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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部一章「百合葉の美少女集め」
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第17話「サプライズ?」

「やべーわー。こりゃあ明日の補習もヨユーっしょ!」



「そんな、すぐ調子に乗ってー」



 仄香ほのかの頭を小突く。



「えへへぇ」



「褒めてないよ?」



「うぇーっ!?」



 大袈裟にリアクションを取る彼女。完全にノリが芸人か何かだ。



 僕らが図書館での勉強を終えた頃には、黄色がかっていた西日もついには赤みを深め、すっかり夕方らしい茜空が姿を見せていた。



 誰もいない廊下。図書室を後にした僕らの影が、ゆらゆらと重なり長く伸びている。



「基礎はたくさん教えたから、明日の補習は大丈夫なんじゃなぁ~い?」



 咲姫さきが仄香と譲羽ゆずりはに微笑みかける。



「うん、ありが……トウ」



「明日は一緒にがんばろーねーゆずりーん!」



「うんっ」



 「えいえいおー!」と仄香が両手をあげ、おずおずと譲羽はそれを真似て片手の拳を上げる。うむうむ、仲良きかな。



 当初、不安要素はたくさんあったけど、なんだかんだ実力試験の内容は理解出来る程度には達し、残るは本人達の頑張り次第――という具合まで上り詰めた。"やれば出来る子"みたいだ。



 コツコツタタッと、僕らそれぞれの足音が夕紅ゆうくれないの校舎に響く。



 さて……。一緒に帰りたいけど……ね。



「ちょっとみんなっ」



 皆が一様に階段を降りようと向かう中、僕は先へ進もうとする三人へ声を掛ける。



「どったの? ゆーちゃん」



「何か忘れ物ぉ~?」



 察しが良いな姫様。しかし、忘れ"物"ではないんだ。



「僕、ちょっと用事思い出したから、みんな先に帰ってて? 長くなるかもだから」



「えーっ!? ってもまあ、あたし寮生だからすぐそこで別れるしねぇー。いいぞよー」



「ウン」



 仄香は了解っと、そして譲羽も頷いて同意を示してくれた。ここまでは問題ない。



 あとは……。



「ほんとー? じゃあわたしは待ってるねぇ」



 やっぱり……。



 ふと思ったのだけれど、何かしら咲姫を遠ざける理由が無ければ、彼女はどこまでも着いて来るよなぁ、多分。もう親友感覚なのか、はたまた……。



「ごめんねー。遅くなるかもだから、咲姫には早く帰って欲しいんだー」



 そう言って、一緒に居てはマズい事情を知られぬよう言い訳作り。



「ううん? むしろ今だって暗いからぁ、いっしょに帰りたいなぁ~って!」



 おおうっ! 胸が! きゅんて! すごい可愛いんだけど待って待って! 



 僕の言い訳を潰しに掛かってきたのである。うむぅ、どうするか……。これからの百合ハーレム計画が悟られぬように、少しでも不安の種は潰しておきたいのだが。



 よし、まあ仕方ないだろう。



「分かった、それなら二人だけお先にばいばいだねー」



 「じゃあねー」と、先行していた仄香と譲羽に手を振る。



「おっけー。またあしたぞよー!」



「ばい、ばい……」



 語尾にぞよを付けるのがマイブームなのか、その場のノリなのか、妙なテンションの仄香とぎこちない譲羽が小さく別れを告げる。うん、こっちは素直だ。



「ばいばぁ~い」



 さて、残る姫様は……。



「で、なんの用があるのぉ?」



 それを言いたくないんだなぁ……。内容はともかく、これから小芝居を打ちに行くのだから、あまり疑問に持たれちゃあ駄目なんだ。



 さて、落ち着いて僕。ポーカーフェイスだ。嘘をくワケじゃないんだし、クールに。



「咲姫。落ち着いて聴いてね?」



「う、うん」



 落ち着くのは僕の方なんだけどね。彼女の両肩を掴み真剣に見つめる。おっ、ちょっと赤くなった。やはり脈があるかもしれない。



「僕は今から、咲姫のために、やらなくちゃあいけないことが……あるんだ」



「わ、わたしのため?」



「そう」



 僕が頷くと逡巡するように視線を外す咲姫。



「それって、わたしが知っちゃあ駄目なの?」



「うーん、あまりよくないね」



 そして彼女は「うーん」と再び考える。咲姫のためであり本人に知られたくないこと。この二つが揃うだけで察しの良い彼女なら――。



「……そっかぁ。それなら仕方ないわねぇ」



 折れてくれるのだった。



「ありがと」



「うぅ~うんっ? こちらこそよぉ~」



 多分サプライズだと気付いてくれたのだろう。計画は少し変更になるけど、ついでに彼女を喜ばせられるのならばむしろウェルカムだ。サプライズの一環ということにしてしまおう。



「ごめんね、遅い時間に送ってあげられなくって」



「大丈夫よぉ~。百合ちゃんがそこまで言うなら……ねっ!」



 咲姫は星の飛びそうなウィンクをする。ああ可愛い、結婚したい。



「それじゃ、僕は行くから、気を付けて帰ってね?」



「うんっ!」



 僕が手を振ると咲姫も大きく腕を振る。満面の笑み。元気な返事。よし、これで問題無いだろう。



 「るんるるんるるんっ」と咲姫は階段を下っていく……実際に口に出しちゃうあたり可愛すぎない?



「さて、上手くいくといいけれど」



 彼女が踊場を抜けた辺りで独り呟く。実際にはそんなに気を張る心配なんて無いかもしれないけど、これから行う計画は、僕の百合ハーレム計画が掛かっていると言っても過言じゃないんだ。



 どうか、素敵なプレゼントを送ってあげれますように。



 そう心に決め、僕は職員室へと向かうのだった。

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