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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部一章「百合葉の美少女集め」
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第52話「妙なアンバランス」

「宿題、見てくれてありが……感謝スルッ。……またしあさって……悠久の時を経てアタシ達は出会う事になるデショウ……うへへっ」



 僕らは寮生二人組との別れ際。譲羽の中二病流お別れ挨拶を受けていた。本人なりにビシッと決めたかったのだろうか。



「おおう! おととい来やがれってやつかな!?」



「ウッ……違っ……」



 とんちんかんな仄香のミスに、かっこつけたかったと見られる譲羽は苦い顔をする。可愛い。



「『おととい来やがれ』は二度と来るなって意味だからな?」



「うわぁーっお! ミスった! それならそれなら……また会おうっ! ……かっ!?



「それは雄々しい言い方だなぁ……」



「少年漫画みたいだな……」



 譲羽も譲羽だけど、仄香もなんだか変なキャラである。



「そんじゃー普通に! さらばだーサラダバーお皿ダバー」



「また、出会える日を、待ッテル……」



「まぁ~た変な言い方して……じゃあね」



「ばいばぁ~い」



「……さよならだ」



 一様に別れを告げる僕ら。仄香と譲羽が手を繋ぎながら寮へ向かうのを見届けて僕らも帰りの坂をおり始める。



 ところで蘭子ちゃんも少年漫画みたいになってるけど? さては言い慣れてなかったね? 可愛いよ?



「譲羽、ちゃんと感謝を言えるんだな。ごめんも言えない不器用な子だと思っていたから、これはいけないと、最初はキツく当たってしまった。すまないことをしたな」



 突然の蘭子の切り出しに僕は驚く。この数日過ごしてて、譲羽なりに頑張っているのを見てきたからだろう。ここに来て、出会い頭のプチ喧嘩を悔いる様子の彼女だった。



「そうだね。確かに不器用かもだけど、ユズは喋り下手なのを治そうとしているみたい。だから、応援してあげないと……ねっ」



 僕もまだ付き合いは短いけれど、その頑張りは評価したい。そう思って、蘭子も助けになってくれればなぁ……とウィンクしてみたら、目を逸らされてしまった。つらい……。



 その様子に口を挟まない咲姫。僕も傷つき、咲姫もだんまりでは、降りてくる沈黙が……ああ痛くなってきた! やばいやばい!



 そう。実は僕は寮生組が居なくなって、電車組の僕と咲姫と蘭子の三人になってしまったこの時間に恐怖を抱いているのだ。三人での下校時間、下校時間なのだ。一日のどんな時間よりも、この時間が一番長く感じる。



 というのも……。



「蘭ちゃ~ん。なんで腕組むの嫌がるのよぉ~」



「……だって、暑いじゃないか」



 沈黙を無理やり破るように、さっそく蘭子に攻める咲姫ちゃんであった。失敗したみたいだけど。



「今はむしろ寒いぐらいよぉ~」



「咲姫、寒いなら僕と腕を組も?」



「うぅ~ん、どうしよっかなぁ~」



 さらにこんな具合ときたものだ。



 初夏にもまだ遠い春の夕暮れ時。丘の上から町の景色を見下ろすと、臼の薄闇の中で道路の光が列をなしていた。ブレザーが無ければ肌寒い、そんな時間帯。



 相変わらずなのか、なんなのか。今日は大人しいと思っていた咲姫は僕ら三人になった途端に蘭子に攻める攻める。嫉妬の炎が心臓にまで届いて、恋心のままに動いてしまいそう……。そのくらい、胸が苦しくなる。



 一方で蘭子は以前にも増して嫌がっている顔だ。この数日間、ずっとクールビューティー蘭子ちゃんの顔を眺めていたから分かる。口元は結んだまま全然変化しないけれど、眉がほんの僅かに顔色を表してくれるのだ。



 嫌がる蘭子は咲姫と僕に挟まれた位置関係だったんだけど、咲姫を避けてどんどん僕側に寄ってくるから、僕が車道に落っこちてしまいそうになる。子供の頃の妄想的には、車道に落ちるのと川に落ちるのとは同意義でゲームオーバーになってしまうルールなので、直感的になんだか嫌だったり。そもそも歩行者が車道に出たら邪魔になっちゃう。



「じゃあ僕が咲姫と腕を組もぉーっと」



 僕がそう言って蘭子の後ろを回って咲姫の側へ行くと、蘭子は「あっ」と小さく驚きの声をあげた。



「んっ? 蘭子どうしたの?」



「い、いや……。なんでもない。寒い者同士、くっついているといいさ」



「……うん、そうするー」



 なんだか引っかかる。いつもの横髪を払って大人ぶる素振りをしたけれど、言いよどむような様子があった。やはり僕らと仲良くしたいけど、大人っぽい自分には似合わないとでも思っているんだろうか。そんな事ないのに。



 蘭子に言われた通り、僕は咲姫の腕にしがみつこうとする。しかし、するっと。避けられる。もう一回、するっと……避けられる……っ。なんで僕を一瞬たりとも見ないで避けられるの!? というか、せめて僕を見て! あと避けないで!?



「うぇぇ……咲姫に嫌われた……」



 僕が弱音を吐くと、咲姫は僕をちらりとも見ないまま、唇に綺麗な人差し指を当てて考える素振りをする。



「なんだか暖かくなって来ちゃったし、別にいらなくなったかもぉ~」



「そ、そう……」



 い、要らない……。グサッと僕の心に刺さったよ刺さっちゃったよ。



 なんだかなぁ……。



 せっかく、仄香と譲羽含めた五人としては仲良くなったと思ったのに、この三人が集まった時にはなんだかギクシャクじみたもどかしさがある。



 もしかしてあれかな? ムードメーカーの仄香ちゃん、マスコットキャラの譲羽ちゃんが居ないから、この三人だけだと妙なアンバランス感を醸し出しちゃってるのかな? よくあるよねー。リーダーが居なくなった途端に残ったメンバーは空気が悪くてぎこちないっていうの……僕がリーダーなんですけれど!?



 ともかく、僕の力不足なのだろう……。こういう僕自身が落ち込んでいるときにもちゃんと話を振れるように、もっとラジオやネットから、話題の種を収集しておかないといけないのかもしれない……。

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