第52話「一年生、最後の部室」
「いやぁー! 終業式っすよ終業式! やばない! やばあるね! やばあるよ!?」
「なんなのそのハイテンションな三段活用は……」
教室を去って部室に着くなり、仄香はダカダカと机を叩きながら移動する。いつにも増して変なテンションだ。
「というわけで! 今回のテーマはこれっ! 終業式!」
「今回はってなに?」
ホワイトボードに書いて、バンバンと叩く仄香。みんなも、その奇行に首を傾げて見守っている。
「な、なんかさー! あれよ! 終業式をテーマにボケるとか!」
「そういう遊びなの?」
テーマを決めて話す遊びもあったけど、でも、今日のテンションは妙だ。
「仄香、なんだかいつもより変だね。いや、いつも変だけどさ」
「ななな、今日はたまたまだしーッ! あっ、いつもって何さー!」
ツッコミのキレが無い。やっぱり仄香も……。
「仄香も、終業式で、なんか寂しくなったんだよね。分かるよ」
僕がそう言うと、彼女はゆっくり頷く。
「そうだよ……。みんなさー。別のクラスになるかもしれないじゃん。部活があるから、会えるけど、なんかもう、寂しいなぁーって。何か出来る事ないかなーって思ってるうちに、もう放課後になっちゃった」
「……だよね」
そう、クラスの子たちだけじゃない。この子たちとも、別のクラスになるかもしれないのだった。何人か固まればまだ良いけれど、完全にバラバラや、他が固まっても一人だけという可能性もある。そう考えると、僕も寂しいし、皆も寂しいはずだ。
「わたし、百合ちゃんと離れるの、いや。でも、みんなとも離れるのは……寂しいなぁ」
咲姫がポツリと言う?
「そうだな。百合葉といくら家でイチャつけると言っても、別のクラスは嫌だ」
「んっ? なんか同棲しているような話になってない?」
それとも毎日通うのだろうか。大変そうだなぁ。
「もちろん、ここのみんなと離れるのも、嫌だ。やっぱり、同じクラスで、同じ勉強を共有したい」
「僕もそう思うよ。寂しいのは分かる。でも、もし離れてたって、この部活があるからさ……」
蘭子の言葉に共感する僕。いつも一緒に行動するのは、たまに息苦しく感じる。でもやっぱり、同じ学校生活を共有したい。
そこに、ずっと黙っていた譲羽が手を上げる。
「アタシがお母さんに言っとくから……ダイジョウブ……かも」
……。
「えぇー!」
なんて。見事、間を空けたリアクションを僕と仄香と咲姫が。蘭子も顔を上げて譲羽を見ている。
「ユズ、そ、そんな事できるの!?」
「たぶん……。元々うちのクラスだってかなり偏りがあるらしいし……。やっぱりみんな、一緒が良い……し」
「そっ……かぁ……!」
不器用に笑う彼女。ああ、心配して損した。ぐっと僕は張っていた肩を下ろし、安堵の息をつく。
だがそこに、机をダカダカダカダカダンッとリズミカルに叩く子が。
「しかーっし! 一年生というフレッシュでスタートネスな楽しい一年が終わってしまったのは事実! 来年は一体どうすればいいんだぁ……っ!」
「ノリで言ってない?」
なんとなく分かるけどね。一年生が楽しかったとは言え、来年も楽しいとは限らない。ネガティブが根っこにあると、少し不安になる。
「それでも、負けるわけには行かなかった……! あたし達の青春はこれからだ!」
「何その唐突な少年マンガの打ち切りエンドみたいなの……!」
完全にノリで喋る仄香ちゃんであった。
「そうねぇ~。来年はもっともぉ~っと楽しみましょうねぇ~。ねっ? 百合ちゃん?」
「ふんっ。咲姫は力ずくでも、百合葉と別のクラスにしてやるがな」
「あらぁ? みんな一緒が良いっていうユズちゃんの気持ちをないがしろにするって言うのぉ~? 思いやりもない冷たい女ぁ~。アナタみたいな悪役は、だいたい痛い目を見るから、一人ぼっちになるんじゃなぁい? 哀れねぇ~」
「くっ……。譲羽を出すとは卑怯な……。姫様の口の悪さもどうかと思うが、特別に、咲姫も百合葉と同じクラスとして認めてやる」
「蘭子の許可ではなくない?」
あとユズって伝家の宝刀か何かなの? ロリっ子過ぎて、みんな目を離せない甘やかしタイプなのは分かるけど。
すると、その譲羽は、二人の喧嘩が収まったのを見てピース。やはりこのロリ、自分の属性を理解しているな……っ。良いと思います!
そうして、僕らの一年生生活は幕を閉じたのであった。
大変にお疲れさまでした~!
とりあえず、別タイトルに以降した場合ここで終わっても問題ないように、打ち切りエンドにしました!(ちがう)
全部で百万文字超、ラノベ一冊が15万文字くらいと思えば、6冊前後……。読んでくださった皆さんも、ありがとうございました。
次回からは日常感を強めて自由気ままに書きたいのですが、やっぱり新しくするか、このタイトルで続けるか迷ってます。
新しいタイトル付けるかな~。




