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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第3部一章「百合葉たちの繰り返す春」
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第08話「だし抜かれるのは」

 それはとある百合ハーレムな放課後の部室。パンッと机に投げ出されるトランプのカード。



「うわっ! また咲姫に出し抜かれた!」



「うふふ~まだまだねぇ~! さぁ~これで百合ちゃんの唇はわたしのモノよぉ~!」



「ふんっ。まだだ。まだ私の点数を越えていない」



「でもあと二回あるしぃっ! 二回ともわたしが大富豪になれば、蘭ちゃんに勝てちゃう~!」



 なんて、ポイント制で、蘭子と咲姫、そして僕が続く大富豪の結果。



 あとには、やはりというか、アホの子二人。譲羽と仄香が続いていた。この子たちがこれから勝つ見込みはないから、警戒はしなくて良さそうだ。



 しかし、最下位で負けた仄香はただキョトンとした顔をしていた。



「ゆーちゃんはさっきーにダシを抜かれたの? ゆーちゃんはさっきーにお料理されたのかーっ!」



「そうよぉ~ほのちゃん。具体的には、百合ちゃんのおっぱいの上にイチゴとホイップを乗せて食べたりぃ~!」



「咲姫待って!? そんな危ないプレイした事ない!」



 その絵面は美少女に似合わない気がするよ!?



「なんだと百合葉。じゃあ私はもっと激しいのを……百合葉をチョコレートフォンデュしていただくか」



「熱いっ! 蘭子それ絶対に熱いやつ! ってかフォンデュは無理でしょ!」



「風呂釜に丸ごと入れれば問題ない」



「フォンデュの規模がでかいな!」



 熱っ! てなって入れなさそうだけどねっ! いや、浴槽じゃなく、五右衛門風呂みたいにして薪の火でじわじわと溶かすのか……? いやいや、どっちにしろ熱いな!



「しかし、百合葉のダシを取るというのも捨てがたいな。チョコレート漬けが終わった後の風呂の残り湯を代用出来るか……。これは旨い味噌汁が出来るぞ……」



「普通にも何もないわアホかっ! お腹壊すわ!」



「百合葉、沸騰させれば問題ないのを知らないのか? ふふふ、百合葉もお馬鹿さんだなっ」



「バカはアンタだっ! 理系の癖にバカな事を言うんじゃない!」



 そんな事を言ったら、味噌汁は沸騰させればいつまでも腐らない事になっちゃうよ……。いや、そうなれば便利だけど!



 とお馬鹿なクソレズ蘭子ちゃんの相手をしていたら、ユズが何か考え事を……な、何を考えてるのかな……?



「お風呂のお湯……ダシ……。フヘヘ……。それで百合葉ちゃんに毎日美味しいダシのお味噌汁を飲ませてアゲルネ……」



「自分のダシを飲まないといけないの!?」



「チガウ。アタシのダシ、飲マセル。アナタの中、アタシの体液が巡ル」



「それも嫌だ!」



 あと体液は巡らないと思う!



 と、僕が強めにツッコんだから、ゆずりんは悲しそうな顔を……。



「ナンテ……。百合葉ちゃん……アタシのコト……キライ?」



 んあーっ! めんどかわいっ! この病みロリめんどかわいいっ!



「そんなワケないじゃん。僕はユズの作るご飯だったら、普通に毎日食べたいな」



「じゃあ、アタシ、作る。百合葉ちゃんはアタシに、あーんで食ベサセテ?」



「ふふふ。仕方がない子だなぁ」



 と、いつものように僕は譲羽を招いて、膝の上でヨシヨシ。僕は美少女好きの甘やかしたがり。彼女は甘えたがり。とても癒されるウィンウィンで良い関係だと思いました。



 しかしそこに……。



「いて……いでっ! いででっ!」



 お菓子の空箱を投げられ、椅子を思いっきり蹴られ、僕のわき腹をつつかれた! 集団リンチだ! イジメだっ!



「ゆっずりーん! 抜け駆けは駄目言うたでしょーっ!」



「百合葉、私も鬼じゃない。三秒待ってやる。その間に譲羽と離れられなければ……分かるな?」



「トランプが終わったら、百合ちゃんを椅子に縛り付ける遊びをしましょうねぇ~?」



「ちょっと待って! 罰ゲーム確定になってる!」



 仄香も咲姫も蘭子もお互いに牽制しあう影響なのか暴力的だぁ! とりあえず彼女らの怒りを冷まさせないと……。僕はユズと無言でアイコンタクトを取り、ほっぺにちゅっとキスをして膝から下ろした。よし、これで罰ゲームはないねっ! ん……? 三人の視線が痛く刺さるなぁ。



 そんな中で譲羽が、いつもの不気味で不器用な笑みを……いや、あざ笑うように口を開く。



「そもそも、みんなもゆーちゃんの膝の上に座ればイイノニ。ソレが出来ないのは、ドウシテ?」



「くっ……」



「今こんなにも自分の身長が縮めば良いと思った事はないわ……」



 思った以上に大ダメージを与えたみたい……ゆずりん、黒いぞっ!



「蘭子も咲姫も、出来ない事はないでしょ。ただ、ユズみたいに良い感じの小ささじゃないから、僕が甘やかすにはみんな身長がオーバーしてしまうだけで。小さくなくても、素敵な魅力満点だと思うよ?」



「それがな……」



「ちょっと、悔しいわね……」



「ぐぬぬ……。あたしだってゆーちゃんよりウーンと身長ちっちゃいのにー」



「仄香ちゃんは少し、身長伸びすぎたのがイケナイ……。胸は大きくナラナイのにね」



「ゆっずりーん!?」



 ゆずりん言うなぁ……。寮の相部屋暮らしの二人、まさかの仲間割れであった。これが胸囲の格差社会か……。



 ちなみに、仄香も女子高生としてはそこそこ小柄だし、なんなら華奢すぎて充分にロリの範疇だ。うっへっへ……合法百合ロリ最高だ……。違います! ロリコンじゃないです同い年です! 僕は大きい美少女も小さい美少女も分け隔てなく愛するだけの立派なレズです!



 そこで、訪れた沈黙。仄香が大きく咳払いして、机をバンバン叩く。



「はーい! 喧嘩やめやめー! あたし達はトランプ中なんだよー! ゲームは楽しくやりましょー」



「アンタ達が勝手に喧嘩してたんだけどね……。いて……いでっ! いででっ!」



 また僕はイジメられた。



 そもそも、ダシだの膝の上だのと話が逸れたけど、僕らはある賭けをして大富豪をしていた。



 その賭けというのは、ここにいるみんなの前で僕の唇にちゅっちゅ好き放題できるという権利だ……あれ? 僕自身の権利は? 鏡とちゅっちゅすればいいの? ナルシストなの? ナルシストだよ?



 イケメンな立ち振る舞いはまだまだ出来ない僕だけど、顔や声が好きと言われ、流石にちょっと自信も持ててきていたり。ただ、見た目好かれているという割には、みんな僕をイジりイジメるのが楽しそうに見えるけど……。僕はイジメられて喜ぶようなド変態じゃないんだけどなぁ。ただ、美少女たちの嫉妬が嬉しいだけで。ドMじゃないよ?



 なんだか焼きもち焼きな子たちで愛おしいなぁと見ていたら、むぅとムクれながらトランプをシャッフルする咲姫と目が合った。そんな姿も可愛いから微笑んだ。脚を蹴られた。おかしい!



 まあ、そんな巻き込まれた感を演出しても、結局は美少女たちに唇を狙われるのは嬉しい事であったり。ただ、素直に負けるのも面白くないから、僕も本気というワケだ。



 そう、百合ハーレムとは、ただ女の子たちとちゅっちゅすればいいのではなく、女の子たちに囲まれてみんなで楽しむ事が必須! みんなで! 百合百合楽しんでこそ! 百合ハーレム!



「百合ちゃん? 始まるわよぉ?」



「いたっ、ごめんごめん」



 またも咲姫に軽く痛めつけられる。流石に上靴のまま蹴るのは申し訳ないと思ったのか、いつの間にか蹴る足の感触がストッキングのサラサラした生地に。ただ、そそそそーっと僕の脚をのぼりあげてくるのは、ゾワゾワするのでやめて欲しい……。やめ、やめて……違うこれ痛めつけてるんじゃなくてそういうプレイだっ!



「咲姫っ! 足で太ももをさするのやめてね!? 変態じゃんっ!」



「あらっ? わたしは聞き分けの悪い百合ちゃんに少し躾をしてあげようと思ったんだけどぉ? まさかそんなのも、感じちゃってただなんてぇ~。とんだドスケベさんねぇ……。本格的に性欲をコントロールする躾が必要なのかしらぁ~」



「冤罪だっ!」



 しかも内容がエグい! 昔は純粋な王子王女ごっこだった筈なのに、いつの間にかSMプレイごっこになってる! 怖いっ!



 だが、そんなのもイチャツいて見えたのか、蘭子が机を蹴って牽制する。



「咲姫。早くしろ。ドスケベ百合葉に躾をするのは、大富豪に勝った者の特権だ」



「そんな話は聴いてないよ!? あとスケベはアンタらだっ!」



「しつけかぁー。そういうプレイもたまにはアリだねアリジェンヌ!」



「オーケージェンヌパリジェンヌ……。中世ヨーロッパ風の貴族衣装とか着せてシツケたら、ゲームにも合ってて、楽しそう……カモ……っ」



「それもイヤーッ!」



 そんな怖い特権……いや、罰ゲームを聴かされちゃあ、意地でも僕が勝たざるを得なくなったのでした。

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