真が風の流れを変えるか如く、手で払い、忠陽の方へ返すと、さっきの風の刃よりも大きなものが忠陽へと向かっていく。忠陽は呪符を瞬時に投げ、その場から逃げ出す。呪符からは土の壁が出るも、豆腐のように切れ、忠陽が居た建物をぶつかると乱流のように吹き起こり、建物を粉々に破壊した。
「な、何だ! 今の技は!!! 賀茂選手の呪術を取り込み、それ以上の風を放ったように見えたぞ!」
観戦会場では富沢と同じ声が湧き上がった。
忠陽は隣の残骸を見て、変な汗が出る感覚に襲われる。息は荒れ、そして胸の高鳴りが収まらない。
「賀茂くん。次はどんな術を使うんだい?」
真の挑発に忠陽は息を呑む。震える手を誤魔化しながら、呪符を自分の顔まで近づける。
大地は二人に囲まれながらも、炎を全身に覆い、同時攻撃をさせないように牽制していた。大地は必ず正面に浩平を捉えながら、近藤にも気を配る。
先に動くのは近藤だった。大地の背後に回りつつ、大地に近づいてきた。大地はそれを炎で振り払うと、次は浩平が前へと出てきていた。
「宮袋、お前を足止めするのは俺達の方だ!」
大地はさっきのフルメタル・バレットを警戒し、近づかせないように炎を一度薙ぎ払った後にもう一度薙ぎ払って、十字攻撃をした。
浩平は足を止め、その場で闘気を帯びた拳を何度も放つ。拳が放たれる度に闘気が拳から離れ、気弾となっていった。
「八九式バレット!!!」
絶え間ない気弾は大地が放った炎の十字を消しながら押し返す。炎がすべて闘気によってかき消された時、大地に闘気の散弾が降り注ぐ。その一撃を、炎を纏いながら防御態勢を取り、受けた。炎はみるみる剥がされていくが、闘気の散弾の威力はこのまま凌げないというわけではなかった。
「その選択が間違えだ!」
浩平の張り上げた声を聞いた後、近藤の気配を背後から感じる。
「洒落臭えんだよ!」
大地は炎を再度周りにばら撒くと、近藤は足を止め、収まるのを待った。
「なら、意地の張り合いだ。俺の八九式バレットを受けきってみせろぉぉ!」
浩平は再び闘気を帯びた拳を何度も放つ。その勢いは先程とは比べようもない。気合の声とともに浩平の手数はどんどん増えていく。
「どうしたぁぁぁ! 宮袋ぉぉぉぉ!!!」
炎を生み出そうとしても、その速さより、闘気の散弾が降り注ぎ、炎の衣を剥いでいく。大地は歯を食いしばりながらも懸命に耐えていた。だが、その衣は正面の浩平に集中するようになり、背後の近藤から見ると、一部、大地に触れられる場所が見えていた。近藤は走り出し、その炎がない部分に触れた。
「悪いな、大地。大人しくしてろ」
その瞬間、大地は体の力が抜ける感覚に襲われた。近藤が離れると大地は無意識のままに膝をつく。
「一回目は貰ったぞ!」
浩平は腰を捻り、大きく振りかぶっていた。そのモーションをみて、大地は言葉が出ないのに、全神経に叫びながら動けと伝達する。その焦りは今までに味わったことがないほどであり、額に汗が出ていた。
「フルメタル・バレット!」
屋根の木材はバキッと音を立てて、折れた。その反動力とともに浩平の拳が勢いよく、大地へと襲いかかる。
大地の願いも虚しく、浩平の拳は大地の呪防壁に触れる。その衝撃波は激しく、呪防壁にヒビを入れながら、大地を吹き飛ばしていた。
「大地くん!」
その音に気づいた忠陽は急いで救出に向かおうとするも、真がその隙を見逃さなかった。
「天野川流、極伝」
真は忠陽との距離を一気に詰め、両手は流れるように忠陽の体の近くに移動し、両手を揃えると電撃の波が広がる。
「雷掌撃!」
一瞬の出来事で忠陽は防御が間に合わず、そして呪防壁が発動する前に電撃の波を喰らい、意識が飛びそうになった。
呪防壁は遅れて発動し、観戦会場では悲痛な声が上がる。
「賀茂くん!」
「陽様!」
「賀茂!」
チーム五芒星の作戦室で同時に声を上げる藤、鞘夏、葉。
忠陽は呪防壁の中で自らの呼吸を頼りに意識を保っていた。
真は浩平と近藤を見ると、浩平と近藤は頷き、忠陽たちを無視し、由美子の元へと走り出す。
それを見た朝子は再度、由美子に手を差し出していた。
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