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呪賦ナイル YA  作者: 城山古城


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第九話 愛心優香 其の一 

 夜になり、部隊全体が今日の課業は終わり、静まりかえっていた。


 忠陽は夏休みの宿題を終わらせようと備え付けの机に向かって解いていた。


 大地は二段ベットの下で携帯を弄りっていた。


「なぁ、ボン。今日のサイボーグ司令官の話の中で、必殺技を身につけろって言ってたじゃねぇか? お前、どうすんだ?」


「え? 僕はまだそんなレベルじゃないよ」


 忠陽は目の前の宿題に集中していて、上の空だった。


「俺はどんな必殺技が似うかな?」


「ん〜、分かんないよ」


「炎の剣、魔炎瞬獄剣とか、かっこよくないか?」


「そうだね……」


「だけどよ、俺は拳で語る奴だろう? やっぱり魔炎瞬獄拳の方が似合ってるよな!」


「うーん、そうだね……」


 大地は忠陽の様子がおかしいことに気づき、体起こして見ると、忠陽は宿題に集中していた。


 大地はベットから出て、忠陽の元に近づき、後ろから首に手を回し、締め上げた。


「だ、だい、ち、くん……」


「コノヤロウ! 人がせっかく相談してるのによ、無視しやがって!」


 忠陽は大地の手を叩くも大地は容易に外そうとしなかった。


 そのとき、ドアがノックされ、開いた。


「入るわよ」


 入ってきたのは奏だった。奏は二人の光景を見るなり、不快な顔になっていた。


「あんたたち、何やってるの……」


「ちょっ、おま、何に入ってんだよ!」


 大地は慌てて、忠陽から手を離した。


 忠陽は解放され、呼吸を落ち着かせた。


「ノックしたわよ」


「いや、でもよ」


「入るわよとも言ったわよ。お前は女子高生かっ!」


「男にもな、プライバシーってものがあんだよ……」


 奏は弄るそうな笑みを浮かべた。


「へー、何よ? プライバシーって?」


「別にいいだろう!? なんだって!」


 大地は顔を赤くする。


「やっぱり、あんたガキね」


「何だと!」


 奏は大地の怒りを無視して、忠陽に話しかけた。


「賀茂、来なさい」


 忠陽は突然のことに何がなんだか分からなかった。


「な、なんで、ボンだけ何だよ?」


 奏は大地を見ると恥ずかしそうにしていた。


「そうね。あなたより賀茂の方が好みだから?」


 大地は言葉が出ないのか、口をパクパクさせていた。


「賀茂、早くしなさい。消灯まで戻れなくなるから」


 忠陽は立ち上がり、奏もとへ歩いた。


 二人は部屋から出ると、廊下を歩き始めた。


 周りが静まりかえっているせいか、忠陽は自分の心臓の音がよく聞こえる。


「あ、あの……どこに行くんですか?」


「決まってるでしょう? 母さんのところよ。夕方、母さんに電話したら、夜に連れてこいって」


「そうですか」


 奏は足を止め、振り返り、忠陽を睨みつける。


「あんた、さっきのこと、本気にしてんの?」


「え、なんのことですか?」


 奏はため息をつくと、また歩き出した。


 ひと目がつかない薄暗い場所に行くと、そこには扉があった。


 奏は懐から鍵を取り出し、扉の錠穴に入れ、解錠する。


 解錠するときカチンと鳴った音に忠陽はなぜか鳥肌がたった。


 奏が扉を奥に押して開けるとゆっくりと開く。


 忠陽に見えるの青色に光る空間だった。


「さ、入って」


 奏は手で指し示す。


 忠陽は息を呑み、歩き出し、入る瞬間に目を瞑った。体ごとすべて入り、閉じた目に光が差し込むのを感じるとベルが鳴るのを聞いた。


「なに、突っ立ってんのよ。奥に行きなさい」


 奏の声で、忠陽は目を開ける。


 見えた景色は昨日訪れたお店、デ・バイスだった。


 佇まいは何も変わらない。椅子の位置も、そして、店から見える景色も。


 忠陽は異空間に入り込んだとばかり思っていたが、どうやらここはそうではないことに気づく。


「ほら……」


 奏に背中を押されて、ようやく歩き出した忠陽は物珍しそうに辺りを見回す。


「いらっしゃい」


 挨拶してくれたのは間違いなくこの店の店主である静流だった。


「こ、こんばんは……」


 静流は忠陽が戸惑っていることに気づく。


「奏、入る前にちゃんと話したんか?」


「えっ? 何を?」


 奏は焦り始める。


「その様子やと話しておらんようやな」


「言ったわよ! 母さんが賀茂を連れてきていいって」


「そんなことやない。忠陽くんは狐に馬鹿されたような顔をしてる。鍵のこと話したんか?」


 奏は気づき、苦い顔をした。


 静流はため息をつく


「あんたのそういうとこ、お父さんに似たんやろうね」


「うるさい……」


「賀茂くん、今片付けをしてるさかい、カウンターの席に座っててくれへんか?」


 忠陽は頷いて、カウンターの席に向かう。


「奏、手伝い。あんたは机をふいて」


「え〜」


「そんな不貞腐れんと、はよ、やりいな」


 奏はぶつくさ言いながらも布巾を取って、机を吹き始めた。


 静流はコップを片付けながら話し始


「まず、鍵について話とかんとあかんね。庁舎から一瞬でここに来れたから化かされてると思うたやろ?」


 忠陽は頷く。


「あれは空間移動の一種でな、どんな扉からでもこの店に行き来できる空間移動できる鍵を作ったんや。まあ、空間移動言うたら、神宮の十八番やけどね。扉に鍵を挿すと、扉はこの店と空間を繋げ、固定させる。固定した空間はその扉から入ってきた人間が出るまで繋がったままや。せやけど、あの鍵で入ってきた人間はあの扉以外の出口から外へと出ることは出来へん。そういう風にうちが結界を作ったんや」


 忠陽はその内容を聞いて、完全に把握はできないにしても、術のレベルの高さが分かる。


「質問、してもいいですか?」


「ええよ」


「こんな大規模な結界術をどうやって維持してるんですか?」


「そんなであらへんで。結界を張るにはこの店のサイズでええし、結界の内容は相手を扉以外から出れないだけや。それに空間を繫げる呪力はうちやのうて、鍵を使った本人」


「でも、僕にはできないですよ」


「できへんほうがうちも嬉しいわ。お客さんが取られんで済むさかい」


 静流は笑っていた。その笑みは何を考えているのか分からない。


「麻美は元気にしてる?」


「母を知ってるんですか?」


「中学時代、同じ学校やった。あの怪獣も一緒やったけどな」


 怪獣と言われて、忠陽が思い浮かべたの由美子のは母親だった。


「うちはそれから赤井高校に進学したさかい、それっきりやけど」


「中学時代の母は……どんな人だったですか?」


「芯の強い女性やったわ。我慢強くて、それに頑固やった……」


 静流は楽しそうに話していることに奏は気づいた。


「麻美を一度怒らせたら、うちでも手がつけられへん。ご機嫌を取るには中々苦労したわ」


 忠陽はここに来るまでの母と由美子の母親とのやり取りを思い出す。


「それにうちと寿子の間によう入ってきた。喧嘩をする理由は色々とあるけど、麻美がおったら上手く回ってた」


 そう言い終わると静流は茶葉を取り、お茶を作りだした。


「風の噂では賀茂家に嫁いだことは聞いてた。正直、うちはあんまりお祝いする気にはなれへんかった」


 忠陽は思わず疑問符を発してしまった。


「あんたの前で悪いけど、うちはあんたの祖父には良い印象があらへんかった。麻美の幸せを考えれば別のとこにせいって思うてん」


 忠陽は俯いた。


「僕も祖父は嫌いでした」


 静流は笑う。


「でも、あんたを見て、少し安心した。麻美は幸せではあるんやろなって」


「そう言ってもらえると母も喜びます」


「麻美に言ってもらへんか? 暇があるんなら、電話しいやって」


「はい。必ず! 電話番号は……」


 静流は店の名刺を渡す。


 忠陽は黙礼をする。


「さて、お茶もできたさかい、奥の部屋に移ろうか」


「えっ、ちょ! 母さん!」


 奏は戸惑っていた。


「奏、あんたはここにいなさい」


 奏は渋々従っていた。

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