25話 名付けと謎の転移魔法陣
人見知りか〜なら仕方ない。
「なんか急に親近感湧いた。かわいい。」
「私のは普通に話してくれますけどね。」
「え。ああそうか。念話は他人に聞こえないか。なんて言ってるの。」
「師匠と繋いで良いですか?………そうですか。師匠。私の手に触れてください。」
「あ、うん。」
手をつなぐ。
(こんにちは。ますたーのおししょうさま。わたしは…まだめいしょうはありませんが、すねあてです。よろしくおねがいします)
幼女の声!!かわいい。そりゃそうか。生まれて一日も経ってないんだもんね。
(おねーちゃんはひとみしりなので、くろうするかもしれませんが、おいしいものあげればしゃべってくれるかもですよ。)
「美味しいものって?」
(まりょくのたかいものであればあるほどいいですね。おおきすぎるとたべきれないかもですが。)
ああ、素材吸収か。手持ちで一番魔力が高いのは……死滅龍の鱗か神格精霊の髪かベルフェゴールさんの爪の欠片か……全部入れても1000cm3足りるな。
(………おいしそう。)
別の声。槍からだ。喋ってくれた!声かわいい。
「これ要る?」
(ちょーだい。)
(おねーちゃん!じぶんのますたーにおねだりしないでください。)
かわいいが過ぎる。至福の空間。
「はいどうぞ。」
(いただきます。)
素材が槍にはめ込まれていた宝石に吸収される。
(おいしー。)
(もう。おねーちゃんは。そのくいしんぼうなおしてくださいね。)
「それで、名前は何が良いですか?」
(そうですね。よびやすいなまえならなんでもいいですよ。)
(わたしはかわいいなまえ。)
「じゃあ「疾風」と「突風」とかは?」
「可愛くないし呼びにくいです。」
「え〜かっこいいじゃん。」
「「うさぎ」と「おおわし」とかはどうですか?」
(なんかおねーちゃんにたべられそうなんですけど。)
(そういえばすねあてはまりょくたかいよね。)
(…たべないでくださいよ?)
(たべきれないよ。)
(たべきれたらたべるんですか?)
(……たべないよ?)
今の間はなに?
「どうせなら名前つけてからくれたら良かったのに。二人共ネーミングセンスないんだから。」
「すねあて……すね……ねあ………ネアちゃん?じゃあやりはリヤちゃん?いやスピアだからアスちゃんとかですかね?」
「ネアちゃんとアスちゃん?安直だけど今までで一番マシかも。」
(「ア」かぶりでなんかしまいっぽいです!いいですね。)
(ん。かわいい。)
最悪この●ばの紅い瞳の里流の名前にしようかと思ったけど。気に入ったならいいか。
……なにさ。あの里流の名前かわいいじゃん。呼びやすいし。
「じゃあネアさん。よろしくお願いします。」
「アスも。よろしくね。」
◆◇◆◇
さて。さっき回収した魔法陣。なんかめっちゃ難しいので、リアとは別れてソラさんのところへ行く。
扉を開けると爆風。デジャヴ。
今度は闇魔法のうで×20で優しく受け止める。
「あ、エリリアクン。聞いてくれよ。ベルちゃんがまた魔眼の設計図を消滅させたんだ。」
「もう諦めたらどうですか?いくらなんでもあの怠惰のベルフェゴールの目を欺くなんて無理ですよ。」
「そうだそうだ!諦めろ!」
こぐまの姿で「ベルちゃん」がさけぶ。
「ぐうう…いや私は諦めない!諦めたらそこで試合終了だよ!」
なんでその言葉知ってんだ?転生者………じゃないよな。偶然?
「それはそうとソラさん。この魔法陣、ダンジョンの隠しボスの部屋で見つけたんですけど…」
岩を取り出す。
「?何を言ってるんだ普通の岩……いや。魔力が少し籠もってる。隠蔽?ありそうだ。エリリアクンの魔眼の効果か?いや多分これは…」
「何いってんだソラ。魔法陣あるじゃん。黒いやつ。高度だ。使用している論理がところどころ古いけど。」
「ええ!?ベルちゃんにも見えるのかい?二人の共通点って何?」
「そりゃ悪魔族ってことだろ。」
「あ。」
「え?」
「あれ?ああ。そういえば人間に偽装してたな。すまんすまん。」
「うっそ偽装!?この私が見抜けないとは不覚だな。」
ええ。ベルフェゴールさんこの偽装見破れるの?私の技術の粋に加え父上の空間断絶で悪魔の気配をほぼ消し、更に神格精霊の力まで借りて完成させたこの偽装を当然の様に!?さすがベルフェゴール様。感服致しました。
「もっと敬って、崇め奉っても良いんだぞ。」
「心読まないでください。」
「そもそも神格精霊如きの力で魔王である俺の目を欺けるわけ無いだろ。他にも隊長クラスだったら気づく奴も居るかもしらんぞ。」
「ねえねえエリリアクン。ボクと契約しないかい?」
「「ベルフェゴールさんがいれば十分でしょ。」」
「え〜。まあいいか。」
◆◇◆◇
この世界の生物は、神を除いて大きく3種類に分別される。
まず、原初の生命にして、永劫の寿命を持つ龍種。
そしてその龍種から派生してうまれたのが、精霊族と悪魔族。
この3種類。
そして人間は精霊族と悪魔族のハーフ。
魔族は悪魔族と人間のハーフ。エルフは人間と精霊族のハーフ。
ダークエルフはエルフと魔族のハーフ。ドラゴニュートは竜種と人間のハーフ。
竜種は龍種の劣化版で、龍の遠い子孫である。竜は龍と違い寿命がある。
他にも半龍半魔や半龍半霊、ドラゴニュートと精霊のハーフであるドワーフやらいる。
ややこしいし、種族はめっちゃいるので割愛。
龍種、悪魔族、精霊族は3大原初と呼ばれ、人間などの生命よりかなり優れていることが多い。
そして龍種の王達が真龍。悪魔族の王達が魔王。精霊族の王達が神格精霊。
ただ神格精霊は魔王や真龍よりは少し力的に劣る。だが、その分めっちゃいるのでバランスは保たれている。
ちなみにこの世界の馬とかうさぎも、魔獣と精霊獣のハーフだったりする。だが魔獣は数十億年前に突然他の生き物を襲うようになり、そのせいか魔獣と同系統の悪魔族も差別対象となっている。まあこの国にはあまりないが。
魔獣が他の生き物を襲う理由は調査中である。
まあ、うちの実父は単に領地を増やしたいだけだろう。あいつはバカだから、殴っても俺魔王だから殴り返されないとか思ってたんだろう。
折角部下が暴走してグリーン王国に突っ込んだお詫びに、わざわざ先代が優秀だった私を生贄にしてまで、辛うじて結んだ不可侵条約を正面から破って攻めてきたんだから、バカ以外の何だというのだろう。
なぜかあいつは先代は私に価値がないから捨てたと思ってたようだが。まああいつは私を邪魔者扱いしてたから、自分の都合のいいように解釈したのだろう。
おっと話がズレた。
悪魔族にしか見えない魔法陣ということは、これは悪魔族にしか使えないということだろう。
わざわざそんなの作る理由としては、
1,悪魔族以外に見られるとまずいものが奥にある。
2,悪魔族が何かを封印している。
3,悪魔族以外が行ったら駄目なところ、例えば魔王城などに繋がっている。
それくらいしか思いつかない。
ただ転移魔法陣は制作時に込められた魔力の質や量で場所が変わるので、完成しかけていたこの魔法陣は行き先不明。そりゃ気になる。
「ふう。完成!」
私と視界共有したソラが手伝ってくれたお陰で完成。まあベルフェゴールさんもついてくるっぽいから、何があっても大丈夫だろう。
「行く必要あるのかよ。」
「気になるじゃん。ゲームでもマップ開放されてないところがあったら突っ込むでしょ?」
「なんの話?」
ソラの反応を見るに、転生者でも転移者でもなさそうか。まあいいや。
なんか少しずつポイントが増えている。嬉しいぜ。




