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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第3部一章「百合葉たちの繰り返す春」
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第39話「レズたるもの指弾きベース」

 ある日僕の家に、ベースを持った蘭子が遊びに来ていた。



 うちにはベースアンプはないけれど、ヘッドホンアンプにイヤホンを付けて練習する感じで、重低音の効くスピーカーに繋げればまあまあ音は鳴るのだ。



 そんな感じで、僕はエレキギターをアンプにつなげ、蘭子はスピーカーにベースを繋げ、音を絞って遊んでいた。この位の音量ならば話せるし、近所迷惑になるほどでもない。



 何より時間を気にせずくつろげる! お金がかかるスタジオなんて、遊び場というよりは練習場って感じだからね……。ドラムだけは防音がしっかり必要なだけに、可哀想ではある。



 お金気にせず気軽にドラムも練習できるとしたら、防音設備が整った音楽室の軽音楽部かー。いいなー。と思っていたけれど、よく考えたらうちは建前上は写真部だった……。マヂ女の子しか撮ってない……。だって女の子ってだけで芸術的価値が高いからね……。絵画でも写真でも、男の子より女の子だろう……。つまりは実質、男より女の方が価値が高い証明である。あーまた女の地位の高さを証明してしまったなー。男もみんな女の子になればいいんだけどなー。



 とりあえず、思い付きで楽器をセットする写真を撮っておこう。自撮りの僕を添えて。パシャリ。うん。自撮りが苦手だった僕もあの手この手でみんなと写真を撮り続けた結果、少し構図が上手くなってきたと思う。やはり僕らは写真部だったのだ……。なぜなら楽器は毎日触らなくても、写真は毎日撮るからだ……。まーた証明してしまった。



 とお馬鹿な事を考えつつ、めんどくさくて放り出さないようにチューニングしっぱなしにしたギターを抱える。ジャーンとパワーコードを鳴らす。人差し指と薬指だけで押さえて平行移動。曲っぽいコード進行にさせる……。実にパワー! お手軽過ぎて最高だね! この世の曲はみんなパワーコードだけになればいいよ!



 もちろん、そんなんでエモさも何もあったもんじゃなく。簡単なメジャーマイナーのコードを弾いてウォーミングアップ。ちょっとだけ雰囲気が出てきたので、もうギターは簡単なコードが弾ければいいんじゃないかと思いましたとさ。



 そうしてるうちに、チューニングしてセットし終わった蘭子は、まず一番に右左と指を交互に、デデデデデッと鳴らす。すごい速さだ。



「速いねー。めっちゃ練習した?」



「そうだ。レズたるもの、指弾きベースを極めなくてはな」



「セクハラ目的かい……」



「そんな悪い風に捉えるな。そもそも、一応は恋人同士なのだから、指使いくらいでセクハラ扱いしないでくれ」



「ま、まあそうだね……」



 エロ方面のネタはどうしても苦手だなと恥ずかしく思いながらも、しかしその情熱は感心する。以前のライブでは、ここまで速くは出来なかったはずだ。



 メタルバンドの如く、指の攣りそうなくらい高速フィンガーピッキング。やがて、速弾き運動が終わったのか、ジャズのようなボーンボーンとしたウォーキングベースに。たまにドヤ顔で僕を見てくるのが可愛い。僕に自慢したくて練習したんだろうなぁ。可愛い。真面目に練習しちゃうのも蘭子らしくて可愛い。あー最高に可愛い。



「すごいね。メタルの次はジャズみたいだ。音が気持ちいいよ」



「そうだろうそうだろう。子宮に響いてくる感じがあるんじゃないか?」



「いや、ないけど」



 キッパリ否定した。



「それは残念だ。まあ私も特別響かんのだが」



「響かんのかい……」



 なんでもセクハラに繋げてくるあたりも、蘭子らしい。



「だが、百合葉の事を考えると、途端に響くな……。つまりは百合葉は重低音だった?」



「はいはい……いつもじゃん」



「私の子宮を響かせて妊娠させようとは……やるな百合葉。しかし私はタチ。妊娠させる口を塞ぐのは私だからな? あっ、下の口も……」



「馬鹿! 僕を歩く十八禁扱いすんのはやめなさい! むしろ十八禁はアンタの方でしょ!」



 本当になに言ってんだか!



 しかし、重低音に関しては聞いたことがある。公道で爆音ドゥンドゥン鳴らせる車は、同乗者の女をムラムラさせたいからとか。



 音楽好きの端くれとして、そういう音楽の使い方は嫌だなって思う。しかし、想いを歌に乗せたのか元々の音楽の始まりと考えたら、間違っていないのだろうか。



「さて、百合葉へのセクハラウォーミングアップはこれぐらいにして」



「セクハラをウォーミングアップにしないでもらえる?」



「心が温まるが」



「僕は恥ずかしくて暑いくらいだよ!」



「ちょうどいい位じゃないか。それじゃあ、何から合わせるか」



「はぁ……。あ、えっ? なんにも練習してないや。遊ぶだけかと」



「なんだ。百合葉らしくない。今ごろ、メタルバンドの如く、ピロピロ弾けるかと思っていたぞ」



「それは道のり長すぎるわ……」



「タチレズを目指すなら、指の速弾きは覚えた方がいいぞ? もちろん、私が居る以上は百合葉はネコになるわけだが」



「はいはい……。ギターでできるのは簡単なコード弾きくらいだよ。休みの日に練習して、コードチェンジが少しずつ速くなってきたかなーくらい」



「まあそうか。百合葉も忙しいもんな。じゃあ、学校祭でやった『夏休み』でも弾くか」



「そうだね。あれは覚えてるよ」



 と、夏の定番曲『夏休み』を僕のアルペジオから弾いて始める。ゆったりした一音ずつでヘタったらすごくカッコ悪いので慎重に。そして緊張が明けたイントロで、僕と蘭子の激しく刻むようなストロークが始まり、一気にロック感が増す。



「君のー髪のーあっ、間違えた」



「間違えるな」



「ごめんーなさいー」



「歌に乗せるな……」



 と怒ってるようで、笑っている蘭子。出会った当初に比べてとても表情豊か。とても可愛い。あっ、また間違えた。睨まれる。舌を出しておく。やれやれと首を振りつつも、しっかりとベースは合わせてくる。器用な子だ。



 仄香が居ない分、ドラムソロだけが気になる。しかし、僕は即興で穴埋めなんて出来るわけがない! うんうんとかいやいやとか、首を振って出来ないアピール。すると、蘭子がやれやれしながら、叩くようなスラップベースのフレーズを編み出して、それっぽく繋げてくれたのだ……。ああ、最高にクール。僕の嫁。



「打ち上ーげーはーなーぁーびぃー」



 と、色々グダグダしたり誤魔化したりしつつ、最後まで弾き終えた僕らであった。やっぱり楽しいしメロディーも歌詞も良い曲だ。



「この曲って不思議だよな。女性ボーカルだが、歌詞の相手は彼女だ」



「そうだね」



「甘酸っぱい少年心を描いている……と捉えるのが普通だろうが、ここは、主人公を女と見たらどうだろう……途端に百合曲になってこないか?」



「お、おお……? そうだね……っ!」



「都合よく、歌詞の主人公は一人称を言っていない。まあ僕と言っていても、百合葉みたいな僕っ子としても見れるがな」



「な、なるほど……。あえて一人称は隠してるのか……。確かにそんな解釈も出来る……」



「そして、サビで繰り返される『遠い夢の中』。恋が叶わなかった。とても、百合映えするよな……?」



「えっ!? つまりこの曲は百合曲!?」



「だからそうだと言ってるだろうが」



「それは蘭子の解釈だってー! あーでも百合曲として見るとめっちゃ印象変わるなー! あー泣けるわー! 次から泣きながら演奏しよかっなーっ!」



「百合視点になった途端に泣くんじゃない……原曲に失礼だろう……」



「いや元々泣ける歌詞だと思ってたよ! でも夏の百合曲かー! そりゃあ周りの目を気にするよなー! 好きだって事が言えなかったよなー! あーっ!」



「うるさいぞ百合葉。ギターよりうるさい」



「ジャカジャンジャカジャンジャカジャンジャカジャン!」



「仄香みたいになるなっ」



 と、家だからって、自由になってしまう僕なのであった。

さて、最近は毎回お久しぶりですねっ(汗)


小説で食ってけるようになりたいなーと毎日思いつつ、なんにも行動できないで居ます。せめて、毎日書いて稼ぐ未来に備えて、その日の思い付きネタで仕上げてみるかと思ったら、しっかりと百合にして三千文字出来てしまいました……。素質あるんじゃない?


思いついたのはベース指弾きの話だけ。そこからどうするかなーって書き進めるうちに、夏○りの曲に繋げて、終わりどうするかなーって思ってたら百合解釈のネタが突然浮かんだわけでした。


浅いオタクなので、歌詞解釈とかは考えない直感だけのタイプですが、夏祭○が百合曲だなんて、たまげたなぁ……()


小説サボって毎日絵を描きつつ、ベースをベンベン練習してます。メタルやジャズっぽいのは好きだけど、まだまだ初心者に毛が生えた程度。他楽器も似たようなモノなので、楽器知識など間違いがあったらご了承ご了承……ごりょうしゃくださいって日本語があるかと思ったら無かったです。ご容赦ください。

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