うっかり縁を作らない為の工夫だったんだがな。
きっと性欲に負けたのだ。
《ソープも飽きたし素人女性とヤリたい気分だなぁ》
そう思ったのが災いしたのだろう。
ワープ先はチャコちゃんだった。
「嘘、飛田クン!?
飛田クンなの!?」
『やあ、チャコちゃんさん。』
思わず声を掛けてしまったが、その真剣過ぎる眼差しを見てうんざりする。
こんな事なら熱海のソープに行けば良かった。
あー、でも熱海は教えてくれた中本と、いつか2人で行こうって約束してたからな。
俺一人で熱海のソープに行くのは男としての信義に反することだ。
「あの!!
私、飛田クンにどうしても伝えたい事があって!!」
…雄琴にでも行くか。
「待って!!」
ワープを発動しようとした瞬間にチャコちゃんはスマホのカメラを素早く俺に向ける。
あまりの神速に制止すら叶わなかった。
オメーは早撃ちガンマンか!!
『チャコちゃんさん!!
流石に無断撮影は卑怯でしょーが!!』
「カメラが無ければ逃げるでしょ!!」
…くッ。
思えば最初からこの女こそが不安要素だった。
ええい、もう取引先の娘だろうが知った事ではないわ!!
我が必殺のワープクラッシュで後頭部を叩き潰して…
「私ッ!!
飛田クンになら殺されてもいいよ!!
こんな事もあろうかと、遺書にはちゃんと《合意の上》と書いておいたから!!」
ぐぬぬ。
この女、天才か…
そんな書面がこの世に残ってるのなら、もう手が出せんではないか。
法人登記したばっかりなんだぞ!!
『分かりました。
話し合いに応じます。
まずはカメラを止めて下さい。』
「カメラを止めたら飛田クンは私を殺すよね?
最低でも逃げるよね?」
クッ、思考が完璧に読まれている。
『あははは、嫌だなあ。
俺とチャコちゃんさんの仲じゃないですか。
そんな事、考えた事もないですよぉ♪(ニカッ)』
「じゃあ、私の要求を伝えるね?」
…何が《じゃあ》だよ。
『え、ええ。
聞きますよ。
可能な範囲でね。
なので、まずはカメラを止めて貰えませんかね?
えっと、今のチャコちゃんさんは俺の肖像権を著しく侵害してますよね?』
「止める、必ず止めるよ。
この動画も機会を見て削除する事を約束する。
でも、少しだけ待って欲しいの。
ちなみに今、私を殺しても無駄だよ。
youtubeにリアルタイムにアップしてるから。
安心してこれは限定配信。
youtubeのサーバーにしか残ってないから。
私が刑事事件級のトラブルにでも巻き込まれない限りこの記録は死蔵される!」
…クッ。
こんな所にワープの弱点があったとは。
【動画配信】
こんな初歩的な手で完封されるとは思わなかった。
ゴリ押しで殺すか?
いや駄目だ。
アルファベット社は米連邦政府からの天下りを大量に受け入れている。
配信が絡んだ事件が発生した場合、日本国への外交材料に加える為にも捜査協力を申し出るだろう。
現に幾つかの前例がある…
『ぐぬぬ。』
素直にソープに行けば良かった。
「それでは私の要求を伝えます。」
『…はい。』
「1日だけプレゼンをさせて下さい。」
『プ、プレゼン?』
「聞いてくれれば、この動画を削除する事を約束します!」
『え?
それはプレゼンではなく、単なる恫喝なのでは?』
「飛田クンにとって私、須藤千夜が決して不利益な存在では無いと主張させて欲しいんです!」
…参ったなぁ。
うっかり縁を作らない為の工夫だったんだがな。
チャコちゃんやソープ嬢の名を尋ねないようにしていたのは。
勝手に名乗るの禁止カードにしない?
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