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JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
フェイズ3「鏡の国の冒険」
340/433

その334 白銀の騎士

 私が西側のエリアに到着すると、――


「なんだ、この……なに?」


 天井に、ぽっかりと一つ、円形の穴が空いていて、思わず目を見張らされます。

 状況判断したところ、三階にいた浜田さんが逃走に使ったものと思われますが……。


 ちょうど土埃を踏んだものと思しき足跡が、西側に続いていることを確認していると、


 どが、がしゃ!


 と、重量のあるものが落下してきました。

 見るとそれは、先ほども見かけた白銀の騎士。

 彼はしばらくあちらこちらを見回した後、すぐそばに立っている私に気付いて、わかりやすく狼狽します。


「……げげっ。”名無し”さん……」


 出会い頭に「げげ」とは失礼ですねえ。

 ギャルゲーなら好感度大幅ダウンの選択肢ですよ。


「あなたが犬咬さん?」

「え、ええ」

「はじめまして」

「ああ……。は、はじめまして、です」


 すると彼、ちょっとだけ間を置いて、


「おいちょっと、うるさいぞ。――……ああ、わかってるって」


 と、小声で続けます。

 その口調の感じから、彼が誰かと通信していることがわかります。

 しかしだとしても、いったい、誰と?


 その疑問から逃れるように犬咬くん西のエリアに歩を進めました。

 どうやら、彼も私と同じように足跡を辿っていくつもりでしょう。


「”名無し”さんは、浜田を見かけましたか」

「見かけていたらとっくに斬りかかっています」

「はっはっは。心強い」


 乾いた愛想笑いが、彼の兜を反響して聞こえます。

 そういえばこの兜のデザイン、――ここ数日間、コウくんがあちこち持ち歩いていたヘルメットと同じ形ですねー。

 これも何かの実績報酬アイテムかしら?

 前世の”私”も知らないやつですね、これ。


 私が、がしゃんがしゃんと耳障りな音を立てながら走る青年と肩を並べていると、


「おっと」

「まあ、……当然だよな」


 わかりやすく足跡が途切れ、西エリア一帯を占領している”ゾンビ”軍団と出くわしました。

 一階のように通路ぎっしり、というほどではありませんが、数メートルおきに”ゾンビ”がたむろしている程度には混み合っています。

 面倒なのは、何匹かのゾンビがあちこちの店内に入り込んでいる点。

 集合している”ゾンビ”と違い、隠れているのをいちいち始末していくのは少し面倒かも。


「どうする? ……放っておくわけにはいかないよな……」

「ええ」


 ”ゾンビ”相手であれば多数を相手にしてもほぼ負けることはありませんが、それはあくまで、連中がやってくる方向が制限されている場合に限ります。

 どのような達人であっても、死角外の攻撃を躱すことはほぼ不可能。”終末”後のこの世の中で長生きしたければ、敵に包囲されるようなことだけは絶対に避けなければなりません。


「じゃ、犬咬くんは店内に入り込んだやつを」

「君は?」

「通路の奥にいるのを、片っ端からやっつけます」

「……不平等だな」

「ん?」

「それだと、俺が1なら君は20は相手にしなきゃいけない」

「まあ、そうですけど」

「俺が多い方をやるよ」


 私は眉を段違いにして、


「いえ。私の方が強いので、私が多い方を担当するまでのことですよ?」


 単純に、適材適所であることを説明しようとしましたが、どうも犬咬くんには通じなかったみたい。

 彼は例の”誰か”にボソボソと話しかけた後、


「若いときの苦労は、買うことにしてるんだ」


 と、私に向けて親指をぐっと立てます。


「お、おう」


 私は目を丸くしていました。何かの駆け引きかと思いましたが、別にそういう訳でもなさそう。

 女の子にはとりあえず優しくしとくタイプの人かしら。全キャラの好感度を平均的に上げた結果、最終的に男友達との友情エンディングを迎えるタイプと見た。


「よぉしっ。いくぞぉおおおおおおおおお!」


 気合い一言、彼は一陣の風のように走り去っていきます。


「…………」


 まあ、本人がやれるというのだから、きっとやり遂げるでしょう。

 ということで私、お言葉に甘えてあちこちに入り込んでいる潜伏型の”ゾンビ”を始末していくことにしました。

 それなら、チョコバーで魔力も補給する余裕もありますし。


 私は、疲れているせいかより甘みが強くなっているそれをモシャモシャしながら、まずは最も手近な家具屋さんから見回ります。


『お、お、おぉぉぉ……』


 ”ゾンビ”たちの行動は大まかに決まっていますが、時折こうして、群れからはぐれる個体もいたり。

 チョコバーを口に咥えたまま、私は《必殺剣Ⅱ》を起動します。

 そして金色に輝くナイフを”ゾンビ”に向けて振ると、レーザーブレードのようにオーラをまとった刀身が伸び、彼の眉毛から上の辺りをスパッと分断しました。

 私は、脳みそがポヨンと床にこぼれるところを見届けてから、


「そんじゃ、つぎ」


 お店を変えて、隣の洋服屋を順番に回っていきます。


 旬な国内外のオリジナルアイテムを幅広く取り揃えたメンズ系洋服屋さんのマネキンに紛れていた”ゾンビ”を、

「えーい(すぱっ)」

 つぎー。


 モダンで官能的、かつオーセンティックなデザインのレディス系ファッション小売店の下着コーナーでぼんやりしていた”ゾンビ”を、

「えーい(すぱっ)」

 つぎー。


 フリーダムでアジャイル、そしてイノベーティブなデザインによりシュリンクされたバジェットでも素晴らしいオポチュニティに恵まれる衣料品店。ちなみに”ゾンビ”は試着室に隠れていました。

「えーい(すぱっ)」

 つぎー。


 ……と、作業的に”ゾンビ”たちを始末していくと、五件目の店で異常事態が。

 すでに始末された”ゾンビ”が二匹ほど、そこに倒れていたのです。


「これは……」


 辺りを見回すと、店内の洋服と内臓が盗まれていることに気付いて……。


「あっ」


 いつだったか、美言ちゃんが地下の”ゾンビ”をスルーした時の技を思い出します。

 確か彼女、ドレスに”ゾンビ”の血を塗りつけることで、連中に紛れ込んだんでしたっけ。


 と、なると……あらら。


 犬咬くん、ちょっと危ないかも。

 

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