10話 災厄 一
私は迷っていた。どの隊にするか。
母上がいる隊は、戦闘好きが集まる。面白そうだ。
最強の隊はあのー厳鎚ーのライトに会える。世界最強には会ってみたい。
紅蓮隊は隊員同士の距離が近く、楽しいらしい。
陽光隊は副団長の隊で、日々ひたすらに鍛錬地獄らしいから、あまり惹かれない。
考えながら優雅に紅茶を飲んでいた。その時、
「大魔氾濫発生。大魔氾濫発生。【凱旋門】近隣の皆様は、直ちに避難してください。」
「まじか。」
魔氾濫。【暗黒】の悪魔が何の前触れもなく、突然飛び出してくること。
どんな悪魔がどのくらい出てくるかは全くの不明。周期もバラバラ。一種の災害だ。
その中でも特に危険なものが大魔氾濫。これが発令されたら、騎士団の義務として、現場に向かわなければならない。
騎士団に入ったばかりだというのに、、、
私はリルと一緒に現場に向かった。
◆◇◆◇
世界を繋ぐ【凱旋門】。不思議なことにパリの凱旋門とかなり形が似ている。
よーく見れば装飾や材質が違うから、別物だが、偶然か?
現場につくと、リルと悪魔を狩りながら進む。
「え?」
私は戦慄した。大量の悪魔の軍ではなく、その奥に佇む悪魔の姿。
その名はサタン・カルドラ。災厄の魔王の第2位であり、大罪〈憤怒〉を司る魔王。
「ん?ありゃ、俺の娘じゃねえか。生きてたのか。何やってんだこんなとこで。」
「死滅属性神位《戦場ヲ駆ル死神》」
「うおっ。こりゃあ、随分なご挨拶だな。」
「何しに来たクソ野郎。」
私の鎌を人差し指で受け留めながら、私の問いに彼は悪意をはらんだ微笑で、答えた。
「暇潰し♪」
◆◇◆◇
強いやつどこだ?お、いた。俺の相手に相応しそうだ。
骸骨頭に鎧。3m位の身長に大剣。
「よう!お前誰?」
「主の命令により、この世界の侵略に参った。魔王軍の右腕。スケルトンジェネラルのオルという。」
「死ぬ覚悟は?」
「主の為なら、いつでも。貴殿の名は?」
「ライトだ。よろしく。さよなら。」
「はっ!抜かせ。闇纏剣術、暗乢拾慚」
「エクス、行くぞ。」
「了解。マスターの命令を受諾。戦闘態勢に移ります。」
◆◇◆◇
「隊列を乱すな!固まって行動、、、うわああああ!」
「暴嵐弓術・貫嵐一矢」
私が撃った風の矢は、6キロ先の司令官っぽいのを周りの雑兵ごとぶっ飛ばした。
「魔王軍の侵攻とは。不可侵条約はどこへ行ったんだ?」
不意に、首もとに殺気。城の屋根に飛び降りて飛んできた斬撃を回避。
「暴嵐双剣術・鎌鼬」
携帯している双剣で接近し、反撃。しかし止められた。こいつ強いな。
「貴様、その狙撃の精度で近接もできるのか!?」
「まあね〜」
「化け物が!!」
「ミノタウロスに化け物呼ばわりされるとは、心外だな。」
◆◇◆◇
東側は俺の担当。全く、あいつの国はよく災難に見舞われるなあ。
副団長なんて引き受けなければよかった。
おっと、なんか幹部っぽいの発見。王都に向かって大規模爆裂魔法の準備してやがる。
「炎属性、神位《火炎豪炎砲》」
「むっ!《炎結界》!」
同属性の防御魔法は突破しにくい。手ぇ抜きすぎたか。
見た目は幼女。攻撃しにくいな。なんで俺ばっかこんな役目を。
「妾は魔王軍幹部!半竜半魔のウィン・ドードラという!なかなかの実力者のようだ!妾と決闘してくれまいか!」
「勝ったらどうなるんだ?」
「普通に勝てば、殺すも捕らえるも好きにしろ。もし条件を満たせば、、、いや。これは蛇足だ。私が勝てば、この国は消す!」
「オッケー。解りやすくて助かるよ。」
◆◇◆◇
全く、デート中だったというのに、旦那は王城に帰っちゃうし、私は面白くもない雑魚の掃討に駆り出されるし、今日は厄日だな。
「華月流、芒の滓」
「うわああああああああああああああああ!!」
「華月流、牡丹の滓」
(ガキン!)
?なにか、斬れなかった。
「面白い。」
奥から出てきたのはゴツい、ムキムキの、鎧を着た魔龍人。龍の角が頭に生えた、魔龍と悪魔のハーフだ。結構強いはず。あと中々イケメン。旦那には遠く及ばないけど。
「手合わせ願おう」
「少しは楽しませてね。」
◆◇◆◇
俺も戦いたいが、よっぽどじゃないと俺は戦場に出てはいけない。結構前の「一番槍事件」から俺への監視が厳しくなったからだ。
しかも侵略してきたのは不可侵条約を結んだはずの魔王軍。国王である俺の仕事は山積みだ。
折角のデートがパアだ。恨むぞ魔王軍。
しかも今は隊長2人が出張中だから、戦力がギリギリだ。
まあ、負けることは無いが。
そういえばあいつはエリリアの実の親だったな。過去のことは聞いていないが、めんどくさそうだな。
誰が誰かは、文脈で察してください。解りづらくてすみません。




