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JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
フェイズ2「デスゲームはじめました」
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その56 旅は道連れ

 彩葉ちゃんに付き合っているうちに、気づけば昼すぎになっていました。


 こりゃ、どこかでもう一泊しなきゃならないフラグですねー。

 それでも、とにかく先には進まないと。


 私は、少し慌て気味に雑貨屋さんを後にしました。

 この一晩の間で出入り口付近に溜まっていた“ゾンビ”をさくっと始末して、先を急ぎます。


「ふんふーん、ふふふーん♪」


 ふと、鼻歌がした方を振り向くと、彩葉ちゃんの姿が。


「あ、ひょっとして、ついてくるつもりですか?」


 すると、彩葉ちゃんが首を横に振ります。


「んーん? ただ、行く道が一緒なだけだけど?」

「ちなみに、目的地は?」

「とくになーし」


 ないのかよ。

 まあ、道中の話し相手に困っていたところですし、迷惑ではないんですが。

 お互い、情報交換もできますしね。


 それから私たちは、“ゾンビ”の群れを片っ端から排除しつつ、西武池袋線沿いに歩き始めました。

 電車が来ないから、線路を歩けば良いわけです。道は一本。迷う心配もなく、気楽でいいですね。


「……あっ」


 ふと、“ゾンビ”の群れを蹴散らした彩葉ちゃんが声を上げます。


「いまレベル上がった。……うーん、どのスキルにしよっかなー♪ 二番。いや、三番がいいかなー♪」


 なんか、端から見るとシュールですね。


「《飢餓耐性(強)》はとらないのですか?」

「うーん。やっぱそれがいいかなぁ」

「魔力切れを起こして死にたくなければ」

「だよねぇ。……よっし! あーしは失敗から学ぶ女だ! 飢餓耐性でいこー!」


 妙な感じでした。

 私以外の人と、この不思議な力について話せるなんて。

 やっぱり、ちょっとした仲間意識が芽生えちゃいますよね。

 これまで、誰とも共有できなかったことですから。


 どうやら、その感想は向こうも同じらしく。


「ねーちゃんねーちゃん! いまぶっ飛ばした“ゾンビ”見たか!? すげぇポーズだったなー!」


 彩葉ちゃんとは、いつの間にか打ち解けていました。


 この子、軽く倫理観に問題がある気がしますけど。

 まあ、心強い気持ちもなくはないです。はい。



 それから、線路を歩くこと数十分。


「なあ、ねーちゃん。ちょっと練馬で止まってもいいか?」


 彩葉ちゃんが、急にこんなことを言い出します。


「いいですけど、何故です?」

「例の、ねーちゃんを悪者だって言った女、あーしの家に匿ってるんだ」

「家?」

「家っつっても、スーパーマーケットな。駅の高架下にあるんだ」

「ふむ。……ただ、想像するにその人、もういないと思いますよ」

「ん。でも、一応な。それに、もしかしたら、あーしが前に助けた人が、戻ってきてるかもしんない」

「なるほど」


 彩葉ちゃんに起こった出来事は、おおよそ把握しています。

 救助した人たちの間で裏切り者が出た、とのことで。

 彼女はあっけらかんとしていましたが、きっと心の内では深く傷ついていることでしょう……多分。


 しかし、“雅ヶ丘高校”の避難民は、みんな常識的で助かりました。

 あるいは、あそこがわりと居心地の良い空間だったことも関係しているのかも。

 ストレスの高い環境下では、人間、何をしでかすかわからないものですし。


 練馬駅を降りて、彩葉ちゃんが根城にしていたというスーパーマーケットを覗きます。


 そこには、予想した通り、誰一人残っていませんでした。


「……………」


 彩葉ちゃんが、苦い薬を口に含んだような表情で、がらんとした店内を眺めました。

 私は、彼女の頭をぽんぽんと撫でて、


「大丈夫。きっと生き残っている人もいますよ」


 そう、励まします。


「……む」

「じゃ、行きましょうか」


 そう言った直後のことでした。


 ずん……、と、辺りが揺れて、ぱらぱらと、天井から土埃が落ちてきたのです。


「ん?」

「なんだ?」


 二人揃って首をかしげます。

 店を出ると、耳をつんざくような鳴き声が、あたりに響き渡りました。


「ねーちゃん、あれ!」


 彩葉ちゃんの表情が、驚愕に染まります。


 私たちの目の前に立ちふさがったもの。


 それは、ビルの二階ほどの高さの、巨大な虎の“怪獣”でした。


『――グルッ! グルルルルルルッ!』


 ……はあ?


 豚の次は、……虎?

 もうちょっと段階ってもの、ない?

 やっとの思いでスライムベスを倒したら、次にエンカウントした敵がキラーパンサーだった気分。


 っていうか、でかいし。

 でかすぎるし!

 頭部だけでも、私の身長くらいあるんですけど!


『グルルルル……』


 虎の“怪獣”は、私たちをゾッとするほど鋭い眼光で睨みつけます。

 蛇に睨まれた蛙とは、まさにこのこと。


「ね、ねーちゃん……」

「彩葉ちゃん……」


 二人、目を見合わせて。


「死ぬ気で走ってぇえええええええええええええ!」


 脱兎の如く、逃げ出しました。


『グルォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』


 建物をやたらにぶち壊しながら、虎の“怪獣”が跳ねます。


 なにが目的かって?


 もちろん私たちを、スナック菓子感覚でひょいぱくっとしちゃおうという魂胆に違いありませんよ。


「わっわっわっわっわっわわわわー!」

「無理無理無理無理ぃいいいいいいいいいいいいいい!」


 逃走劇が始まりました。


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