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JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
フェイズ2「転生者さんに学ぶ すてきな終末の過ごし方」
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その90 転生者

「キミは羽喰彩葉ちゃん……だよね? とりあえず、ボクたちを二人きりにしてもらえないかい?」


 エルフの少女は柔和な笑みを浮かべ、そう言います。


「え? ……うーん」


 対する彩葉ちゃんは、しきりに首を傾げていました。


「あーしら、会ったことあったっけ?」


 彼女もまた、自分の名前を知られていることが不思議でならない様子。


「ごめん、あとで必ず話すから。今は……ダメかい?」

「別にいーけど。でも、もしねーちゃんに手を出すようなことがあったら……」

「ははっ。それは大丈夫。キミと同じくらい、”先生”のことを大切に思っているから」


 うう。

 なんでしょうこの、情報に差がありすぎるが故の焦燥感は。

 はよ。事情説明、はよ。


「とりあえず、そちらの名前を教えていただいてよろしいですか?」

「……うん。“先生”からすると、ボクたちはまだ初対面なんだよね。わかってたけど、変てこな気分だ」


 いや、謎の美少女的な台詞はもういいんで。


「ボクは、恋河内百花(こいかわちももか)。こんななりだけど、れっきとした日本人さ。“フェイズ1”が終わった時、“先生”も手に入れただろ? “エルフの飲み薬”を飲んだんだ」


 あー、そういや、そんな実績報酬アイテムがありましたなあ。


「……ん? でも、なんで私が”エルフの飲み薬”を選んだこと……」


 彼女はそれに応えず、


「ここじゃあ何だから、少し翔ぶよ」


 は? 翔ぶ?


 次の瞬間。

 私は、自身の身体がふわりと浮き上がっていることに気づきました。


「ななななな、なにこれっ」

「心配ない。神獣の力を借りただけだよ」


 ”心配ない”という言葉に説得力を持たせる方法として、”神獣の力を借りた”というのはどうなんでしょう。

 少なくとも、不安な気持ちは拭われず。

 かといって、圧倒的な力の前に、下手な抵抗は無駄だとわかります。


 私たちは、数百メートルほど浮き上がった位置でピタリと静止しました。


「少し、風がうるさいな……――《一時停止》」


 息をするように魔法を使い、周囲の空気の流れを止めてみせる百花さん。


「これで、安心しておしゃべりできる」

「なんでまた、ここまでする必要が……」

「そりゃまあ。人に聞かれると、少し不味い内容だから。……ただ、彩葉ちゃんはまだ、五感を強化するタイプのスキルを取得していないようだけども」

「……彩葉ちゃんの盗み聞きを警戒したのですか?」

「もちろん、危険なのは彼女だけじゃない。この辺りのどこに”プレイヤー”が潜んでいるかわからないからね」


 まあ、慎重になる気持ちはわからないでもありませんが。


「で? さささっと、本題に入っていただきたいところですが」

「いいだろう」


 百花さんは、それが周知の事実であるかのように、まず、こう切り出しました。


「ボクは、”転生者”だ」


 宙空にふわふわ浮きつつ、あぐらをかいて、


「テンセイ……?」


 言葉の意味を呑み込めずにいる私。


「それって、”輪廻転生”って意味の”転生”?」

「うん」


 ってことは……えーっと。

 ドウイウコト?


「端的に説明すると、ボクは一度、この”終末”を経験している。……と言えば、正体の一部を理解したことになるかもしれない」

「なるほど」


 口では冷静を装っていますが、危うく刀を取り落としそうになっています。


「《時空魔法Ⅹ》という魔法がある。……これは、人生をリセットして赤ん坊の時代からやりなおす魔法だ。それを使って、ボクは”やり直し”て来た訳さ」

「レベルが高いのも、それが理由で?」

「だったら良かったんだけど。《時空魔法Ⅹ》を使うと、レベルもリセットされてしまうらしくてね。ボクのレベルが高いのは、とある効率的なレベリングの成果だ」


 へー。


「もちろんそれも、”先生”に教えるつもり。そもそも、このレベリング法を見つけたのは”先生”だからね」

「ええと……ちなみに、私のことを”先生”と呼ぶのは……」

「もちろん、ボクたちは前世で会ったことがあるからだよ」

「ほほう」

「もっとも、その時は”フェイズ4”の時点だったし、ボクに前世の記憶もなかった訳だから……今と、かなり状況は違うけれど」


 ……うえ。

 いま、さりげなく言ってくれましたけど、”フェイズ4”って。


「……その口ぶりだと、この状況、まだ続くってことですよね」

「うん。今はかなり落ち着いてきてるけど、”フェイズ3”に移行すると、また状況は苦しくなる」

「具体的に言うと?」

「かなり強力な”敵性生命体”が多く活性化し、人を襲い始める。各地に散らばっていた”ゾンビ”も都心に集まってくるだろう」

「うげ」

「”フェイズ2”に移行した時点で、”潜伏”する”ゾンビ”がどうこうってアナウンスが流れたこと、覚えてる? あれで一時的に身を隠している”ゾンビ”が、けっこう多くてね。”フェイズ3”で流れてくる”ゾンビ”と合流する形となる」

「うげげ」

「あと、一番厄介なのは、空を飛ぶタイプの”怪獣”かな。奴ら、平気でバリケードを飛び越えてくるからね」

「うげげげ」


 未来って、絶望しかなかったんですね。


「ちなみに、……その”フェイズ3”とやらに突入する時期は?」

「およそ三ヶ月後だ」

「……具体的な日は?」

「それが、はっきりとわからないんだ。どうやらこの世界、ボクが経験した時と少しずつ違うみたいだから」

「違う?」

「うん。”フェイズ1”が終わった時期も、前回とは微妙に違ったしね。だから、”およそ三ヶ月後”くらいに考えて欲しい」


 うーん、と。

 私は腕を組み、考え込みます。

 話の内容がぶっ飛びすぎてて、空高く浮き上がっていることなどどうでもよくなってきていました。


「つまり。……貴女は、将来訪れる危機を回避するために現れた、と?」


 するとエルフの少女は、少し困ったように首を傾げて、


「もちろん、それもある。……でも、それだけじゃない。もっと大切なことがある」

「大切なこと?」


 オウム返しに尋ねると、


「この事態を根本的に解決したい。……そのためにボクたちは、もっともっとレベルを上げて、もっともっと強くならなきゃいけないんだ」

「ほう」


 それで、レベリングがどうこう、と。


「でも、その”根本的な解決法“って奴は、具体的に何かあるので?」

「もちろん。だからボクは、時を遡ってまでここに来たんだよ」


 おお。

 それは頼もしい。


「世界を救うために、どうしても殺さなきゃいけないヤツがいる」


 エルフの少女は、はっきりと”殺す”という言葉を使いました。

 ”倒す”とか”屈服させる”とかではなく。

 ”殺す”、と。


「一人は、今もこの街のどこかで”敵性生命体”を操っていると思われる、”魔王”……と呼ばれるジョブを持つもの」


 はあ。

 ”魔王”ねえ……。


「そしてもう一人は、善のカルマを極めた”プレイヤー”に与えられるとされるジョブ。……”勇者”だ。」


 ん?


「ちょっと待ってください。”魔王”はなんとなくわかりますけど、その、”勇者”ってやつも殺さなきゃいけないんですか?」

「うん」


 ”勇者”と言えば、RPGなんかだと正義の味方の代名詞的な存在ですよね。

 それに、善のカルマを極めた人を殺すって。


「それだとなんか、こっちが悪者みたいですけど」

「残念だけど、他に選択肢はないんだ」


 少女は深く嘆息しつつ、続けます。


「”勇者”と”魔王”には、《不死》という特殊なスキルがある。これは、どちらか片方が生きている限り、永遠に”セーブポイント”と呼ばれる特殊な空間で蘇り続けるスキルなんだよ」


 ”セーブポイント”て。

 これまた、テレビゲーム的というか……。

 いやまー、いいんですけども。


「そして、《不死》のスキルを持つものにトドメを刺せるのは、《必殺剣Ⅹ》を覚えられる、――“先生”。キミだけなんだ」


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