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JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
フェイズ3「ヴィヴィアン・ガールズの物語」
288/433

その282 ”賭博師”のひと

 その後、私たちが向かったのは、”ウエスタン・エリア”という西部開拓時代のアメリカをイメージしたロケーション。

 というのも本日撮影予定の動画は、この辺りを住まいとしている”実況姫”さんとのコラボレーション企画であるためです。


 人気の消えたこの界隈からは今にも、無法者が飛び出してきそう。

 まあ仮に拳銃で撃たれたところで、私は平気ですけど。


 ”実況姫”、――”賭博師”さんと会うに当たって、問題が一つありました。

 彼女と私、かつて秋葉原での戦いにおいて長らく同じ時を過ごしたと聞きますが、私にはその時に記憶がすっぽり抜け落ちている、ということです。

 ”賭博師”さんは前世の私とも接点がなかったので、そっち方面の情報もなし。

 ってわけで、彼女にどういう顔すればいいかわからないんですよねー。


 まあ、今回私たちがやるのはなんかのゲーム実況なわけで、適当に話を合わせるだけで大丈夫かも知れませんが。


 ”賭博師”さんがいるのは、”アウトローズ・スタジオ”と題された、かつてはコスプレ記念撮影が楽しめた写真館。

 とはいえ今そこは、生活と創作に必要なあらゆる改造が施され、スタジオだった雰囲気はほとんど外観だけしか残されていませんが……。



 その道中のこと。


「それで」

「ん?」


 珍しく美言ちゃんの方から話しかけてきたので、私は目を白黒させました。


「それで、ライカと会う算段はついてるの?」

「ええ。……今度麗華さんに、仲間の蘇生をお願いします。その時に彼女と直接会うことができるでしょう」


 ちなみに、この前バズった動画で私たちが稼いだVPはおおよそ13万ポイント。

 豪華版チキンラーメンの価格が5ポイント。

 シャワーを一回浴びるのに3ポイント。

 ペットボトル入りの飲料水が1ポイント。

 死人を生き返らせるのに20万ポイント。

 私たちは、もう少しだけVPを溜める必要があるのです。

 なのでこの、――”非現実の王国”のプリンセスたちとのコラボ動画は、避けて通れない道なのでした。


「でも、へんなの」

「?」

「私、いくつかここでつくった動画をみたけれど……どいつもこいつも、うそつきばかりじゃない」

「うそつき、というと?」

「みんな、おもしろくないのに、おもしろいふりをしてる」


 なるほど。少しだけわかる気がする。


「例えふりでも、だんだんその気になるものです。おままごとでお人形を子どものように感じたとしても、それは決して嘘の気持ちじゃない。そうでしょ?」

「わからん。おままごと、したことない」

「えっ。それマジ? 一度も?」

「うん」

「……でも、お人形一つあればできることですし……」

「もらったことないの。お人形」

「へ、へえ……」


 やっぱりこの子、情操教育になんか問題があったんじゃ。


「じゃあこんど、二人でやりませんか。おままごと」

「いらない。バカみたいだから」

「Oh……」


 などとおしゃべりしているうちに二人、”アウトローズ・スタジオ”へと到着します。


「おじゃましまあす」


 そこで私の目に入ったのは、二人の少女が小さなテーブルを挟んで向かい合っている姿。

 カウボーイハットを被っている方は”賭博師”さん。

 もう一人は、ふりふりの童女向けドレスを身にまとった女の子で、歳は美言ちゃんと同じくらいでしょうか?


「さあ、タマ、……引き金を引け!」

「……うう、うううう……」


 テーブルの上にはリボルバー式の拳銃が一丁あって、――タマと呼ばれた少女は、震える手でそれを自身のこめかみに当てて、……、


「――ッ!」


 私は反射的に走り出していました。

 そしてタマちゃんが持つリボルバーの銃身を引っつかみ、その銃口を親指で塞ぎます(良い子は真似しちゃダメ)。

 私の手のひらの中で、行き場を失ったエネルギーが膨張し、……瞬間的に消滅していく感覚がありました。

 手を開くと、弾丸の爆発力により潰れたリボルバーが、床にごとりと落下します。


「おー、いて」


 手にくっついた鉄片を、ぱっぱと振り払いつつ。

 見たところ手のひらには、火傷一つありません。

 わおわお。改めてバケモノじゃん、私。


 ”賭博師”さん、そんな私を呆れたように見て、


「何やってんの、オメー」

「それはこっちの台詞ですよ」


 テーブルの上には、並べられた五つの弾丸。

 なんかこの絵面、映画とかで見たことがある、ような。


「ひょっとして、――ロシアンルーレットでもやっていたのですか?」

「うん」

「なぜ?」

「ちょっと死のうと思って」

「は?」


 私は耳を疑いました。


「どういう悩みがあってそういう結論に至ったかわかりませんが、……人生相談くらい、のりますよ?」

「いや、そういうんじゃねえよ。――オレサマとこいつ、どっちかのドタマぶち抜いて、……そんで、麗華に蘇りを申請するのさ」

「なんでまた」

「ああ見えて”アビエニア城”は警戒厳重だからな。そうでもしねーと、内部に入り込めねえ」


 小柄な彼女は、カウボーイ・ハットを指先でくるくる弄んでいます。


「でも、いくらなんでもそれ、リスクが高すぎます」

「虎穴に入らずんば、っていうだろ。ぶっちゃけここんとこ、手詰まりなのさ」

「だとしても、……」


 私は視線を泳がせて、


「……今日は、私とのコラボ動画の予定だったはずでしょ」

「その方が、衝動的な自殺にリアリティがあるじゃないか」


 そして何が楽しいのか、HAHAHAHA、と、笑います。

 ……私、この人と本当に数ヶ月も一緒に過ごしたの?


「安心しろよ、――ちゃーんとゲームの用意はしてあるから」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 記憶をなくしてからここまで頑張って読んできましたが、ギブアップです。 第一話から、ある意味読者と一緒に記憶を積み上げてきたものを投げ捨てた主人公は、もはや死んだとしか思えません。
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