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JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
フェイズ2「デスゲームはじめました」
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その52 終末グルメ

 まず、寝床は簡単に見つけることができました。

 “ゾンビ”がうろつくばかりで人気のない、三階建ての雑貨屋さんを発見したためです。

 雑貨屋さんの二階は寝具コーナーになっていて、そこに数台のベッドが置いてありました。

 さくさくっと“ゾンビ”を一掃した私は、


「この店で、――一番いいベッドを頼む」

「ハイ、カシコマリマシタ、オジョウサマ(裏声)」


 そのお店で最高級のベッドと羽毛ぶとんを占領することに決定します。


 お次は食糧。

 これは、近くに商品の一部が略奪されたスーパーを発見したので、なんとかなりそうでした。


「ふーむ………」


 腕を組み、少し考え込みます。

 正直、最近レトルト食には食傷気味なんですよね。

 なんかこう、一手間かけたお料理がしたい。

 しかし、ハエがたかっている生鮮食品は使えません。


「ムムム……」


 深く考え込みます(ちなみにこの間、三体の“ゾンビ”を瞬殺)。


「料理……料理。……カレー……フム……」


 ふと、私の頭に、ピカーンと電球が閃きました。


「これだ!」


 手にとったのは、熟カレーの中辛とおでんのパック。

 このひらめきが幸運をもたらすことを祈りつつ、おやつ類も回収します。

 道中の“ゾンビ”を焼くのに、いくらか魔法を使いましたからね。《飢餓耐性》のお陰で泣くほどお腹が空くことはなくなりましたが、それでもやっぱり魔力の補給はしっかりしておきたいところ。


 次に向かったのは、本屋さんでした。

 どの漫画にしようかと迷うこと三十分(ちなみにこの間、“ゾンビ”を六体ほど瞬殺)。

 今の気分的に、殺伐とした要素の少ない、女の子がキャッキャウフフするタイプの四コマをチョイス。今はただ、癒やしが欲しかったんです。


 で、暖房器具。

 色々考えた結果、これは諦めることにしました。

 ガソリンで動く発電機は持ち運びしにくいですし。

 それに、《皮膚強化》のお陰か知りませんが、そんなに寒さを感じなくなっていました。

 これならお布団を重ねがけすれば十分でしょう。


 最後に、お風呂。

 これの実現はさほど難しくなさそうでした。

 雑貨屋さんに浴槽のサンプル品が置いてあったのです。

 これと大きめの鍋、カセットコンロ、それに水を大量に集めてきて、準備万端。


 よし。

 それじゃ、始めますか。


 まず私は、レトルトのご飯を湯煎で温めつつ、大きめの鍋を水でいっぱいにして、普通にカレーを作りました。

 いい感じに具なしのカレーが出来上がってきた、次の瞬間。


 私はそこに、ドボドボドボドボとおでんの具を投入していきます。


「おいしくなーれ、おいしくなーれ♪」


 ……いやほんと、おいしくなってください。

 賞味期限が大丈夫そうで、カレーの具になりそうなもの、これくらいしか見つからなかったんですよ。


 山盛りのごはんに、おでんの具入カレーをぶっかけます。

 これぞ終末グルメ。


「そんじゃ、いただきまーす♪」


 まず、一口。


 ………ふむ。

 ………………まあ、こんなもん?


 カレーにおでんの具を入れたものの味がします(当たり前)。


 でも、意外と悪くないですよ、これ。

 大根や牛すじ、ゆでたまご、タコやごぼう巻あたりは味を殺していない気がします。

 逆に、昆布とこんにゃくは微妙。魅惑のカレーワールドの世界で、存在感を主張しすぎ。かなり調子乗ってる。


 あれこれ考察していると、あっというまに鍋は空になっていました。

 うふふ。

 新しい味の世界を開いた気分。


 いずれ、おでんカレーのお店を開かなきゃ(使命感)。


「ごちそうさまでした♪」


 美味しい食事を遺してくれた旧世界の文明に感謝を。


「さて……」


 食事を終えた私は、鼻歌混じりにカセットコンロと浴槽を屋上に運びます。

 雑貨屋さんの屋上に出た私は、片っ端から水をお湯にしていきました。


 待つこと数十分。


 浴槽をお湯で満たした私は、ビルの屋上から空を眺めます。

 満天の星が、私を見下ろしていました。


「……よっし!」


 根性一発。


 この開放的な空間で、のんびりお風呂を満喫したいと思ったのです。

 生者の影なきこの世界。

 もはや、人目をはばかる必要もありません。


 温かい湯船にどぼーん。


「……………ふうううううううう溶けるううううううう……」


 いやー。

 前回、ドラッグストアでお風呂に入った時も気分が良かったですけど、今回はその上を行きますね。


 ぼんやりと星空を眺め。

 ぱしゃぱしゃと湯を弄び。

 耳を澄ませば、“ゾンビ”どもの唸り声が聞こえることだけが難点でしたけど。


 永遠にこうしていられる気がしました。

 実際、一時間以上そうしていた気がします。



 身も心もピカピカになった私は、寝具コーナーで見つけたピカニャン(自分の命令に従うよう洗脳した動物を“友達”と言い張る奇怪なアニメのキャラクター)の着ぐるみパジャマを身にまとい、ベッドに横になりました。


「ふわあ……」


 ろうそくの明かりで漫画を読んでいると、ウトウトし始めてきます。


 予定では、明日の昼ごろには所沢に着くでしょう。

 そこで……私は、何をする羽目になるのでしょうか。


 ぼんやりそんな風に考えてていると。

 どこか遠くで、人の声が聞こえた気がしました。


「ひっさーつ……――《ばくれつ・ひゃくれつけーん》………」


「ん?」


 ひょっとして、どこかに人が?

 そう思った、次の瞬間です。


 どっごぉおおおおおおおおおおおおおおおん!


 私の癒し空間を、完膚なきまでに破壊する爆裂音。


「な…………なになにッ?」


 慌てて刀を抱え、ベッドから跳ね起きます。


 同時に、奇妙な出来事が起こりました。


 なんの影響かは知りませんが、雑貨屋さんの電灯がぱちぱちと音を立て、一度に点灯したのです。

 瞬間、建物全体が、文明の光に包まれました。

 混乱したまま、爆発が起こった場所を食い入るように見ます。

 土煙が覆うそこには、人影が。


「ふっふっふっふっふっふっふ。……ふははははははーッ、うえー、ごほごほごほ!」


 笑ったりむせたりしながら、一人の少女が現れます。

 歳は中学生くらいでしょうか。

 ボーイッシュに髪を切りそろえた、活発そうな女の子でした。


「お前が“流浪の戦士”だな!」

「……は?」


「あーしが現れたからには! おまえの悪事も、ここまでだ!」


――“正義の格闘家”が敵対行動を取っています。

――彼女を殺すか、降伏させてください。


「そんな急に、……えっ、えっ、えっ……?」

「いざいざいざぁー! しょーぶ!」


「えーっ!」


 何がなんやら、よくわかりませんけど。

 とりあえず、ピカニャンのパジャマ、着替えさせてもらえません?


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