第九話 必殺技 其の三
奏は拳に炎を集めた一撃がどのくらいの威力かを確かめるために大地に壁を殴れと指示した。
大地は言われたとおり、拳に炎を発生させ、壁を殴る。壁は少し溶け、ヒビが入る。
「何点?」
奏の問いに八雲と樹は零点と答えた。
「なんだよ! やらせといてそんな言い方ねえだろ!?」
奏は壁に近づき、大地と同じように拳に炎を発生させ、殴った。
壁は大地が作ったヒビを飲み込み、殴った箇所は半径五十センチぐらい丸くへこむ。その中心は黒ずんでいた。
大地はそれを見て、黙った。
「なあ、一日じゃあ無理じゃねぇか?」
樹は奏に言う。
「そもそも呪力の扱いが下手なのよね、コイツ」
「本来は実践的な呪力の運用を教えないと無理だろう」
奏の言葉に八雲が意見を言う。
「なあ、あんた等の殆どはコレと同じ威力なのか?」
大地の疑問に三人はお互いを見合った。すると、八雲と樹は口角を上げ、壁に向かい、それぞれ壁を殴る。
一番壁をへこませたのは八雲であり、他の二人の殴った跡まで飲み込んでいた。
勝ち誇る八雲に二人は悪態をつく。
「それじゃあ、あんたにはまず留めるってことをしてもらうわ」
「留める?」
奏の言葉に大地は首を傾げる。
「あんたの炎は所謂呪力の垂れ流しなのよ。呪力は輪環してるの」
「ちょっと、待て! リンカンって……ヤバくないか?」
「はぁ?」
奏の顔は訳の分からないことを言うなという顔になっていた。
だが、樹は笑いをこらえていた。
「いや、呪力ってヤベーことしてるんだなって……」
「奏……」
樹が奏を呼び寄せ、耳元で囁く。次第に奏の顔は赤くなり、大地に大声を上げた。
「巫山戯るな!!」
「いや、俺が言ったわけじゃないだろ!?」
「私が言ってるのは廻るって意味よ! このエロガキっ!」
「奏……。無駄に反応すんな」
八雲に注意され、奏は咳払いをして、もとの調子に戻した。
「じゅ、呪力は自然の中で廻ってるのよ。私達、人間や動物や植物にもあって、取り込んだり、放出したりしてるの」
大地は頭を抱える。
「よく分かんねえよ。そもそも、人間が呪力を取り込んだりしてんのって、ヤバくないか?」
「別にヤバくはないわよ。学説ではマナっていう存在なんだけど……。あんた、呪術研究都市の学生でしょう? なんでそんなことも知らないのよ」
「うんな、かったりぃー授業なんざ聞いてねえよ」
「はあ!?」
奏の圧力に大地は苦笑いをしながら、後退る。
「そう怒んなよ……。月影の姉ちゃんには迷惑かかってねえだろ?」
「掛かってるわよ! アンタが基礎的な事を覚えてないせいで無駄な時間を使ってるのよ!」
大地は苦笑いしながら、さらに後退する。こう見ると、奏が幼馴染の典子と同じように見えてしまう。口答えすると、更に輪をかけて起こる。だから、大地は苦笑いしながら誤魔化した。
奏は大きなため息をつく。
「これだったら、賀茂の方が全然良いし、見てて面白いわよ!」
「なんだよ! なんで、ボンが出てくるんだよ!」
大地は不意に大声を上げてしまった。
「奏……」
八雲に叱責を受け、奏は鼻を鳴らす。
「宮袋、まずは基礎からだ。それが出来なきゃ話なんねぇ。いいか、必殺技ってのは二つに一つと思っとけ。一点集中の攻撃か、圧倒的な総量の攻撃かだ。その二つとも重要なのは、いかに呪力を扱うだ」
大地は八雲の話を不貞腐れながら聞いていた。
「俺は、賀茂のよりもお前を買っている。単純にお前の戦いの方が気持ちいいからな」
大地の耳が少し動く。
「だが、今のままじゃあ賀茂に置いてかれる気がするな〜」
八雲はわざとらしく言った。
「負けるわけ無いだろ!」
「だったら、奏の言うことぐらい聞けるよな? 昨日の奏の話だと、アイツはもう新しい技を覚えたらしい。このまま行けば、厄介な技になるらしいぞ」
大地は気になるようで、八雲と奏を交互に見ていた。
樹はその意地っ張りな性格を見て、笑っていた。
「あー、この話は止めにしよう。賀茂に悪いからな……。でも、その凄さをもう一度聞きたいな。奏……もう一度教えてくれないか?」
「はあ?」
奏は八雲を蔑んだ目で見た。そもそも、そんな話をしたことなかった。
「あたしも聞きたいな。奏、どんな技なんだ?」
「樹、あんたまで何言ってるの?」
奏は樹に警戒した。
「待ってよ。……やらねぇとは言ってねぇだろう?」
八雲と樹はニヤつく。
「なら、奏の言うことは絶対だ。できるできないじゃなくて、奏が言ったことはすべてやれよ」
「わかってるって……」
大地はバツが悪そうな顔をしていた。
奏はその意図に気づき、笑みを浮かべた。
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