準備も大詰め
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怖い推測が浮かんだところで、すぐに対処できるかって言うと無理。
ルマーニュ王国に骨があることを前提として動くのであれば、ニルスさんの持って来た情報を盾に、ルマーニュ王国に解呪や他国からの医療支援を受け入れさせるべきなんだ。
けど周辺諸国にもこの病が呪いを付与した兵器であることは内々に伝えていて、ルマーニュ王国包囲網を形成してるんだよね。その周辺諸国にも事情を計らないといけないわけよ。
そっちに関しては皇帝陛下や宰相閣下、ロートリンゲン家、獅子王家、他にもシュタ何とか家以外の大きな家が協力して交渉やらなんやらに当たることになったそうな。
現行一番に上がって来た案が、ルマーニュ王国にロックダウンさせつつ、マグメル大聖堂の聖歌を聞かせ、更に楼蘭の巫女さん・司祭さんの投入ってやつ。つまり帝国の提示した基礎的対応をやらせる。
だけど蓄積された呪いに対してはマグメルだけでどうにもならんだろう。そういう予測も出てまして。
「最終、ルマーニュ王国にほど近い場所で菊乃井歌劇団の公演をやれ……と?」
「ああ。あまりにも呪いが強固になりすぎていると、マグメルの聖歌も楼蘭の巫女や司祭の存在も焼け石に水にしかならない」
統理殿下の眉間に凄い大きなシワが出来ていた。
各国の名だたる宮廷魔術師達に協力してもらい、私の全力の神聖魔術を更に強化してルマーニュ王国全体にぶつける。そういう案が出ているそうな。無茶言うなぁ……。
これ何が無茶って。
「ルマーニュ王国が、それを飲むと思います?」
ジト目で統理殿下やシオン殿下に問うと、さっと目を逸らす。ニルスさんですら遠い目だよ。まあ、つまり、無理じゃねっていう?
かといって無闇にルマーニュ王国の公爵家が件の病を流行らせたなんて公表したら、それこそルマーニュ王国が終わる。戦争をこっちが望まなくても、まずルマーニュ王国が内戦に突入するだろう。革命かクーデターかは知らんが。
そして内戦に参加しない・出来ない者達が難民あるいは亡命者とかす。行先は一番近い帝国か、宗教国楼蘭か、商業都市国家で平民でもそこそこ稼げるシェヘラザードか。いずれにせよルマーニュ王国だけの話で終わらない。
某公爵家は潰す。国王も禅譲で違う王朝にシフト。
だけどここであまりにも厳しい処分を望み過ぎると、象牙の斜塔はもっと厳しい処分を科される。だって学長が件の病を売り込んだわけだし、その時点で戦争を誘発しようとしていたようなものだから。
最悪、象牙の斜塔は更地になる。
この学長達に対抗すべく、大根先生と美奈子先生の学派が立ち上がり、丁度人口増加に伴う疫病の発生予防を研究していた私に協力して、疑似エリクサー飴と防疫対策を講じたっていうシナリオが出来ていたとしても、だ。
頭が痛い。
しかし、だ。菊乃井でどれだけ頭を悩ませていても、現行で出来ることはない。なので、確実に出来ることがある方に全振りしよう。
というわけで二日。
浩然さんとモトおじいさんがやってくれました! 拍手!
「いやー、楽しかね! 空飛びクジラの長老の骨は、硬い癖にしなやかで加工しやすいうえに付与魔術の定着もスムーズときたもん! おまけに骨格全て残っとったけん、胸部や翼、尻尾の保護パーツとして、見た目のインパクトも残しつつ軽くて丈夫な鎧に出来たばい。嬢ちゃんのほうも、ミスリルベースに骨の持つ魔力と賢者の石の原石を混ぜて作ってみたじぇ!」
「もうお師匠さんの加工技術と魔力抽出技術の凄いこと! 奏君と紡君の魔力で作った炉も、凄く優秀だったけど!」
二人してめっちゃ早口だった。しかもモトおじいさんはほぼワンブレス。手に手を取って「ウェーイ!」って感じで、出来栄えの良さを教えてくれる。
身に付けたノエくんによると、胸部の鎧は重さを感じさせないのにしっかりと守られている感があり、四枚の羽根の骨格を守るようなパーツも軽くて飛行の邪魔になることはない。尻尾にも空飛びクジラの背から尾の骨とミスリルを使ったガードが付くんだけど、防御力だけじゃなく叩きつけたときに破壊力が出る工夫がされていて、いざというときに武器になる工夫が施されているそうな。
識さんの方も、彼女は魔術師なので魔力を高めたり量を回復したりできるような工夫が施されているとか。でもそれだけじゃなく、モトおじいさんがミスリルと賢者の石の原石で作ったバングルに、私が防御障壁を作る魔術を付与。これによってバングルに魔力を供給し続ける限り、不壊の防御障壁を展開し続けられる。つまり物理攻撃の無効化が出来るわけだ。
オマケに装備の下に着る服には、二人とも私とナジェズダさんが色んな効果のある刺繍を施してあるし。
「恐れ戦くがいい……!」
久々に全力で凝った刺繍を沢山施せたお蔭で、私のテンションもかなり上がっていた。そんなわけでこういうセリフが出てきたんだけど、統理殿下が顔を引きつらせる。
「……これ、絵面だけ見たら俺達の方が悪のなんとかでは?」
「いけません兄上、それ以上はいけません!」
そこの兄弟、聞こえてるぞ?
振り返ると、皇子殿下方がそっと目を逸らす。
書斎兼執務室の本棚を引っ繰り返して見つけて来た地図を見つつ、ペンを走らせていた奏くんが顔を上げた。
「うーん、地図だと実際の地形が分かんねぇな。ドラリーチェ山の火口にいるんだろ? 足場になるようなところがあるんだよな?」
「母さんがあるって言ってた。自分はそこで援護して、父さんが破壊神と空中戦してたって」
奏くんの疑問に、ノエくんが答える。
鎧はもう外してあって、実際付けて動いてみたところにはかなりいい感じらしい。
識さんが顎に手をやった。
「私は飛べるからあんまり考えてなかったけど、足場はいるもんね」
「俺達は空を飛べないからな。いざとなれば鳳蝶の重力魔術で縫い留めることも考えるか?」
「はね、もいじゃうのはだめですか?」
「羽根を捥ぐにしても、地面にいてくれる方が助かるよね」
統理殿下の言葉にレグルスくんがこてりと首を傾げる。それにシオン殿下が答えると、レグルスくんも奏くんも、お兄ちゃんの傍でメモを整理していた紡くんも「それはそう」と頷いた。
「私が空から堕として、タラちゃんに糸で縫い留めてもらう手もありますけど」
「いずれにせよ、広い足場があれば楽に戦えますね。とはいえ君達は、あまり困りはしないでしょうが」
「だよねー。あーたんはプシュケあるから、何なら山の麓にいても大丈夫だし」
「ひよこちゃんもカナツムも殿下方も遠距離攻撃できるしね」
先生達の話に全員で頷く。足場が狭くても攻撃手段がないわけでもない。
だけど本当なら空飛ぶ城でドラリーチェ山に乗りつけたいところではあるんだ。なにせあのお城、国崩しが出来るような魔導砲あるし。一発ぶち込めば話は簡単だけど、それをするとマルフィーザの地形が変わる。それは大変よろしくない。
紡くんのメモ作りを手伝うニルスさんが、ふっと真顔になった。
「あの、僕はどこにいたらいいんでしょう?」
「ああ、そうですね……」
先生達と行動を共にしてもらえばいいかな?
そういう前に、ラーラさんが口の端をゆったりと上げた。
「君はボクらと後方にいればいいよ。誰がどういう意図で何をしているか、きちんと解説してあげよう」
「記録に残すなら、そういうのも残さないとね」
「そうですね。その資料を基に鳳蝶君のお友達が物語を書いてくれるかも知れませんから」
「は、はひ……」
きらっと輝く笑顔のエルフ先生達の圧に押されて、ニルスさんのほっぺが赤くなる。
そうか、これも一つの英雄譚なんだな。
これ、ノアさんとアルマンさんにぶん投げてみようか?
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