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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部二章「百合葉の美少女落とし」
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第15話「咲姫の看病」

 咲姫がおかゆを作りに行くと言って僕の部屋を後にしてから、ずっと。僕は寝ることすらままならず、とにかく何も出来ないでいた。



 子どものころ高い熱を出したときには、黒い鉄球に押しつぶされるような重たい感覚があったなぁと思い返したり。今はそれほどでは無いにしろ、具合が悪いのに寝付けない居心地悪さで何度も寝返っているだけ。体調とあいまってすごく落ち着かない。



 そんなふうに苦しみゴロゴロ続けていると、ドアをノックする音。そのときだけ、風邪をぬんっと気合いで吹き飛ばして僕は立ち上がる。暇で暇で待ちわびていたのだ。



 ドアを開ければ、色とりどりの野菜が刻み入れられたおかゆが。そんな物が何よりも先に視界に飛び込んできたので、お腹がぎゅるっと鳴ってしまった。その器をお盆に乗せて持っている咲姫が唇を尖らせる。



「もうっ。わたしじゃなくてご飯が待ち遠しかったのねぇ」



「ご、ごめん。でも咲姫の手料理が楽しみだったからさ」



 力の入らない目で僕はそう訴えかけると、咲姫は照れたように「それならいいけどっ」なんて。そんな、たまに見せるツンツン具合も可愛い姫様だ。



 しかし、どんなに口説きおだてようとも、今は僕が面倒を見てもらう身。どんなにかっこつけようとも決まらないのだから、思う存分甘えることにしよう。と、思っていればベッドに腰掛けた僕へおかゆとスプーンを持って寄りかかる彼女。どうやら食べさせてくれるみたい。彼女も僕を甘やかしに来たということで良いのだろう。



「はい、あ~んしてぇ」



「食べさせてくれるの? やったぁー。あーん」



 彼女がスプーンによそったおかゆを、ふーふーと冷まされてから食べる。ああ……安心する味だ。甘味と塩味のバランス。よく味わえば分かるようなほんのり具合。ドロドロなのに噛みしめてから飲み込めば、舌も胃も喜んでいるのか、健康時のように『もっとちょうだい!』と訴えかけてくるのが脳まで伝わってくる。一気にエネルギーが循環するみたいだ。



 お互いに何も言わず、アイコンタクトを取って次々に食べさせてもらう。ぱくり、ぱくりと、休む間もなかったので悪いとは思っていたり。でも、彼女の手を急かしているはずなのに、どうしてか咲姫は次第に優しげな表情になっていって、そんな彼女の顔を見ながらだと、余計に美味しく感じられる。



「……ふうっ。ごちそうさま」



「うふふっ。ずいぶん急いで食べてくれたのねぇ。そんなに美味しかったぁ~?」



「うんっ。やっぱり咲姫の料理最高さ。毎日でも食べたいくらいだよ」



「もぉうっ、調子の良いことばかり言って……」



 とは言いつつも、満更でもなさそうに彼女は両頬に手を当てて恥ずかしさを隠している。反応も素直で可愛い。



 だが、僕もまた紅潮し身体が熱くなっていた。あったかいおかゆのお陰だろう。



 続けざまに咲姫に運んでもらって、お茶碗一杯半くらいの量をペロリと平らげてしまった僕。落ちつかないダルさは随分やわらぎ、ポッカポカ通り越して汗が滲むくらいだ。ちょっと気持ち悪いなぁと今更ながら気にしだす。





「こんなのばかりでごめんねぇ。もっと美味しいものを作ってあげたかったけど、百合ちゃん風邪だから……」



「むしろ助かるよ。今はこのくらいが一番だし。もっと美味しいものは風邪が治ったら食べたいかな」



「そうねぇ。来週の休みとか何か美味しいものを食べに行きましょうよぉ~」



「いいね。デザートとか甘いの、うんと食べたいかも」



 なんて、風邪で落ち込み気味な気分を彼女が元気づけてくれる……。ああ、実に嫁だ……。嫁にほしい……。



「片付けるついでに、ちょっとお手洗い借りるわねぇ」



 体臭を気にしつつ話していると、咲姫は思い出したように再び一階へ降りてしまった。なぜ来客の彼女ばかり忙しい思いをしているのか。こんなに尽くしてもらえるだなんて、もはやママでしかない。



 だけどその隙に、汗の臭いとか大丈夫かなと僕は自分のシャツをくんくん嗅ぐ。うーん、ちょっと臭い。シャツを替えるか……でも背中はだいぶぐちょぐちょ。まだまだ汗は引きそうにないし、着替えたとして綺麗なのをすぐ汚すのはちょっともったいない気がする。そもそも咲姫が戻ってくる間には着替えられるか分からないのもあるけれど。



 そうして、ちょっとの間待っていれば、またもノックする音。なんだろう。と思いつつ僕はドアを開ける。



「おまたせぇ~」



「咲姫……なにそれ……」



 鍋を片付けに行ったと思えば、今度は湯気を立てた洗面器とハンドタオルを持ってきた彼女。ま、まさか……。



「汗かいたでしょ。体拭いてあげるわよぉ?」



 お決まりの展開だった。



「そんな……わざわざ悪いよ」



 手を振り断る僕。しかし、ぐいと僕に詰め寄る咲姫。



「駄目よ百合ちゃん。今は誰にも甘えられないんだから、わたしを頼って?」



「ああ……うん、じゃあ……。お願いする……かな」



 そんな彼女の押しに負けて僕は半裸になることを決意する。ちょっと戸惑うけど、いつかは見られるのだ――と自分に言い聞かせて、覚悟を決めるしかなかった。



 力無くもたつきながら脱ごうとすれば、見ていられないと言わんばかりに咲姫の指が強引に割り込み、ボタンをひとつひとつ、外す。なんだろう、この恥ずかしさは……。羞恥プレイでも無いし、同性だっていうのに。体から喉から頭の上まで、蒸気が駆け抜けるみたいに、熱い。



 パジャマを脱がされて、次はインナーをゆっくり持ち上げる彼女。ブラはしていないし、これを脱がされてしまえば、僕の身体はあらわになってしまう。しかし、恥ずかしさに目を逸らそうとするも、咲姫かあまりに真剣な瞳で僕に訴えかけてくるので、僕は従って両手を上げる。決意を固め目をつぶっているうちに、汗で気持ち悪くなったシャツはするりと抜け終わり、つい、ぶるっと身震いする。



「寒い……」



「ごめん、でもすぐ終わるからねぇ」



 そう言うと咲姫は、お湯を絞り終えたタオルを片手に、僕を抱き締めてくれた。突然のことで少しの戸惑い。



「だ、駄目だよ咲姫。昨日お風呂に入れなかったから、汚いもん……」



 半裸になった僕の身体からは、避けようもなく少し酸っぱいニオイ……。それをすんすんと嗅がれて、余計に赤面してしまう。



「そんなの気にならないわよぉ。寒いんでしょ? なら暖めながら拭いてあげる」



「う、うん……」



 耳元で囁く甘い声。鼻孔をくすぐる甘い香り。僕の心臓はバクバクと早鐘はやがねを打っていて、彼女にバレてしまわないか余計に固くなっていた。



 優しいタオルが僕の背中を這っていく。そういえば、出て行くときにはポーチをわきに挟んでいたし、このピンクのタオルも彼女の持参なのだろう。なめらかな肌触りがストレス無く身体を綺麗にしていく。



 その、時々触れる白妙の指が妙に艶めかしい動きでくすぐったい。やがて僕の首に差し掛かったとき、ビクッと跳ね上がってしまった。「ふふっ」と小さく笑う彼女。余裕のあるその表情。もしかしたら遊ばれているのかもしれない。



「じゃあ百合ちゃん、後ろ向いて?」



 背面をすべて拭き終わると、咲姫は両手で僕の身体を軽く回そうとしながら言った。



 しかし、前側となると、途端に恥ずかしさが増す。だって、直に触れてしまうのだ。恥ずかしいに決まっている……。僕が彼女の言葉に返せないで居ると、その掛かる手は余計に力が入る。



「女通しなんだから、恥ずかしく……ないでしょ?」



 目の前で向き合って、その言葉は僕の心の奥深くまで見通すように、真面目なようで……怖かった。



「う、うん……」



 仕方がないと目をつぶりながら、僕は彼女の力に従って、ベッドの上で後ろに向く。よく考えてみれば、抱き締められるのならば、真正面でまじまじと見られないのだから、恥ずかしさはそこまででもないかと思う……けどやっぱり少し、恥ずかしくて、両腕で隠す胸を押しつぶす。



 そうして脳内で一悶着ある内にも裏返されれば、後ろから抱きしめられるみたいに僕の背に温もりが。しかも、顔に息がかかるほど近くて。頭を僕の肩に乗っけている? 僕はちょっと左下へ視線を送ろうとしたとき、咲姫は僕の耳元にわざと吐息が掛かるように、ねっとりと囁く。



「ところで百合ちゃん、お腹のあとは、いったい何の痕なのかなぁ~?」

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