【独白】
初恋は実らないとよく言うじゃないか。
そんな言葉を知る以前から、この初恋は実らないと知っていた。
『ここにいたの?探したんだよっ』
まだ舌足らずに喋る君が、真っ直ぐ俺を見てそう言った。
どちらかというと、俺たちは突然居なくなった君を探し回っていたのだけれど。
涙をこらえた顔でそういうものだから、『ごめんね』と謝って手を伸ばす。
今にも零れそうになっていた涙が白い頬に落ちないように、指先で拭った。
指の跡をなぞるように、目尻にきらきらと光る道が通る。
髪と同じ色のまつげは濡れてきらきらと輝いていた。
その時にはもう、囚われていたんだ。
君がいるから俺でいられた。
君が笑っているだけでよかった。
自分に向けられたものではなくても。
自分の隣でなくても。
幸せそうに、笑っているだけで。
夢を語る君
拗ねる君
大泣きしていたのに、俺を見つけてへにゃりと安心しきる君
色んな君をいつでも、今でも思い出せる。
君が俺の親友に恋をした瞬間も覚えている。
嫉妬よりも君は恋をするとそんな顔をするのだと見逃したくなくて、じっと見てしまった。
俺ではいけないと思っていたから、手を伸ばさなかった。
君が求めているのは俺ではないと知っていたから。
それでもよかった。
幸せそうに、笑っているだけで。




