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白豚貴族だったどうしようもない私に前世の記憶が生えた件 (書籍:白豚貴族ですが前世の記憶が生えたのでひよこな弟育てます)  作者: やしろ


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張り巡らされた縁の繋がり

いつも感想などなどありがとうございます。

大変励みになっております。

次回の更新は、1/27です。

 翌日も快晴。風は穏やかで日差しがとても暖かで長閑だ。

 今日は祭の最終日ってことで、朝早くからなんでも市場はオープンしてて、町の人は朝ご飯をそこでとれる。

 とはいえ皇子殿下方がおられるので、私達は朝は料理長が準備してくれた朝食を食べて砦へ。

 本日のお祭りにはスペシャルゲストのドラゴンさんがいらっしゃるから、そのお出迎えが必要なわけだよ。

 砦の屋上の広いところで待っていると、太陽の方向から黒い点が段々と近付いて来る。それはあっという間に大きくなって、メタリックグリーンの肌に、コウモリのそれに似ただけど大きさが全く違う翼をバッサバッサさせて飛ぶドラゴンへと変わった。


「おはよーさーん!」


 すっごい明るい。

 魔物の表情って分かりにくいものらしいけど、このドラゴンさんは解る。物凄く笑顔だ。ウッキウキだ。

 翼のはためきで起こる風を制御しつつ、ドラゴンさんはゆったりと私達のいる屋上に降りてくる。


「お招き、おおきに。お土産持ってきたよって、どうぞ」

「これはこれはご丁寧に」

「ドラゴンさん、ありがとう」


 差し出された身体からすると小さな手が握っていたのは、可愛い小さな花を沢山つけた枝だけど、どうも植物というか人工物というか。

 レグルスくんが受け取ると、しげしげと眺めた。


「これ、なぁに?」

「それなぁ。うちの一族の鼻つまみ者のオッサンとうちのオカンがやりおうて、そのオッサンを半殺しにしたったときに、詫びの証に出してきた何とかっていう国の国宝? そのお国はもうなかったはずや。うちのオカンから独り立ちのときに譲られたんやけど、人間の国の宝は人間に渡した方が大事にしてくれるやろ? 貰いモンで申し訳ないけど」

「いえいえ、私は素人ですが素晴らしい素材……サンゴとかべっこう? そういう物で作られているみたいですね。大事にします。ありがとうございます」

「ええんよぉ。うちにとってはこのお宝と、ここの歌劇団のお芝居や歌は等価や」


 ニコニコと朗らかに話してくれる。その一族の鼻つまみ者のオッサンとか、そのオッサンを半殺しにしたお母様も気になっちゃうな。

 でも一番気になることを聞かなきゃ。背後から控えてくれているシャトレ隊長と、ロマノフ先生の視線が突き刺さる。


「あー……その、不躾というか今更なんですけど、ドラゴンさんのお名前を聞き忘れたなぁと、この間から思ってまして」

「うん?」

「そうそう。このあいだ、おれ、おなまえきくのわすれちゃってて」


 レグルスくんの言葉に、きょとりとドラゴンさんが瞬く。それから「おお、そういえば」と呟いた。


「忘れとったわ。ごめんやで?」

「ああ、いえ、私達も正式に名乗ってはいませんでしたし。改めまして菊乃井侯爵家当主鳳蝶です。こちらは弟のレグルス」

「レグルスです、よろしく!」

「はいはい、鳳蝶はんとレグルスはんやね。うちはラナーいうねん。よろしゅう」


 ラナーさんはやっぱり下手な人間より、礼儀正しいし友好的だ。こちらがぺこりとお辞儀したのを真似て、彼女もお辞儀をしてくれたくらいだもの。

 ついでというわけではないけど、私の後ろにいてくれてるロマノフ先生とシャトレ隊長のことも紹介しておく。

 特にシャトレ隊長はこの砦の責任者だし、何か不自由があったら彼に言ってもらった方が良い。そういうことを説明すると、ラナーさんは朗らかに「よろしゅう」と挨拶していた。勿論シャトレ隊長も、穏やかに接する。

 挨拶と本日の予定を話したところで、レグルスくんがツンツンと引いた。


「あにうえ、なごちゃんのこと……」

「おお、そうだった」


 和嬢、お歌を歌ってたドラゴンさんに興味があるから、お会いしたいって言ってたんだっけ? それだけじゃなく、町の子ども達もドラゴンさんに興味津々って、奏くんが言ってたな。

 その辺の話をすると、ラナーさんは二つ返事で「ええよぉ」と。

 特に彼女のお歌を聞いた和嬢には、ラナーさんも興味があるようで。


「歌聴かれてたん? 恥ずかしわぁ。でもうち、ちゃんと歌って解るように歌えてたんやな!」


 その言葉にレグルスくんがきょとんと瞬く。


「ねぇ、ラナーさん。どうしておうたうたってたの?」

「あー、教えてもろたんよ」


 そう言って生物学上前脚、感覚上の手をワサワサ動かしつつ説明してくれたことによると、切っ掛けは冒険者を助けてやったことだそうな。

 ラナーさんは人間は食べない方のドラゴンだそうで、偶々大けがをした冒険者がラナーさんが巣穴にしている洞窟に潜り込んで来たそうだ。

 それで食べるでもない生き物を殺すのは、彼女の主義に反する。かといってこのまま見殺しにすると、巣穴が汚れる。なのでその転がり込んできた冒険者に判断を委ねることにしたそうな。

 つまり「生きたいか死にたいか」ってさ。

 そして冒険者は「死にたくない」と言った。

 それもご丁寧に死にたくない理由まで懇々と語って聞かせたらしい。それも歌とお芝居付きで。


「歌とお芝居付き……?」

「うん。なんや菊乃井歌劇団の記念公演の曲と、『あなたのお家をお捨てになって! それが出来ぬなら、せめてあたくしを愛するとお誓いになってくださいまし』っていうお芝居付きで。そいでゴロー……うちが助けた冒険者な? 歌劇団見るんもいいけど、お芝居してみたいんやて。ここで一回死んだみたいなもんやし、助かったら自分もその歌劇団を真似して仲間集めてお芝居するっていうねん。それで、うち、そこまでいうお歌やらお芝居って『どないなん?』って興味持ってん」

「じゃあ、和嬢の家の上を通ったときに歌ってたのって……」

「えぇっと、あの……こういう」


 そう言ってラナーさんが歌い始めたのは、去年の砦での記念公演で私が歌った影ソロだった。

 そりゃ、雪樹の一族の元族長も象牙の斜塔の賢者様も知らないけど、梅渓家のご令嬢な和嬢は知ってるはずだわ。

 ロマノフ先生とシャトレ隊長も驚いているなかで、ひよこちゃんがピヨピヨと身体を揺らす。


「これ、きょねんのおまつりであにうえがうたったやつだよ!」


 レグルスくんの声が耳に入ったのか、ピタッとラナーさんの歌が止まって私に顔を寄せる。


「そうなん!?」

「え、ええ」

「そっかー! えー……今回も歌う?」

「えぇっと、その歌じゃないけど、歌うのは歌います」

「ほんまに!? うち、ついてるわー!」


 喜んでおられるようで、手をバサバサと動かす。

 お蔭でちょっと砦が揺れた気がするので、ラナーさんに落ち着いてもらうように声をかける。

 そうするとちゃんと落ち着いてくれるあたり、沼の住人としても素晴らしい対応だ。

 ご機嫌なのか尾がちょっと揺れてるけど、それを強く打ち付けたりしないし、実にお行儀よくしてくださってる。

 因みに、そのゴローとかいう冒険者は「五体満足で生きたい」と言ったから、ラナーさんは怪我が治るまで面倒をみた上で、治り次第人里付近に送ってやったそうな。優しい。

 それにしても、と思う。

 去年の暮れに、男性ばかりで菊乃井歌劇団のカバー劇団をやりたいっていう投書があったんだよ。

 あれってもしかしてここに繋がるんだろうか? これが終わったら確認してみよう。

 予期せぬ繋がりが見えて、ちょっと不思議。

 なのでその話をラナーさんに伝えると「ああ」と彼女も目を丸くした。


「やる気やん、ゴロー」

「ええ、その人がゴローさんだったら、ですけど」

「多分せやわ。『俺は! 娘役一番手に! なりたいんだ!』言うてたし」

「へー……え? 娘役一番手って……?」


 おい、待て。

 そっちはそっちでつい最近、戦神の加護持ちが娘役一番手を目指してるって話が飛び込んできたとこだぞ……?

 思い当たったのは私だけじゃなかったようで、若干ロマノフ先生と表情筋が固まっている。

 うん、今のは聞かなかったことにしよう。

お読みいただいてありがとうございました。

感想などなどいただけましたら幸いです。

活動報告にも色々書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。

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― 新着の感想 ―
ドラゴンのラナーさんから国宝いただきましたね! もうない国のものとか、価値がよくわからないですけど! これもナニかの伏線!?考えすぎ? 作者様がしれっと書籍の宣伝されるから 『この商売上手さんめ!』…
え"!貴方が落としたのは、 美川憲一さんですか?それとも 梅沢富美夫さんですか? ∑(゜Д゜) 推しが老若男女種族無差別級キラーな件‼︎
半殺しにされたっていう竜種のオッサン もしや件の破壊神だったり…?
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