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JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
フェイズ3「Too Late Now」
397/433

その390 地下牢

 コツ、コツと音を立て、舞以さんを先頭に、地下への階段を進んでいくと……、


「うーん。やっぱりこの辺、綺麗に片付いてるなあ」


 それに答えたのは、ナナミさんでした。


「この辺りには、”不死隊”の子たちの居住区域があるからね」

「……ってことはここの子、出入りするたびにさっきの茶番を繰り返してるってこと?」

「いや、――あの子たちは、地下の従業員通路から出入りしてるみたい」


 できれば、そっちのルートが良かったなぁ。遠回りかもだけど。

 と、そこで舞以さんが、唐突に叫びます。


「それよりみんな、気をつけて! ここから先は、地下牢に続いているの。……なんでも、封印された童話の悪役たちが、いまも捕らえられているって」


 舞以さんのセリフは、”迫真”と”投げやり”を行ったり来たり。

 それでも、彼女の台詞に反応してか、地下のライトが点灯していきました。


『フッフッフッフ……チビッコたちよ。ようく足元に注意するが良いぞ……こんなところで怪我をされては、せっかくの余興が台無しじゃからのう……』


 ちょっと親切な台詞の”魔法の鏡”さんが可愛い。

 私は、腕時計を見て、


「残り、あと二十五分ほど……」


 余裕があるような。そうでもないような。


「まあ、同じ建物の中だから、すぐに着くさ」


 たしかにこのお城、遠近法を使って大きく見せていますが、実際にはそれほど巨大な建造物ではありません。


「でも、こういうところで暮らすって、ぶっちゃけ虚栄心を満たす以外の目的があるんでしょうか」


 いくらVIP用の部屋があるといっても、あくまでそれは管理が行き届いた状態で、ようやく快適に過ごせるレベルでしょうに。


「知らん。……ただ、麗華は建前を大事にするところがあるからなあ」


 呟きつつ、そこでナナミさん、そっと私に耳打ちします。


「ところで、――ねえ、”名無し”」

「はい?」

「実は一つ、今のうちに忠告しておかなくちゃいけないことがあるんだけど」

「なんです」

「”姫”同士の回線があるっていったよな。……それで、さっきから連絡が取れないやつがいる」

「というのは?」

「”歌姫”、千駄ミズキってやつ」

「ええと……たしか、派手な見た目に反して、いつもおどおどしてる感じの」

「そうそう」


 彼女とは一緒に”うたってみた”系の動画を作る予定だったんですが、”鏡の国”のゴタゴタが思ったより長く続いたお陰で、お流れになっちゃったんですよね。


「マジですか。……参ったなあ」


 たしか彼女、レベルは52でジョブは”吟遊詩人”でしたっけ。厄介な。


「っつってもあの娘のことだから、案外気付いてないだけかも。寝てたりして」

「いやいや、それはないでしょ」

「そう思う?」

「そーいうのって、物語とかでは”伏線”とか”フラグ”と言ってですね」

「伏線くらい知ってるけどさ。現実は、それっぽい偶然の積み重ねでできてるもんだぜ」

「そりゃそうかもしれませんけど……」

「いや、実際ミズキって、すげー寝ぼすけなのよ。マジで。あたしはただの偶然説を推すけど」

「いやいや。『あの術は使うなよ?』って言っておいて作中、マジでなんの術か判明しないようなことは……」

「何の話?」


 と、その時でした。


「みんなーっ。ちょっとストップ! これを見て……ここはひょっとして、――シンデレラの家族が閉じ込められている部屋じゃあ……」


 と、舞以さん。

 それに応えて、牢屋の中から、いかにもおどろおどろしい声で、


『どこ……ねえ』

『ここはどこ……?』


 と、二人組の人形が囁きます。

 よく見るとみるとそれは、ぽっかりと両の目が空洞になった女性たちでした。


『シンデレラにぃいいいいいい、目玉をほじくられたあああああああああ!』

「ひゃあっ!」


 デフォルメされている人形ながら、私はその迫真の演技に悲鳴を上げます。

 彼女たちは、よたよたと鉄格子に歩み寄り、こう続けました。


『確かにあの娘を虐めたのは私たちだけど』

『ここまでされる謂れはあるの……?』

『あの娘だけが”末永く幸せに暮らし”ているのに』

『私たちだけは、永遠にここで苦しめられている』

『私は足の指を』

『私は踵を』

『切り取ってまで、王子に媚びたのにぃいいいいいいいいい』

『そこまでしたのにぃいいいいいいいいいい」


 同時に、がやがやと他の牢屋までもが賑やかに騒ぎ立てます。


『そうだそうだ! 私などは、真っ赤に焼けた靴を履かされたんだよ』


 と、”白雪姫”の王妃様。


『俺は、寝ているうちに腹に石ころを詰められた!』

『私はヘビで一杯の大桶に入れられた!』

『私は濃硫酸をかけられた!』

『正しいからって、何をしても許されると思っているのか!』


 こんなん子供、トラウマなるで。


「ひえええ……み、みんなぁ! にげろー!」


 舞以さんがそう叫ぶと、松明型のライトが牢屋の奥を照らします。

 はいはい。次はあそこが順路ね。

 全員が扉に駆け寄ると、――その時でした。


 それこそ、なんの伏線も予兆もなく、突如として、ぶぅうううううううううううううううううん……と、耳障りな羽音が聞こえてきたのは。

 一瞬だけ、これも何かの演出かと思われましたが、どうも違う。

 この音だけ、録音とかそういうのじゃなく、アトラクションの演出的にも()()()()()のです。


「ちょっとまって。……何です、この音」

「羽虫でも、飛んでるのかしら」


 いや。

 何か違う気がする。蠅の羽音がする「ぶぅうううん」と、この「ぶぅうううん」は、なんというか、ちょっとだけ羽ばたく音の高さが違う、というか。


「……あっ」


 と、そこで、同行していた藍月美言ちゃんが口を「O」の字にしました。

 どうしたんだいお嬢さん、と訊ねかけた、その時でしょうか。

 私のこめかみを、弾丸で撃ち抜いたような衝撃が……。


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― 新着の感想 ―
[一言] > と、二人組の人形が囁きます。  よく見るとみるとそれは、ぽっかりと両の目が空洞になった女性たちでした。 ……ま、まさかの『本当は恐ろしい◯リム童話』的なっ、原作の設定寄りのアトラクショ…
[一言] へっしょ!
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