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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第3部一章「百合葉たちの繰り返す春」
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第29話「月がきれいだから」

「まさか屋根の上に登れるとは。人様の家だと流石の私でも気が引けるが」



「まあまあ。お母さん帰ってくるの遅いから大丈夫だよ」



「んっ? それはこのあとオーケーのサインか?」



「風情が無くなるからやめてよ……」



 月がライトのように煌々と夜を照らす下。屋根にクッションを敷いて、僕らは月見をしていた。ベランダと違って、空一面を月が照らす。その中で、月の明るさに負けないように星も瞬く。星見も好きだけど、やっぱり月見も好きだ。たまに朧げに雲に隠れるのも良い。月に照らされた雲もまた一興だ。



 と、持ってきた透明なカップに入れたジンジャエールを月にかざす。炭酸がはじけて光を浴びて。星が浮かび上がるみたい。



 無線のスピーカーからはゆったりしたピアノジャズが流れる。グラスではないけど飲み物片手に。すごく酔いしれる時間。僕はそのまま蘭子の肩に頭を預ける。蘭子はビックリして飲み物をこぼしそうになる。かわいい。



「ずいぶん優雅に過ごすもんだな」



「中学生の時は意味もなくこうしたもんだよ。音楽を聴きながらね。浸ってる、って気分が良いんだ」



「まさに中学生って感じだな。いや、今もか?」



「そうだね。今は、天体の知識がついた分、より色々と楽しめるようになったよ」



 言いつつ僕は真横の顔の、蘭子の方を見る。



「それに、隣にこんな素敵な子がいると特にね」



「ふんっ。どうせ、他の子たちにも同じような事を言うんだろう」



「そう拗ねないでよ。夜空を見る時間を楽しんでさ」



「それも……そうだな。百合葉の横は、私の特等席だ」



「今日は特別だよ」



 ジンジャーを飲む。口の中も、心も、静かなのにシュワシュワと弾むようだ。



「今日は満月でも無いのに、どうして誘ってくれたんだ?」



「んっ? 月がきれいだから。駄目?」



「なんだ告白か?」



「告白ならもう済んでるでしょ。僕は蘭子の事が大好きだよ」



「みんなに言っただろう。付き合えるのは良いが、ある意味でノーカウントだ」



「まあまあ。事実は変わらないし」



「この浮気女が」



「愛さえあれば関係ないでしょ?」



「またそんな事言って。いつか刺し殺されるなよ……?」



「そうならないように立ち回りたいねぇ」



「百合葉はたまにドジを踏むから心配だ。やはり監禁した方が良いだろうか」



「むしろそれ刺されそうだよ」



 過去のシャレにならない出来事も、今では笑い話。に、なれてると良いんだけど。



「綺麗な満月じゃないのが惜しいな」



「それもまた良いんだよ。綺麗だけど、ちょっと欠けてる。蘭子の魅力みたいだ」



「何が欠けてるって? パーフェクトな私だろう」



「ほら、綺麗でも欠点がある。薔薇みたいだ」



「それは褒め言葉だろう」



「そうだね。褒め言葉だね」



 欠けてる部分含め褒められてると感じるのだろうか。どれだけ自信があるんだか。



 そんな彼女だから好きなんだけど。ただ美しいだけじゃあつまらない。



「誘う相手がいっぱい居る中、一番に、私を誘ってくれたんだな」



「なんでかな。一番に、蘭子の顔が浮かんだんだ」



「それはつまり、私が一番って事でいいのか?」



「さあ、どうしてだろうね」

寝れなくて漫画を読んで居たら天体観測の話が出てきて、内容まったく関係ないけどこの話が浮かんですぐに書きました。


月を見る話は前にも書いてたよなぁ~って見返したら、3部第一章の13話でしたね……。2部の内容くらいなら時間経ってるし余裕と思っていれば、小説的にはちょっと前って言う……。


まあ、短編集だと思って読んでください(^ω^)


月がきれいで浮かんだのが蘭子の顔? なんでも何も、蘭子が先に月が綺麗だからってお風呂中の百合葉ちゃんに電話してたからじゃん! って心の中でツッコミました。


そういうグダグダ感含めて、こういう投稿サイトの醍醐味って事でひとつ(何がひとつ)

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