28話 脱出戦 3
現れたのは、デストロイ✕3。
私はボロボロ、もう一歩も歩けない。
ベルフェゴールさんもまだ封印突破できないようだ。
デストロイ達が私に向けて魔術の準備をする。
何もできない。
逃げることも躱すこともできない。
受けることも相殺することもできない。
ハデスも私を抱いた状態で、躱すのは難しいだろう。
放たれる、黒い閃光。
死を覚悟した。
その時、彼は、現れた。
「やっと見つけた!!うわッギリギリじゃん。大丈夫か?エリ。」
その整った顔と、淡い翠の美しいマント。
いつの間にか周囲のデストロイ達は、巨大な金色の時計の針に串刺しになっている。
全く。どうやってここに来たんだろう。来るタイミングが完全に漫画の英雄だ。
私は父上の顔を見て、安心して気を失った。
◆◇◆◇
「ふう。いきなりエリが死んだなんて聞いたから、焦った焦った。」
「何言っとるんやあんた。ちんちくりんは生きとるで。」
「そりゃ、時を戻して助けに来たんだからな。」
「は?」
「色々制限はあるけどそれさえ満たせば大丈夫。さあ。まずコイツ等を殺すか。」
デストロイ達が時計の針ごと取り込んで再生する。
「こいつを倒したのかエリは。強くなったなあ。」
デストロイ達が黒い閃光を30本ほど放つ。
「《空間反転》」
デストロイ達を黒い閃光が30本ほど貫く。
「《空間断絶結界》」
白い半透明の結界が娘と若い男を包み込む。
「《刹那之永遠》」
世界が金色に染まる。
天には巨大な大量の歯車。地には大量の時計、空中に巨大な砂時計。
世界が、停止する。
俺は順番にデストロイの首を落とす。
【番人の突破を確認。再度召喚は不可能です。】
「うおっやっと出れた!!あいつらは!?」
「よお魔王。全く、お前が一緒に行くって言うから安心してたのに、なに捕まっとんだ。」
「うわ過保護王。仕方ないだろ。あの封印お前でも出れるか怪しいぞ。」
「全く、何なんだこの封印結界。高度過ぎる。」
「化け物すぎん?あんた。あの化け物が一瞬て………」
「で、貴様はなんでうちの娘を抱きしめてるんだ?死にたいのか?」
「え?いや抱きしめとるわけや………」
「手を離せ。俺が運ぶ。」
軽く殺気。
「あっはい。さーせん。」
知らないうちにどんどん強くなるなあ。いつか俺、抜かれるかも。
◆◇◆◇
目を覚まして最初に目に入ったのはは知らない天井………ではなくいつもの天井だった。
「あ、姫様。目覚められましたか。不調は無いですか?」
ジャック。助かったようだ。流石父上。ほんとにあの人に勝てる人って何なんだろう。
「魔力カスカスだけど、別に不調は無いよ。」
「そうですか。まあ、陛下が創造神位回復魔法を使っていましたからね。筋肉痛もかすり傷も、体内の病原体まで消滅してるでしょうね。貴方は仮にも王女なのですから、あまり軽率な行動は控えてくださいよ?」
「はい。反省してます。」
「おや?今回は素直ですね。」
「まあ、今回はほぼ自業自得みたいなものだから。というかアス………私の槍は?」
「? 倉庫ですが?」
あ、あの子念話私にしか聞こえないから……
指を鳴らす。
(……まっくらだった。ひどい。さいてー。)
ごめんごめん。指輪になっといて。
(はーい。)
「ほうほう。指輪に変形するのですか。良い品ですね。」
「師匠!大丈夫ですか!?」
リルが部屋に飛び込んできた。
「全然大丈夫。」
「よかった〜。元気そう。」
「今魔法すら使えないからすっごい暇だけどね。」
「あ、じゃあシフォンケーキ作りましょう。早く30個渡さないと今度はあのブレスが私達に放たれますよ。」
「ああそうだった。完全に忘れてた。」
その後は、シフォンケーキを大量に作って死滅龍に渡し、本田からぼったくられつつ買ったゲームでリルとス●ブラしたりした。
その後、
「父上、この度はありがとうございました。」
「いいよいいよ。色ボケ魔王が悪いんだ。」
「いや自業自得ですし………」
「それよりハデスとやらの連絡先、教えて?」
「え?私はいいですけど。その前に許可を取らないと……なんでですか?」
私の問いに、ニコッとイケメンな笑顔で返す。その奥底に闇が見えたのは気のせいだろう。
「それはそうと、そろそろ新人戦だな。出場するの?」
「ええはい一応。」
「優勝者は団長との記念試合があるから、頑張って。」
「はい。」
世界最強とか。勝てる気が全くしないけど、戦ってみたい。
「あと優勝者には二つ名が与えられるよ。」
二つ名!憧れ!うっ!!厨二病の古傷が疼く!!
「隊長になっても二つ名貰えるけどね。」
「確かに隊長達には二つ名ありますね。」
「俺のネーミングセンス中々だろ?」
「ちょっと厨二臭いですけどね。」
「チュウニ?何だそりゃ。」




