31話 樹海と黒鉄の兵器
美しい樹海。
空からの暖かな木漏れ日。
淀み無い澄んだ空気。
柔らかな緑の木々。
流れる聖水の川の粼と、微かに聴こえる瀧の音。
そして偶に、爆音。
『おーっとクインテット大暴れ!!なんとも楽しそうに騎士たちを蹂躙していく!!開始3分で16人が餌食と成りました!!』
『まああのクインテットですからね。下手な上位龍より強いかもしれません。』
遠く南東の方で爆音が響く。あれは恐らく水、雷、炎を融合させたブレスだろう。
出くわさない様にしなくちゃ。
直後、背後から風の刃が飛んでくる。
躱す。
「あ?絶対獲ったと思ったんだがなあ。」
解析する。まあ一般兵。新人騎士って感じ。
「なんだ雑魚か。」
「あ゛?殺……
「殺す?生首だけでどうやって?」
『脱落者一人!!これは普通に人間に殺られた模様!思っていたより試合展開が早いですね!』
ピコンと音が鳴り、頭の上に+1という数字が現れる。
『あ、いい忘れてましたが、参加者を倒すとポイントが入ります!ポイント0は開始10分後に強制脱落と成るのでご注意を。ポイントが高ければ高い程……どうなるのかは秘密です!』
めっちゃ重要事項じゃん。芋戦法で行けば良くねとか思ってたわ危な。
ポイントが高いとどうなるんだ……
『因みにクインテットを倒すと70+クインテットが得た点数点貰えますよ!チャレンジャーは居るのか?』
流石にキツイだろ。
まあ、ポイント稼いで見るか。流石にポイント稼いだら不利になるなんてことは無いだろうし。
お、騎士二人が戦ってる。
二人とも同レベル。さっきの雑魚よりは強いけど、まあ勝てるか。
あ、決着した。
漁夫の利っと。
「あってめっ………
ポイントが+3になった。他人が得たポイントも貰えるようだ。
ん?正々堂々?何それ美味しいの?
勝ちゃいいんだよ勝ちゃ。←悪い顔
『現在トップはエリリア選手!卑怯な戦法でポイントを掠め盗る!!』
あ、中継されてるんだった。卑怯とは心外な。手間を省いたと言ってほしい。
カチッ。
ん?
足元を見ると、まんま地雷。
爆発。
する前に退けぞる。
「ギリギリで足引っ込めたか。反射神経人外だな。」
なんだこいつ。
少年?ドワーフ種か。
スチームパンク風のオーバーオールにゴーグル。白髪黒目。
「自己紹介しよう。俺様は天才武器職人にして発明家。ヴィンドランド=クロムウェルだ!」
名前、貴族の名前過ぎる。似合わな。
いやそれより地雷!まんま第二次世界大戦兵器の地雷じゃん!え?転生者?
「俺様の渾身の発明品を躱すとは、中々やるようだ。」
解析。転生者じゃ……無い!!じゃあコイツ自分でこの悪魔の兵器を開発したの?天才すぎない?
「岩属性魔法《錬成》」
足元に魔法陣。土の中からサブマシンガンが登場。そして私に発射。
「オーバーテクノロジー過ぎる!!」
「《収納》」
弾幕を躱していると、彼は異空間からとんでもない物を取り出した。
黒光りする、重厚な大筒。
ゲームで見覚えある。
「ロケラン!?」
「? なんだそれは。コイツは俺が開発した自信作、魔力爆弾遠距離発射兵器。その名も『ダークネスヘルブレイク』だ!!」
ネーミング!!中二!!
ミサイルを発射。キツイなこれは。
「《死屍累々》」
アンデット大量召喚。
腐った肉や骨の肉壁の後ろで、魔法を準備。
「兵器っていうのはこういうのを言うんだよ!」
一瞬だけ、《殲滅祭》
「レールガン✕7」
「………なんだそれ。」
◆◇◆◇
『おーっとここでオッズ2位が脱落!』
『彼は優勝候補の一人でしたが、やはり姫様には勝てませんでしたか。』
『知らない人も居るかもしれないので言っときますね。エリリア・グリーン選手は文字通りこの国の王女にして、今年の入団試験首席合格。魔法の腕も武の腕も常軌を逸している天才児です。いくらあの親に育てられた上に固有属性の〈死滅〉を持っているにしても、あの強さはかなり異常ですね。
そんでもって今殺られたのは元鍛冶師兼発明家。原理不明の謎の兵器を操る天才少年。
ヴィンドランド=クロムウェル選手です。
彼の兵器はかなり高威力ですが、絶対に誰にも売らない、教えないで有名です。
本人が言うには創造神様に口止めされたとか。発展しすぎた文明は創造神の名に於いて処されるという神話はよくありますが、彼の兵器もそれなのでしょうか。』
『まあ彼に関しては敗者復活戦に期待しましょう。』
『現在トップはエリリア選手……ではなくいつの間にか逆転しているユウスケ選手!元冒険者、鬼神の一番弟子、陽影のユウスケだ!』
『ああ。史上最速Sランク冒険者で、あらゆる悪魔系に特効の光属性剣技、あらゆる精霊系に特効の闇属性剣技を二刀流で操る、見ていて美しいと迄言われる剣技の使い手ですね。』
『こちらはかなり有名なので知っている人も多いでしょう。』
『おっと、女性陣から黄色い悲鳴が!流石はイケメン!出自不明の謎の男。無双しています!』




