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暴力からは何も生まれませんよー。

はい、戦争パート終了。

国際社会がそれをどこまで察しているかは知らないが、俺達は粛々と事後処理に勤しむだけ。



「11万4750石だったよ。

厳密にはね。」



『ほええ、どうりで筋肉痛な訳です。』



顎がまだ痛い俺だがバルンガ組合長と一緒に報告書を作成中。

長老会議で回覧される為、取得数量は正確に記載。

長老会議で回覧される為、取得方法は無論として隠蔽



【道端で色々拾いました。】



以上。

他に言い様がないので仕方ない。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



穀物配給は翌々日から早速始まり、ニヴル全員にコメと餅が配られ始める。

俺もバルンガの書生達と魚醤を掛けて餅を貪る。

うーん、炭水化物で腹がパンパンになるのって気持ちいい♪

書生の1人にダグなる30過ぎの器用者が居て、ガーリックバター風味のつけダレを即興で発明し近隣で大ブームとなった。

このダグ氏は少年時代にアスパラガスの自動栽培方法を考案した功績もあり、氏族ではかなりの優遇枠。

おまけに組合長のバルンガの後ろ盾もあることから、割と企画案が採用されやすい。

その彼と俺とでロキ爺さんへの補償を行う。



『ロキ先生。

そろそろネグラに帰って下さいよぉ。』



「アフォー!

そのネグラを取り上げたのがテメーらだろ!!

老い先短い年寄りを苛めやがって!!」



バルンガ庵の端っこに四畳半ほどの小部屋があり書斎として使う予定だったのだが、ロキ爺さんに占領されてしまった。

曰く、養豚場計画を潰した仕返しらしい。



『補償はちゃんとしますから、希望だけ教えて下さいよ。』



「トビタ少年が困るのがワシの希望!」



『いや、既に結構困ってるんですけどね。』



「もっと困って!」



『機嫌直して下さいよー。』



氏族の鼻つまみ者とは言え、バルンガにとってもロキ爺さんは大先輩なので強く出られない。

敷地に居座られるのは迷惑なのだろうが、黙って耐えている。



『じゃあ、養鶏場付きの坑道を補償として用意する案はどうでしょう?

ダグさんも去年まで畜産班に出向されておられましたし。』



「豚から鶏かー。

露骨にスケールダウンじゃのー。」



『ですよねー。』



  「トビタ君。

  キミの次の案件に先生に御一緒して貰うのは?」



ダグが助け船(?)を出してくれる。

ロキのようなひねくれ者には何を差し出しても納得してくれるとは思えないので、共同作業で何かを獲得して分け前を多目に渡せという趣旨である。



「ほう、案件か…」



『え?

そんなのがいいんですか?』



「そりゃあそうだろ。

自分の知らない所で若造が儲けてると妬ましくもムカつくんじゃ。」



ちなみに若い頃のロキ爺さんは真逆の発言をしていたらしい。



【俺の知らない所で老害共が儲けてるのはムカつくんだよ!!】



未だに語り継がれている暴言語録の1つ。

こんなジジーにだけはなるまいと固く決意する。



『分かりました。

じゃあ、次に俺が何かやらかす時はバディを組んで下さい。

勿論、リーダーはロキ先生。

俺はその御指導を賜るという形で。』



「ふーむ。

まあ、殊勝な提案じゃな。

そうじゃの、トビタ少年は頑張ってるし…

指導くらいならしてあげてもいいかの。」



どうやら承認欲求が満たされたらしく、露骨に上機嫌になる。

無論、庵から出ていく気配はない。

俺はダグに目線で礼を述べてから、リハビリ代わりに坑道をトロトロ散歩。

やはり雰囲気が明るい。

魔界トンネル開通・盆地入植開始・材木ビジネス締結・高炉着工・大銅脈発見とポジティブニュースが連発していた所に、突然の臨時配給である。

老若男女が満面の笑みを浮かべながら足取り軽く行き来している。

各トロッコ駅と戦士団詰所では、婦人会によるパエリア振舞の準備も始まりちょっとしたお祭りムードであった。

すれ違ったギョームからは醸造班がコメ酒製造の企画書を提出した噂を聞く。

間違いない。

ニヴルは王国で暮らしていた頃以上の豊かさを手に入れつつある。



『さて、問題は…』



トロトロ歩きでようやく坑道の外に出た俺は眼前のバルバリ峡谷を眺める。



『…。』



そこには凄惨な地獄絵図が広がっていた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



当然である。

ウィリアム王子が大軍を連れて来たにも関わらず兵糧だけが消失してしまったのだ。

連れて来られた将兵たちがパニックになるのは当然だろう。

帰国する為にも帰路の行軍兵糧は絶対に必要なのだから。



『デサンタさん。

えっと、あれは彼ら同士の武力衝突でしょうか?』



「多分。

ここからじゃ良く見えないけど…

ウィリアム派同士が射ち合っているようにも見える。

ピエール派は巻き込まれるのを嫌がって、相当後ろに下がったみたいだね。」



ここからは俺の推測。

恐らく、ウィリアム派の諸将は互いに兵糧を盗んだと疑い合っている。

そして互いに陣中の捜査を要望しているうちにエスカレートしたのではないだろうか?

デサンタ曰く、あのぶつかり方は予め準備した戦闘ではなく、自然発生した小戦闘が膨れ上がった性質のものらしい。

古参下士官にそう見えたのならそうなのだろう。



「あ!」



デサンタが思わず声を上げる。

それまで遠巻きの射ち合いだったのに、急に騎兵が暴れ出した。



「あー、アレはイカンでしょ。」



『駄目っすか?』



「いやー。

一言で言えば末期。

軍隊としてあってはならないこと。」



『なるほどー。』



そりゃあね。

同士討ちなんて職業軍人が絶対にやっちゃいけない事だからね。



『あ、デサンタさん!』



「ん?」



『午後に臨時配給が来ます。

難民達から見えない角度で食べて下さい。』



「え?マジ?

僕らも貰っていいの?」



『だって対難民の窓口として機能してくれてますしね。

長老会議も普通にありがたがってますよ。』



「あ、そうなんだ。

安心したよ。

イマイチ自分達がどう思われてるのか分からなくてね。」



『俺も含めての話ですけど。

外付け機関として弁えた上で、ニヴルにコミットしているのは大歓迎らしいんです。』



「やはり王国側との結託を懸念されてる訳だね。」



『ええ、ただデサンタさん達は何かあっても真っ先に氏族に知らせてくれている訳じゃないですか。

その姿勢が伝わり始めてます。』



デサンタチームへの評価は高い。

元々、同師団の出身だけあって統制が取れているのも指示連絡が徹底し易くて助かるらしい。

なのでデサンタチームに限っては坑道には入らせないものの、惣堀内に特別農地を支給する案まで出ている程だ。



「あ、合衆国軍が出て来た。」



『あ、ホントっすね。』



「あー、やっぱり横槍を突いたねー。」



『あのー。

何で合衆国軍はいきなり攻撃を始めたんですか?』



「え?

だって戦争中だし。」



『休戦したんじゃなかったんでしたっけ?』



「ん?

どっちだろ?

この数日で情勢がコロコロ変わり過ぎて把握出来てないわ。

でも休戦中でも、敵が近づいてい来たら普通に攻撃命令出るよ。」



『え?

そうなんすか?』



「いや、僕はそれが常識だと思ってたんだけど。

軍隊バイアス掛かってたのかもね。

確かによくないよね。」



『あ、いえ。

批判するつもりで言ったのでは…』



どうやら王国軍同士の武力衝突がエスカレートして合衆国陣地に接近してしまったらしい。

それで反撃を受けたのだろう、知らんけど。



「あー、第四軍は兵士が造反したっぽいね。」



『え?

そんなことまで分かるんですか?』



「そりゃあ、長年職業軍人やってたもん。

嫌でも分かるよ。」



きっとデサンタには教師の才能があるのだろう。

軍事に疎い俺に戦況の読み方を懇切に教えてくれた。



『えっと、じゃあこの後どうなるんですか?』



「組織としての軍隊が崩壊するんじゃないかな。」



『もう崩壊してません?』



「いや、まだ今は軍隊秩序に従っての武力衝突だから。

でもそれも今日いっぱいの話じゃないかな?」



『なるほどー。』



「で、食事支給を見込めないと知った兵士達は兵糧庫を襲撃し始める。

これ軍隊あるあるね。」



『兵糧庫に兵糧が無かったらどうするんですか?』



「襲撃の対象が日頃嫌われてる上官に切り替わるだけさ。

分かるでしょ?

そういう呼吸。」



『まあ、何となくは。』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



翌日。

デサンタの予言は見事に当たった。

軍隊がバラけている。

昨日までのウィリアム派は部隊毎に整列してたのだが、今日は散り散りになって戦場を散開し始めている。

合衆国やピエール派の陣に接近しては追い返され、恐らくは居座ってゴネようとした者が殺された。



『そりゃあ居座ろうとしたら、そうなりますよね。』



「トビタ少年、どうしてワシを見ながら言うの?」



動きも緩慢に見える。

いや、違うな。

ずっと飲まず食わずだから身体に力が入らないのかも。

そして突如、難民の群れが惣堀に殺到して来る。



「何かありましたか?」



デサンタ組が難民に尋ねると、どうやらウィリアム派に襲撃されているらしい。



  「酷いんですよ!

  食料を出さなきゃ殺すって!」



  「我々を守って下さい!」



  「もう100人以上が殺されてます!」



俺やデサンタが長老会議からの監察員を振り返るが、不思議そうな表情をされてしまう。

まあな。

そりゃあそうだ。

ドワーフ的な視点からすれば、眼前で起こっている事は人間種同士のトラブルに過ぎない。

惣堀を踏み越えらるような事態にでもならなければ、当事者意識すら湧かないだろう。

確かに眼前の王国軍も王国難民も飢餓にあるのだがニヴルには関係がない。

そもそも今のニヴルはパエリアにありつくのに忙しいのだ。

監察員氏にしても兄夫婦の盆地移住に誘われており、この任務が一段落したら休職して現地に下見に行く予定。

お兄様がマッシュルームの栽培小屋作りで有名らしく、一棟を任せられるらしい。

朝からその話ばかりを聞かされている。



「え?

我々が何かした方がいいんだっけ?」



『いえ、最長老達も不干渉決議を出したばかりですし。』



「だよねー。」



『はい。

あ、一応襲撃者側に停止呼び掛けはした方がいいかもです。

後でゴチャゴチャ言われるかも。』



「あー、人間種ってそういう所があるよね。」



監察員氏は大音声で襲撃者達に暴力行為の即時停止を訴える。

声は物凄い迫力なのだが余程無関心なのか、一度っきりの一喝が終わると切り株に腰掛けて配給食のチマキをムシャムシャ食べ始める。

恐らくはマッシュルーム栽培の事を考えているのだろう。

人間種が日頃ドワーフに興味がないように、ドワーフも人間種に興味がない。



  「ぐわあ!!!」



  「ちょ!! 

  やめて下さい!!」  



  「ぎゃー!!」



とうとう惣堀のギリギリまで大量の難民が逃げ込んで来て、追ってきたウィリアム派がサーベルを振り回し始める。

監察員氏が不意に声を上げる。



「あ、トビタ君。」



『え?

はい。』



「俺が受けてる命令なんだけどね。

惣堀の近くでは絶対揉めさせるなって。」



『そうは言われましても。』



「それとこっちが相手に攻撃するのは絶対に駄目だって。」



『なるほどー。』



偉い人は無茶振りするよな、と監察員氏とボヤキながら、粘り強く襲撃者に非暴力を呼びかける。



「人間種同士仲良くしたらどうですかー。」



『暴力からは何も生まれませんよー。』



一応2人で呼びかけてみるも、心がこもって無い所為か我ながら響かない。

そうこうしているうちに、襲撃側がどんどんエスカレートして難民達を斬り殺していく。



「駄目ですよー。

仲良くして下さーい。」



『命は何よりも尊いものですよー。』



襲撃側にも三分の理があるらしく、血塗れのサーベルを片手に口々に訴えてくる。



  「我々は法律に従い食料供出を要求した!!

  拒んだから法律に従い処罰したまでだ!!」



そんな言い分。

コイツら滅茶苦茶言うよなー、と思いながらデサンタを振り返ると、そういう法律が本当にあるらしい。

なので襲撃側は完全に合法で、悪いのは食料を出さない難民となる。



『えっと。

彼らにしたって食料は持ってないんじゃないっすかね?』



襲撃者が他の難民も殺すと息巻き始めたので、そうコメントしておく。



  「用意していないのが悪い!!」



腹が減っている所為か滅茶苦茶である。

というか、この襲撃者達は軍服を第二ボタンまで外して着崩しており、明らかに軍隊の統率から外れている。



  「俺達を傭兵として雇え!!」



突如、そう要求されたので驚く。

監察員氏は、ボーっと眺めているだけで当事者意識を持っていない。



『雇えと言われましても。

ニヴルには既に戦士団が存在しますし。』



  「オマエだって雇われてるだろ!!

  俺達も推薦してくれよ!!」



『あ、俺は婿入りしただけなので。

厳密な雇用関係ではないっすね。』



  「え?

  ドワーフと結婚したの?

  キッショ!」



もう少しオブラートに包めよ。

そんな風に応対していると襲撃者はどんどん増えて難民のテントの家探しを始めた。

数百人に膨れ上がっている。



『いやいやー、流石に家探しは駄目でしょー。』



  「俺達は法律に従って行動しているだけだ!!」



デサンタを振り返ると哀しそうに頷く。

これも合法。

どうやら悪いのは自主的にテントを開示しない難民の方らしい。

襲撃者が難民の古着や食器を奪い始めているのだが、これも合法。



  「おい、ドワーフ!!

  オマエらも食糧は持ってるだろう!!

  供出せよ!!」



監察員氏が無言で鯉口に指を掛けると、襲撃者達は一斉に後ずさる。

この人、去年まで戦士団に居た人だからな。

絶対に喧嘩売らない方がいいと思うぞ。



  「食料を出さない場合!!

  この子供を殺すッ!!」



襲撃者はとうとう子供の首筋に剣を突きつけて食料を要求。

監察員氏は一瞬だけ顔を上げるが、人質の子供がドワーフ種ではない事を確認すると安堵の微笑。

瓢箪の馬乳酒をクピクピ飲みながら干し肉をポリポリと齧り始める。



  「舐めてんのかテメーーーッ!!!」



煽られたと解釈した襲撃者達が激昂するが監察員氏に悪気はない。

彼は純粋に人間種に対して興味を持ってないだけなのだ。



  「本当に殺すぞーーーッ!!!」



『あ、はあ。』



「(ポリポリ)。」



信じ難いことだが、デサンタ曰くギリギリ合法ならしい。

【行軍協力を拒む者は反逆者であり、その家族も準反逆者として扱う】

という法律がちゃんと存在するらしい。



『へー、法律怖いっすね。』



「怖いよー。

まあ、俺はどちらかというと行使側だったから偉そうなこと言えないけどさ。」



「(クピクピ)」



  「うおー!

  うおー!!

  いいのか!?

  本当に殺すぞ!!」



『はあ。』



「僕も軍隊時代は似た様な任務に従事してたからね。

文句言えないわ。」



「(ポリポリ)。」



不意に子供の悲鳴が挙がる。

どうやら興奮のあまり襲撃者の手元が狂って本当に刺してしまったらしい。



  「う、うわー!!!」



『あ、どうしました?』



  「オマエらの所為だぞ!!

  そっちが真摯に応対しないから!!

  俺は子供を刺してしまった!!!」



『気を落とさないで下さい。

軍事行動なんだから仕方ないですよ。』



「(ゴクゴク)。」



  「あ! あ! あ!

  おい!! ポーションとか無いのか!?」



『え?

その出血じゃ手遅れでしょ?』



「(ムシャムシャ)。」



  「うわーーーー!!!!

  オマエらには人の心がないのかー!!」



『はあ、何かスミマセン。』



「ふー、食った食った。

トビタ君、俺トイレ行って来るから。

何か変わった事があれば記録しておいて。」



『あ、はい。』



  「うおー!!

  うおーーー!!」



理由はよく分からないが襲撃者達が激昂して手当たり次第に難民を斬り始める。

まさしく阿鼻叫喚なのだが、聞こえる悲鳴は全て人間種のものなので惣堀の内側のドワーフ達は特に気に留める様子もない。

俺がボーっと見ていると、監察員氏がトイレから戻って来る。



「トビタ君。

便所でヨルム戦士長から言われたんだけどさ。」



『あ、はい。』



「襲ってる方の所属だけ調べといてって。」



『そっすね、迂闊でした。』



今日のヨルム戦士長は休暇シフトらしく、何らかのアクシデントでも発生しない限り本営に戻らなくても良い。

なので惣堀の周辺で山羊と戯れながらリフレッシュしているそうだ。

そりゃあね、あの人は一番激務なポジションだからね。

たまにはのんびりして欲しいよね。



『あのー、お仕事中宜しいですか?』



  「何だ!!

  やっと供出する気になったか?」



『皆さんの所属って教えて貰っていいですか?』



尋ねた瞬間に襲撃者全員が剣を止めて黙り込んでしまう。



  「あ、いや。」



『別に咎めてる訳ではないんです。

俺も報告書とか書かなきゃ行けないんで、皆さんの所属を教えて下さい。』



  「…ほ、報告書!?」



全員が一斉に顔を伏せる。



『?』



「トビタ君に顔を覚えられたくないんだよ。

後々軍法会議に掛けられた時にマズいから。」



『え?

でも合法なんでしょ?』



「僕と一緒で脱柵じゃないかな?

ひょっとすると部隊の解散を正式に告げられた後かも。」



  「ッ!!!」



『え?え?え?』



「あー、図星だねえ。

解散後の徴発は脱柵よりもヤバイかも。」



『へー。』



  「五月蠅い!!!

  俺達は正規軍だ!!

  違うって証拠でもあるのか!!!」



『いや、証拠も何も…

俺は王国軍の人と付き合いありますし。

確かめる方法は幾らでも…』



  「え!?

  付き合い…

  何で!?」



『俺の持ってる土地を軍にレンタルしてるんですよ。

使用料の支払いとか領収証発行とかで、将校の方が結構来訪されてるんです。』



  「しょ、将校!?」



彼らにとって相当マズい状況になったらしい。

どうやら彼らは帝国戦線に配属されていた兵士。

ウィリアムに率いられて戦場に到着したばかりで、ここらの事情をよく知らなかったようだ。



『えーっと、軍籍を抜けられたのであれば…

デサンタさん、違法ですね?』



「準叛逆罪。」



『なるほど。

えーっと、では窃取した民間人の財産を返却するべきでしょう。』



  「いや、待て!!

  誤解だ!!」



『はあ、誤解ですか。

じゃあ所属と階級を…』



  「…う、う、うおおおおッ!!!」



どういうスイッチが入ったのか襲撃者達が難民を再び襲い始める。

「死なば諸共じゃー!!」などと叫んでいるので、ほぼ死が確定した状況に追い込まれてしまったらしい。



「あ、ゴメン。

トビタ君、僕が襲撃を止めていい?」



『え?

何で?』



「明確に軍籍から外れた者の狼藉を放置してたら、ニヴルが加担したように誤解される。

それだけは避けるべき。」



『ああ、確かに。

いや、まずは俺から行きますよ。


ワープ。』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




人目が多いのでちゃんとしたワープは使えない。

半歩ずつ高速で小刻みに瞬間移動しているので、客観的にはホバー移動しているように見える筈。

(頼むー、ホバーって事で納得してくれー。)



『じゃあ再度警告します。

窃取した物品を返却の上、正規軍に出頭して下さい。』



「ざけんな!!!!」



はい、決裂。

まあ、今までと要領は同じだ。

ホバー移動で襲撃者達の隙間を縫って高速移動。

態勢を崩している者や集中力の切れている者の背中や後頭部をブスっと刺して回る。



『はーい。

早く武器を捨てて投降して下さいねー。』



「「「「うわああああああああああああッ!」」」」



その場に居たのは百人弱程度だったし、まだ8割しか斬っていなかったが生き残りは全員武器を捨てて地に伏せた。

はい戦闘シーン終了。

お疲れ様。

俺も慣れない左手での殺害だったので、手首がジンジンと疼き始める。



『じゃ、戻るとしますか。』



  「待ちたまえ!!!」



手首を擦りながら惣堀の内側に戻ろうとした俺だが意外な声に呼び止められてしまう。

振り返れば王国軍の騎兵団。

先頭ど真ん中にはピエール王子、か。

この話が面白いと思った方は★★★★★を押していただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
お、なんか面倒ごと振ってくるんか
天国と地獄、ドワーフ達の空前の裕福ぶりと人間達の飢えが極限にまで達した残酷なまでの対比だ
なんだろ お話が面白いと感じるワシはダメなんかなあ?酒のみながらかに味噌なめながならなにほん酒中。更新ありがとうございます
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