第42話「雪山のホテル」
バスを降りて、その白さに目を奪われる。この奪われるというのは、物理的に視界が奪われるような感じ。真っ白過ぎて眩しいのだ。雪国の冬の晴れた日あるあるだけど、ここまで雪一色だと眩しさが段違いだ。
でも、青空に真っ白のゲレンデ。確かに、心を奪われる意味でも間違ってない。
僕らは、目の前にスキーリフトと雪の斜面を抱えた、雪山のホテルに着いたのだった。
ホテルから出たらすぐにスキーが出来る。そんな場所。対して歩かなくてもリフトに乗れるのがすごく便利。スキー板でパタパタ滑るのめっちゃダルいからね。下手ではないけど、やっぱりすぐに滑れる道に行きたい。
やがて、目が慣れていき、その圧倒的な景色をより深く見渡せるようになった。
「ああすごく良い天気。綺麗な景色だね」
「そうねぇ……。うっとりしちゃう」
そんな咲姫の顔を見る。綺麗な瞳に青空と雪景色が映っている。
「でも、咲姫の方がもっと綺麗だね……僕の心が溶かされてしまいそう」
「んもうっ。百合ちゃんったら」
なんて、口説いてたら、蘭子がわざとらしく三回咳払いする。
「百合葉、今夜はこのゲレンデを溶かし尽くすくらいに愛し合おうな?」
「なんなの? 咲姫が居るのにおっぱじめるの? そんなつもりないよ?」
「んっ? 咲姫って誰だ? 私たちは二人部屋だよな?」
「ちがいますぅ~。百合ちゃんはわたしとの二人部屋ですぅ~。アナタこそ何者なのぉ~?」
「私は百合葉の恋人で将来を約束したパートナーだ。君は一人寂しい失恋旅行で来た観光客かな? よろしく。邪魔をしないでくれ」
「百合ちゃんたいへ~んっ。蘭ちゃんったら記憶喪失になっちゃったみたいなのぉ。先生に言って病院に連れて行ってもらいましょ? そしたら二人部屋よねぇ~。夜通しで衣服を脱ぎたくなるくらいの熱いキスをしましょ?」
「ゲレンデを溶かす事も出来ないだなんて、まるでマッチ棒の先みたいな小さな愛だな」
「あら、わたしたちの間だけ燃え盛っていれば良いのよ? 蘭ちゃんはその妄想力を生かして、一人で雪山を溶かして回ったら? 明日には春が来る事を期待してるわぁ~」
なんて、嫌み口撃の嵐。よくこんなに嫌みを言えるもんだと、ちょっと尊敬する。
「まあまあ二人とも。僕は二人と一緒の部屋でとても嬉しいよ。普通に三人で楽しもうよ」
「わたしは二人切りが良かったなぁ~。特に蘭ちゃんと一緒とかぁ~?」
「なんだ? じゃあ二人で出来ないような過激な3Pをお見舞いしてやろう。それで咲姫を果てさせた後に、百合葉を存分に抱いてやる」
「誰が抱かせてやるもんですか。蘭ちゃんにはしばらくトイレを貸してあげるから、そこで満足しててねぇ?」
「じゃあ私はトイレで百合葉とイケないプレイでもするか。良かったな咲姫。三人部屋を一人で贅沢に使えるぞ? ソロプレイはバッチリだな」
「大女じゃトイレに二人も入れないんじゃない? 無駄に成長し過ぎちゃうなんて哀れねぇ~」
「百合葉に揉ませる胸すらないド貧乳女に言われたくはないが、まな板は料理には役立ちそうだな。女体盛りくらいには役立ててやる」
「まな板じゃ無いから出来ないわよ残念でした~。それならわたしは百合ちゃんと大女のプリンを頂こうかしらねぇ~。イチゴにホイップにチョコソース~。楽しみねぇ百合ちゃん」
「僕は性的な事はなんにもしないよ……。普通にお喋りして楽しもうよ……」
咲姫も大概だけど、蘭子もなかなかの言い草だった。でも、僕を愛するあまりと考えたら、やっぱりこの喧嘩ップルも仲良しに思える。
ってか最終的に3Pになってるよ咲姫ちゃん?
たださ……ホテル前で下ネタ連打はやめてっ!
今回のスキー旅行編ですが、実は予定だけあって内容はなんにも決まっていませんでした。
みんなで滑ってるシーンがあるくらい……それも全然イメージ沸いてない……。
でも、書き始めたら案外書けるモノで、私の大好きな咲姫ちゃんと蘭子ちゃんの口げんか(オイ)も書けて満足ですっ。
次回分は決まってはいるけど、それ以降はどうなるかなー。
無事に書けると良いですねっ(他人事)




