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呪賦ナイル YA  作者: 城山古城


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第九話 必殺技 其の四

「良子さんは火を纏った拳を必殺技にしろって言ってたけど、お前はどうしたいとか無いのか?」


 八雲の問に大地は考える。直ぐに浮かんだのは暗闇の中で無色透明に光る炎と刀を振り下ろしたあとに爆裂した閃光だった。


「なあ……。一度、八雲さんに話したことがあるけど、八雲さんの従兄弟の……」


「神無か?」


 その名前を聞いて、奏も樹も八雲を見た。


 八雲の顔は普段どおりだった。


「そう。そいつが使ってた、炎を纏って突撃して、切ったら爆発するやつ。それが使いてえ」


 八雲は奏を見る。


「なによ……」


 奏は戸惑った顔をしていた。


「いや、その技、俺は知らねえんだ。お前、知ってるかなって……」


「知るわけないでしょ、バカ!」


「樹は?」


「なんで、あたしなんだよ?」


「そうだよな……。伏見は多分、外だし……。おい、樹。総将呼んでこい」


「はぁ? 自分で行けよ」


 樹は八雲に悪態をつく。八雲は肩を落としながら、歩いて行くこうとすると、大地が呼び止めた。


「いや、おんなじ技を使いたいわけじゃないし、てか、そもそもあいつみたいな炎を作り出せないっていうか……」


 奏と樹は弱気な大地に見て、不思議に思った。


「それじゃあ、意味が分かんない! もっと具体的に!」


 語尾は強かったが、奏の言葉に優しさが見えた。


「いや、俺にも分かんねえけど、炎が無色透明だったんだよ」


「無色透明?」


 樹が顔をしかめる。


「そんでもって、グラサン先生の術を吸収していた化物がその炎で焼けてたんだよ」


 樹は興味深く聞いていた。


「八雲、お前は知らないのかよ」


「知らねえよ」


「ったく、使えねぇな。ゆんにでも聞いてみるか……」


「なんでゆんに聞くんだよ」


 八雲は苦虫を噛み潰した顔になる。


「ゆんだったら、お前より知ってるかもだろ?」


「知ってるわけないでじゃない。だいたい、暁一族が他人に技なんて教えるわけない」


 奏の言葉で樹は携帯を取るの止めた。


「じゃあ、どうすんだよ?」


 奏は頭を悩ます。


「いや、別にそんな真剣に考えなくても……」


「黙ってなさい。今、考えてるんだから……」


「いや、だからさ、俺が考えたのは炎を纏って、最後にフィニッシュブローみたいな、かっちょ――」


「なによー。そうなら、そう言いなさいよ!」


 奏の遮った言葉に大地は口を止める。


「だったら、簡単じゃない。炎を纏って、殴ったら爆発すればいいんでしょ?」


「え? まあ、そうだけど……」


 奏は直ぐに炎を発生させ、体に纏った。


 大地はそれを見て、自尊心が削られる思いをした。


「それで、壁を殴って爆発すればいいんでしょ?」


 奏は壁に向かい、拳を突きつける。壁と拳がぶつかった瞬間に壁は爆発し、破片を撒き散らす。爆心地は黒ずみ、壁のコンクリートが砕け散っていた。


 大地のしかめっ面を見て、樹は笑う。


 奏は炎を纏うのを止め、振り向く。


「あんたが言ってたのはこんな感じ?」


 大地は無言で頷く。


 八雲は大地の肩に手を乗せる。


「まあ、そんな怒んなよ。あいつは大抵のことはできるんだよ」


 大地はさらに口を尖らせた。


「奏、教えられそうか?」


「まあ、大体はね。後はそいつ次第だけど……。これ、炎を纏って意味あんの?」


 奏は大地に聞いていた。


「その方がかっこいいだろ!」


「はあ?」


 大地の答えに樹は腹を抱えて笑いだした。


「いやだから、炎を纏った方がかっこいいだろ!」


「いや、聞き返したつもりはないんだけど……」


「俺もカッコイイと思うぜ」


 八雲の後押しで大地は自慢げな顔になる。


「ガキじゃない……」


 奏は小声で呟く。


「奏、そんな呆れんなよ。こいつらが言う理由もわからない訳じゃない」


 樹の言葉に奏はため息をつく。


「じゃあ、奏。なんで駄目なんだよ?」


 八雲は難癖をつけるように奏を煽る。それに大地も同調し、煽る。


「一つは魔力の総量の問題。二つ目は防御力が向上するわけじゃない。三つ目は派手さの割には威力がない」


「威力はお前の問題だろ?」


 奏は舌打ちをし、静かに蔑んだ顔をした。


「調子に乗りました。すいません」


 平謝りする八雲を見て、大地は情けなく思った。


「なあ、奏。魔力を圧縮して熱量を増やすってのはどうだ? そうすれば少ない魔力で今以上に火力が上がらねえか?」


 樹の提案に奏は考えたが、すぐにダメと言った。


「私ならできるけど、コイツにはムリ」


 奏は大地を指差す。


「なんでだよ! やってみないと分かんないじゃねぇか!」


 大地は意気込んでいた。


「圧縮する技術自体、高等レベルなのよ。午前中の樹の砲撃の威力見たでしょ? あそこまで威力を高めるために樹は魔動機を使って、マナの圧縮してるの」


「まあまあ、そう言うなよ。教えてみて、判断しようぜっ」


 樹はニコニコと笑み浮かべて、奏の型に手を置く。すぐに奏はその手を退けた。


「誰が教えるのよっ!」


 八雲と樹は奏を指差す。奏はため息をつく。


「一つ目の問題は解決と」


「解決してないぃ!」


 奏は八雲に抗議する。


「二つ目は火力が上がれば防御力が上がるんじゃないか?」


「馬鹿言わないでよ。炎の威力が上がっても金属を完全に溶かす力はないわよ。対人戦では防御力は上がると思うけど……」


「確かにな……」


「あんた、自分でそういう術を持ってるでしょうが! 気づきなさいよ」


 奏は呆れ返っていた。


「八雲さんも炎を纏えんのか?」


「ちげーよ。俺の場合は雷と風だ。その属性を体に帯びて、身体能力の大幅に向上させることができる」


 大地は納得した。


「俺の場合、迅雷と紫電の二つだな」


「紫電って、午前中に姫が使ってたあの技か?」


「まあ、それの変化したもんだ。迅雷より紫電の方が貫通力……威力が上がるんだよ」


「なんで言い直した」


 奏の言葉を無視して、八雲は話を続ける。


「俺は弓の扱いがからっきしだからな。でも、頭を使って我流でなんとかしてる。どうだ、天才だろ?」


 奏と樹は馬鹿だと言い放つ。


 八雲はチェッと言い放った。


「ならよ、やっぱ威力を上げるために、炎を纏うとき、バカみたいに火力を上げればいいんじゃねぇ?」


 樹の意見に奏は嘆息する。


「だから、そうするにしてもこいつの力量が足りないんじゃない」


「いいんだよ、細けーことは。どうせ、出たとこ勝負だろ? だったら、こいつに合うように後先考えず、最大火力で敵に突っ込ませればいいんだよ」


「それいいな! コイツらしいぜ。それに一発勝負ってのが必殺技みたいでいいじゃねぇか!」


 樹の意見に八雲は賛同する。


「あのね、それじゃあ、身を守る手段じゃないわよ」


「奏、うんなことはどうでもいいだよ。どーせ、コイツに細かい事を言っても無駄だと思うぜ? あたしや八雲と近いんだから」


「八雲と似てることは同意するけど……」


「なんだよ、それ。俺はガキじゃねえぞ」


 奏と樹の二人から八雲はガキだと言い返された。それに不服なのか、いつもよりもムスッとした顔になった。


「ほら、ガキじゃねえか」


「ウッセ!」


「まあ、樹の言うとおり人の話は聞くタイプじゃないだろうし……」


 奏は大地を見た。


「な、なんだよ……」


「もういっその事、バカみたいに炎を出しながら突っ込ませて、最後は炎を手に集中させて、パンチでいいんじゃない?」


 奏の適当な意見に八雲と樹は無言で首を縦に振る。


「ちょっと待てよ。そんなの必殺技じゃねえじゃん」


 大地は奏の適当さに焦り始めた。


「いいから炎を纏いなさいよ」


「いやでもよ……」


 奏の圧力に大地は戸惑う。


「やれって言ってんでしょ」


 大地は他の二人を見るも、奏に同調している。その圧力にも負け、大地は三人から離れ、しぶしぶやることにした。

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