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白豚貴族だったどうしようもない私に前世の記憶が生えた件 (書籍:白豚貴族ですが前世の記憶が生えたのでひよこな弟育てます)  作者: やしろ


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某カラクリ装置式運命連鎖

いつも感想などなどありがとうございます。

大変励みになっております。

次回の更新は、11/28です。

 暫く経ってニルスさんとお爺さん……ニルスさんの爺やでアルバートというそうな……の体調が良くなったとのことで、二人は宿屋まで送って行ってくれるというエイルさんの申し出を断って、馬車を降りて行った。

 熱中症っていうのは良くなったと思っても油断しちゃ駄目だ。

 それを私が言ったところで今のニルスさん達が受け止めてくれるか解らない。けど、エイルさんが物凄い勢いでこの辺りに伝わる対処法を教えていたので大丈夫だろう。

 去っていく二人を見送って、私達も散策がてら今日のお宿に行くことにして。

 エイルさんとのお別れの前に、口にしたのは何となく。

 手がかりが掴めればいいと思って、尋ねてみたのだ。


「あの、マルフィーザのあたりって魔女や魔術師狩りが大昔にあったんですよね? それに巻き込まれたお医者や薬師の一族がいるって聞いたんですけど……」


 何かご存じありませんか?

 そう続けるつもりだったんだけど、エイルさんの表情が見る間に変っていく。

 警戒、通り越して、何か聞いてはいけないものに触れたような。

 驚く前に、ロマノフ先生がにこやかに手を振った。


「いえね、歴史の勉強の一環でこちらの大陸史を今教えているんです。そこで私達エルフ族に伝わる伝承のようなものを話したんですけど……」

「あ、ああ、そうなのかい。いや、あたいも詳しく知ってるわけじゃないけど、あたいらの集落ではまだ色々伝説が残っててね。そりゃむごい話ばっかりだから……」


 なるほど。

 イゴール様もお怒りが持続するぐらい酷いことがあったみたいだな。

 エイルさんの反応は、現地の人が知る迫害の事実の凄まじさというやつなんだろう。


「ああ、申し訳ないです。興味本位で知ろうとしたわけじゃなくて……」


 素直に頭を下げると、エイルさんが苦笑いする。

 集落のお年寄から代々伝わる迫害の話は相当酷いものだそうで、関係がないエイルさんですら聞かされた時は怯えて眠れなくなるほどだったとか。

 過ちを繰り返さないためにも、なにがどう行われ、どう終息していったのか。そして歴史の中で迫害されて人々が、何処に行ったのか。

 そういったことを学ぶのは大事なことなのだ。

 ロマノフ先生やヴィクトルさん、ラーラさんがエイルさんへと伝えれば、彼女も苦笑いのまま頷いてくれて。


「本当にごめんよ、過剰反応しちまってさ。お詫びって言っちゃなんだけど、いいこと教えてあげるよ」

「いいこと?」

「なぁに?」


 レグルスくんと紡くんがこてっと小首を傾げる。

 エイルさんは顎を擦ってにやっと口の端を上げた。


「お伽噺だけどね。昔々の、それこそ魔女狩り魔術師狩りが起こる前、この大陸はドラゴニュートに支配されてたんだってさ。それでね、ルッジェーロ山の洞窟の一つに、ドラゴニュートが描いた洞窟画ってのが残ってるんだ。たしか、破壊の神がどうのって内容だったかな。近付けそうなら見ていきなよ」

「!?」


 ぞわっと鳥肌が立つ。

 悪い予感とかじゃなく、掴めたっていう感覚だ。

 目を丸くした私達の反応を、与えられた情報への驚愕だと受け取ったのか、エイルさんがニンマリとしたまま話を続ける。

 彼女も詳しい内容は人から聞いただけだからよく覚えていないそうだけど、その洞窟画の内容はドラゴニュートのいう破壊の神が生まれ、そして勇者に封印されるまでを描いたものだそうな。

 一応文字らしき物も壁画には書いてあるそうなんだけど、解読が出来ないでいるとか。

 そう言えばノエくんは現在使われている共通文字はあまり読み書きできなかったけど、神聖文字は流暢だったな。

 そういうことかと尋ねてみると、ちょっと違うらしい。


「うちの婆様がいうには、アレは神聖文字じゃない何か別の文字らしいよ」

「へぇ、そうなんですね」

「うん。学者連中も最初は神聖文字だと思ってたらしいけど、それにしちゃ単語にもなんない文字の羅列らしくてさ」


 エイルさんの話に聞き入っていた紡くんが、勢いよく手を上げた。


「おもしろそう! つむ、それ、みてみたい!」

「そうだなぁ、おれもみたいな! えもきになるし!」


 レグルスくんもワクワクしているようで、おめめがキラキラだ。

 そんな二人の様子に奏くんが私の肘を、つんつんと突く。これはアレだ「行くよな?」っていう合図。行くに決まってんじゃん!

 期待を込めて先生達を見れば、三人とも笑ってる。


「ぜひ行きたいです! その洞窟、ルッジェーロ山のどのあたりでしょう!?」

「あー……たしか五合目だね。あたいら普通の人間が行けるギリギリだ。それより上は危ないからさ」

「強い魔物が多いんですよね?」

「それもあるけど、まあ、他にもあって。だけど五合目までは本当に安全なんだ」


 何か解かる。

 おそらく五合目まではラナーさんのお母様が魔物を統率して、行かせないようにしてたからだろう。亡くなって十年くらいならまだドラゴンの魔力が残っているから、それが他のモンスターに重くのしかかってまだ五合目よりは下に行けないようにしているのだ。

 菊乃井の周辺も、恐らくそんな感じになっている。

 それはラナーさんの存在じゃなく、主にタラちゃん。タラちゃんは私に付き合って色々やってるせいか、菊乃井近隣のモンスターの女王様って感じになりつつあるらしい。

 そんでもタラちゃんは菊乃井家動物ヒエラルキーの頂点はポニ子さんとしているので、実質菊乃井の動物の女王様はポニ子さんだったりする。

 私? 私はマンドラゴラ村の名誉村長で、ポニ子さんのご主人様で、蜘蛛族のボスで、菊乃井の人間で一番偉い人って扱い。間違ってはない。

 このプレッシャーというか威圧感というかで、菊乃井の街道は結構平和なんだそうな。まさか人間だけじゃなく、魔物からも怖がられるとはね……。

 最初にラシードさんからそういう話を聞かされた時は、死んだ魚の目になったわ。

 それはいい。

 ここでドラゴニュートの破壊神についての有力な情報が得られるとは思っていなかったから凄くありがたい。

 破壊神の成り立ちを知ることで、持ち得る身体能力や魔力、使える魔術なんかを想定できる。それに封印の場所が特定できれば地形を考えた作戦を練ることも可能だ。

 得た情報、推測し得る情報、そういった物を揃えれば、ノエくんや識さんに必要な防具や魔道具も揃えられるしね。

 初手からルマーニュ王国の貴族に出会うなんてハプニングはあった物の、ドラゴニュートの破壊神の情報を得ることが出来たんだからお釣りがくる。

 このお礼はいかに。

 とはいえ、お礼のお礼って変だ。

 それに短い会話だけど、その中で見えたエイルさんの御気性だとそんな物は受け取ってくれないだろう。

 ならば。

 私が名を呼べば、ござる丸は心得たとばかりに、ご自慢の長い葉っぱを一枚ぶちっと引きちぎった。

 それを渡されたレグルスくんが、にこっと笑顔でエイルさんに差し出す。


「今日の得難い学びの記念です、受け取ってください」

「どうぞ、エイルおねえさん」

「や、でも、これ……!」


 マンドラゴラの薬効の高さはどこの国にも知れ渡っている。

 エイルさんも知っているようでブンブンと首を横に振った。


「もらえないよ、こんな高価なもの……!」

「腕の良い薬師か錬金術師でもいなければ、本来の価値を十全に発揮できません。その葉を磨り潰した物を水に溶かせば風邪薬には使えそうという程度ですから」


 なおも遠慮するエイルさんに、ヴィクトルさんが声をかけた。


「マンドラゴラの葉っぱは千切っちゃったら価値が低くなるからね。君から教えてもらった情報をギルドで聞いたら、恐らくそっちの方が高価だよ。受け取ってやってよ」

「そうだね。外国の冒険者には情報を出し惜しみするところもあるし、この子貴族だからってぼったくりにあう可能性も無きにしもあらずだし」

「というわけで、教え子の気持ちを受けとってくださるとありがたいんですが」


 あとを継いだラーラさんやロマノフ先生の笑顔の圧が強い。

 信じられない美形の微笑みを間近で浴びたエイルさんが、顔を真っ赤に染め上げる。


「わ、解ったよ! これはうちの年寄り連中に使わせてもらうよ、ありがと!」

「はい、こちらこそ」


 いい出会いに感謝だ。

お読みいただいてありがとうございました。

感想などなどいただけましたら幸いです。

活動報告にも色々書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。

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― 新着の感想 ―
これはもうアレだよね。 エイルお姉さん達が尋ね人の本命大当たり〜。 さすがはまんまるちゃん、初手から『持ってるわぁ』感が全開ですね。 これで御姐さんの双子出産も安心だな。
何て素敵な♪タ♪ラ♪イ♪チwww そしてオネイサンが件のお探ししてた放浪の方々であって欲しさがヒシヒシと…
クリティカルヒットな情報キタ!!!!!! もし可能ならアゲハ君(漢字変換出来なかった)をはじめとしたチミっ子達のステータスをまとめたページを作っていただけると夫に解説という名の布教がしやすいのでお願…
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