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白豚貴族だったどうしようもない私に前世の記憶が生えた件 (書籍:白豚貴族ですが前世の記憶が生えたのでひよこな弟育てます)  作者: やしろ


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根回しは大事、色んな意味で

いつも感想などなどありがとうございます。

大変励みになっております。

次回の更新は、7/14です。

「いろんなかみさまからおそわったんです!」


 レグルスくんの朗らかな声に、ほわっと周囲が和む。

 アレから数日……というか、帝都に空飛ぶ城を移動させる前日。

 私とレグルスくんは帝都の梅渓宰相閣下のお屋敷にお邪魔していた。

 何故か?

 それは菊乃井家で行われる「お食事会」の招待状をお渡ししに伺わせていただいたのだ。

 それだけじゃなく、獅子王閣下も梅渓邸にいらして。

 乙女閣下にも招待状をお渡しして、食事会でお出しする料理の概要を説明。するとやっぱり異世界のメニューに近い物が菊乃井で出ていた話になったんだよね。

 料理長にも菫子さんにもした説明を、レグルスくんが宰相閣下と乙女閣下にしてくれたのだ。


「百華公主様かい?」

「はい。姫君様ご自身は食にあまり興味を抱く方ではないのですが、人間に少し目こぼししてくださるとのことで、衣食住に関する知識をお与えくださるというか。なので他の神様方もそういう感じで」

「なるほど。そういえば当家で預かってる次男坊君もそんなことを言ってたな」

「そうなんですね……」


 どうやら次男坊さんも前世の知識があることを明かしてはいないらしい。まあ、そうだよねー……。

 でもカレー粉やトンカツ、タコ焼きの説明はそれで済んだけど、出汁蒸し卵こと茶碗蒸しはちょっと苦慮した。アレは現行料理長の考え出したレシピってことになってるから。

 だから料理長には「姫君様は『異世界に玉子を使った、菓子でもなく甘くもない料理があるぞ』と謎かけされた」とだけ。

 正解は知らないから、料理長の作った物が茶碗蒸しかどうかも分からなかった。

 その説明で一応信じてくれたし、答え合わせは出来たとして納得してもらえたんだよね。良かった。

 最初に嘘を吐いてしまったのが、こんなにも尾を引く。身をもって知っているのは、私も次男坊さんも同じなんだろう。

 それは置くとして。

 何で帝都に城を移動させる前日に、梅渓邸に来ているか。呼ばれたからさ。

 いやねー、ヴィクトルさんがうっかり閣下に「空飛ぶ城でお食事会やるよ~」って言っちゃったそうで。

 それをまたうっかり宰相閣下が乙女閣下に伝言ゲームしちゃったそうな。

 同じようにラーラさんがロートリンゲン公に「お食事会が~」ってやっちゃったそうだし、ロマノフ先生なんかもっと酷い。陛下や妃殿下、皇子殿下方にうっかりごにょごにょしたらしい。絶対わざとですよね、解ります。

 結果各方面から「なんで呼ばんの?(意訳)」って連絡がきた。

 宰相閣下や乙女閣下はともかく、陛下や妃殿下、皇子殿下方なんかどうすれば呼べるの? 逆に。

 記念祭中、空飛ぶ城はずっと帝都に留まることになってる。

 私は菊乃井の屋敷から先生方と転移魔術で出張するけど、歌劇団のお嬢さん方はお国が用意したお宿に滞在だ。

 空飛ぶ城の空室を使ってもらえばって話もしたんだけど、豪華すぎて眠れないとユウリさんを始めエリックさんにもお嬢さん方にも拒否されちゃったんだよね。

 じゃあ警備の問題はどうかというと、大根先生とそのお弟子さん達が担ってくれる。大根先生とお弟子さんの何名かは、城で暮してるから。

 警備的には大根先生だけで事足りるけど、それじゃ黙ってくれないのが反菊乃井家の皆さんなわけよ。

 そういうわけで陛下と妃殿下には「無茶ぶりしないでください(意訳)」ってお返事をしたんだけど、皇子殿下方と宰相閣下と乙女閣下、そしてロートリンゲン閣下は振り切れなかった。

 文化人の皆さんには芸術で身を立ててはいても、平民の人もいるわけでぇ……。

 それを言い訳にお断りしようとしたら、なんと「その人知ってるから大丈夫」っていうね!

 寧ろ高位貴族なんだから、そういう名高い芸術家と付き合いがない方がどうなのか。梅渓家の艶子夫人はかく語りぬ、だ。

 仕方ないから招待状を準備して、今ここ。元々ゾフィー嬢と艶子夫人にはお声がけしようとは思ってたけどさ。

 因みに和嬢はお食事会に来たがったそうだけど、そこはお祖母様に止められたそうな。

 大人ばかりの席では可哀想でしょう?

 にこっと笑われたので、これはアレよ。遠回しに「子どもだけのお席も準備してくださいね?」っていう。

 それに関してはレグルスくんが和嬢とお菓子を一緒に作って食べたいというので、きちんと考えていますとも。

 そんな話をすれば、艶子夫人がコロコロ笑った。


「まあ、そうなのね。でしたら私はそちらの可愛いお茶会の方に招いていただこうかしら?」

「なごみじょうとおかしをつくっても?」

「勿論です。エマさんも同席でよろしいかしら?」

「はい!」


 レグルスくんと艶子夫人の間で話が出来たのなら、私は別に。

 でもなー……。

 ちらっと眼を輝かせている乙女閣下を窺い見る。


「なら皇子殿下方はそちらのお茶会に招待しては? 統理殿下もゾフィー嬢と一緒に何かしたいと思うだろうし」

「その組み合わせだと、私がシオン殿下とお菓子作りをしないといけないんでは……?」


 これだよ。

 なんか最近本当にシオン殿下と組まされる。

 妃殿下にお揃いのハンカチを持たされてることが、シュタ何とか家以外の高位貴族の皆さんの間で何かと面白がられているらしい。誰が喋ったんだか。

 シュタ何とか家? 知らんがな。

 次男坊さんが将来竹林院を継ぐことは、決してシュタ何とか家の功にはならない。それどころか竹林院は政敵である獅子王家の庇護下に入る。

 そして取り巻き連中は徐々に自分が乗っている船が泥船だってことに気が付き始めた。運河の件で私にすり寄ってくる家が出て来てるあたりで、シュタ何とか家の影響力とか発言力が目に見えて低下し始めている。

 そこに来てシュタ何とか家が立てようとしたシオン殿下は、統理殿下と仲睦まじい姿を所々で見せているし、絶対の忠誠を誓っているのだ。更に統理殿下の懐刀と目される私と、シオン殿下がお揃いのハンカチを持っている。もうダメだろ、これ。

 そんな状態で、私が皇子殿下方とゾフィー嬢、和嬢、そして乙女閣下を招いてお茶会? 怖いってば。

 間違ってもシュタ何とか家が怖いんじゃない。その他に及ぼす影響が怖いんだよ。呼ぶことがではなく、呼ばれなかった家の反応が、だ。

 そしてそんなことは百も承知なのがこのメンバーなんだよね。

 隣に座ったロマノフ先生があっけらかんという。


「私的なお茶会なので、親しくしてたら呼ばれると印象付ければいいんでは?」

「いやでも、私、そんな呼ぶようなお友達いませんが?」

「これから作ればいいし、何なら奏君や紡君、ラシード君やノエシス君、識嬢、アンジェちゃんにも参加してもらえば?」

「それは……」


 いいのか?

 考える。

 実際私の友達なんて奏くん達と辛うじて次男坊さんくらいだもんなー……。

 でも次男坊さんは現在獅子王家で色々独立のためのアレコレで、帝都のお茶会には不参加だそうだし。

 というか、単なるデートじゃなく、子どものお茶会が開かれるのは決定ですか。そうですか。

 そして梅渓宰相とロートリンゲン公は大人のお食事会参加で、艶子夫人と乙女閣下、ゾフィー嬢は子どものお茶会の方へってことね。

 宰相閣下もロートリンゲン公も芸術家の間では、結構話の分かる人という感じで遇されてるので、お食事会の目的自体は果たせるだろう。

 けども。


「宰相閣下、一つお約束いただけますか? 獅子王閣下も艶子夫人も」

「はて?」

「何だい? 私で出来ることであれば、構わないが」

「ええ、私も」


 真面目な顔だったからか、お三方も真面目に答えてくださる。


「鷹司佳仁様ご夫妻をお連れになるのはやめてくださいね?」


 居住まいを正してそう口にすると、お三方がそっと視線を私からずらす。

 あ、ダメだこれ。

お読みいただいてありがとうございました。

感想などなどいただけましたら幸いです。

活動報告にも色々書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。

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― 新着の感想 ―
私ならサプライズには特大のサプライズでお返ししちゃうかな。 尊い方々が一家総出でいらっしゃるんだもの。 そりゃあお土産も気合を入れないとだよねぇ…? そういえば、古龍の鱗が有り余っていたなぁ…^^ 決…
あらま 鷹司ご夫妻も来ちゃうの決定事項なのね…………(・o・;)
更新ありがとうございます♪ 今回もやらかし案けぇんん??大人組? 『後輩達の成長を見たいのです!支援に、サービス、サポートも充実させますので、ぜひ友人・子供達も一緒に交流を!』んで...上げ膳据え膳三…
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