第九話 個人鍛錬 其の四
辺りは静まり返ったなか、手を繋いでいる忠陽と奏がいた。
その光景は男女がただお互いの手を繋いで睨み合っているように見える。今は忠陽の攻撃の番であり、静かに握りしめた手を見ていた。
その静寂の中、忠陽が声を出す。
「あの、お願いがあるんですけど……」
「なによ?」
奏は怪訝な顔をする。
「月影さんのお母さんに、もう一度、会わせてください……」
忠陽が奏の顔を見ると、顔は歪み、怒りと嫌悪に近い顔をしていた。
すぐに忠陽の手に力が込められ、痛みが走り、忠陽は叫び声を上げる。
「どういうつもり?」
「痛いです!」
「母さんに何の用なのよ!」
「イタイイタイ、痛いですって!」
忠陽は手を解き、奏から離れたが、奏は忠陽の胸ぐらを掴む。
「呪詛を流し込むにはいい冗談よね。何が目的よ!?」
「お、落ち着いてください! 僕はただ、自分のことで話をしたいだけで」
「自分のこと? 何よ、それ?」
「ちゃんと話しますから、まずは落ち着いてこの手を離してください」
奏は忠陽の目を見るも嘘をついていない様子だった。仕方なく、奏は手を離した。
「さ、話しなさい」
忠陽はひと呼吸ついて、呪いによる自分が二重人格であること、昨日は伏見の紹介で自分の呪いについて見てもらったことを話した。
「で、なんで私に頼むのよ? 普通、辰巳さんに頼まない?」
「いや……その……」
「なんか訳ありって感じね。なんか、気に入らない……」
「すいません……」
「呪いについて聞きたいの?」
「はい」
「呪いは真堂も関係してるんでしょう? どうして一緒に連れて行かないの?」
「それは……」
「なに、そっちも訳ありなわけ!?」
忠陽は黙っていた。
「呆れた。それじゃあ、私が母さんになんて言えばいいのよ!」
「すいません……」
「謝ってないで理由を教えなさいよ」
奏は困った顔をしていた。
忠陽は俯いた。
「……六道絢がこの前、家に訪ねてきました。僕と鞘夏さんを内弟子にしたいと。僕らの呪いに興味があるって。僕は返答はしませんでしたが……」
「あなたの中で迷いがあるのね……。分かったわ。母さんに話してみる」
忠陽は顔を上げる。
「な、何よ!」
「いや、断られると思っていたんで……」
「あ、あのね! 私だって人間なんだから理由があれば聞くわよ!」
「有難うございます!」
忠陽は奏の手を両手で握った。
突然のことで奏は防衛本能が高まり、忠陽に呪詛を流してしまった。
忠陽はその呪詛を無防備に受けてしまい、気持ち悪くなり、そのままなし崩しに倒れてしまう。
「ご、ごめん……」
忠陽は返事ができなかった。
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