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JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
フェイズ3「非現実の王国で」
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その251 作戦会議

 ギラリと太陽が照りつける中、私たちは木陰になっているベンチとテーブルを見つけて、そこに安住を見いだしました。


 多少改装を加えられているとはいえ、やはりそこはディズニャーランド。

 テーマパークに来たみたいです。テンション上がりますね~。


 私たち、明日香さんが用意してくれたペットボトル入りの水を飲みながら、一息つきます。


「”解放奴隷”になってからというもの、飲まず食わずでも大丈夫になっちゃってるんですけどね」


 と、苦笑気味に明日香さん。

 彼女、はしたなくも上着をちょっとまくりあげて、


「見てくださいよ、このお腹。もう完全にライザップされちゃって。ぶーちぶー♪ ぶーちぶー♪ 毎日体重計にのってたころの私に見せてやりたいくらい」


 いくらこの場に女子しかいないとはいえ、ちょっとはしたないですよ?

 ほらぁ、綴里さんなんか耳まで真っ赤にしちゃって。

 初心な人だっているんですから。


「……さて。さっそく本題ですが」


 明日香さんはぱちんと手を打ち、話題を切り替えました。


「まず、こちら側の進捗について、お話ししますね」

「お願いします」

「とりあえず、苦楽道さんとは連絡をつけています。あちら側はもちろん、喜んでセンパイの記憶を回復させてくれるって。……ただ、今は肝心の百花さんがいないらしくて」

「いない?」

「はい。なんと百花さんったら昨日の夜、動画をアップロードした後、こっそり雅ヶ丘にセンパイを捜しに出ちゃったんですって。戻りは夜になるそうです」


 なんと。入れ違いになっちゃってたわけですか。

 ちょっと安心した、というか。複雑な気分。

 死刑執行のタイミングが、ほんの少しだけ延期された、みたいな。


「とはいえ、これは些末な問題と言えるかも知れません。……私たちの使命に比べれば」

「ですねー」

「なんとしても、康介くんを蘇生しましょう。あと羽喰彩葉ちゃんも」


 そこで綴里さん、間髪入れずに、


「それと優希ちゃん……神園優希のことも」

「ええ。この際ですから、みんな生き返らせちゃいましょうよ。竹中くんも、勘坂くん、高田くんだって……! 死んじゃった雅高生の名簿取り寄せて、みんな、みんな……!」


 明日香さん、なんだか「殺されたみんなはドラゴンボールで元に戻れるんだ、気にすんな」とでも言わんばかりの口調ですが。


「そんなに都合良く、ぽんぽん死者を蘇らせられるものなんですか?」

「ええ。麗華の持っているアイテム、――《魂修復機ソウル・レプリケーター》はホント、すっごいらしーんで。私は直接みたことないですけど」

「ふーん……」


 どうも彼女、その《魂修復機ソウル・レプリケーター》とやらに全幅の信頼を置いているよう、ですが。

 私にはとても、そこまで都合の良い話には思えません。何か裏があるような気がしてならないのです。

 生来の後ろ向きな性格がそう思わせているだけかもしれませんが、――これまで幾度となく解決を試みて、その糸口すら掴めなかった”死”の手から、人類がそう簡単に逃れられるとは思えなくって。


「できれば麗華さんと話して、その《魂修復機ソウル・レプリケーター》だけでもみんなに使えるよう説得したいところですが」

「あっ、それは無理です、たぶん」

「無理?」

「私もそれほど事情通という訳ではないのですが……。それができてたらそもそも、恋河内百花さんがやってると思います。百花さんってば、センパイよりも強くって、センパイよりもヨーシャしないので」


 あー。

 そういえばそっか。


「だから結局、今の私たちにできるのは、――正攻法しかないのかな、と」

「正攻法……」

「はい。……だから、」


 明日香さん、にっこり笑って、


「やりましょ。動画投稿」


 えー……。

 マジでそれしかないのん?

 ないわー。



 ”非現実の王国”における国民の総数は、なんと驚き、十万人以上、とのこと。

 入国に年齢と性別の制限がある”アビエニア”にいる分にはそういう感じはしませんが、”グランデリニア”は結構な混み具合みたいですね。


「私たちはその、十万人を面白がらせる動画を作らなくちゃいけないわけですか」

「ええ。……ちなみにセンパイ、唄はお得意?」

「いや、ぜんぜん」

「綴里さんは?」


 するとメイド服の少女は少し気まずげに、


「……カラオケなら、一人で行く程度には好きですが……正直、多くの人を惹きつけられるレベルに達しているかというと、少し難しい、かも」


 へえ。ヒトカラ勢とは、ちょっと意外。


「そっかぁ~」


 言いながら明日香さん、メモ書きの”うたってみた”にバッテンします。

 そして、


「じゃ、ゲーム実況系は……」

「ゲームはわりと得意ですけど、……しゃべりがダメですね。あれ、意外とマルチタスクを要求されますし。ジョーク飛ばしながらキャラも操作してると……わりと短時間で頭がくらくらしてきます」

「おや? その口ぶり、あるいはセンパイ、……試したこと、あります?」


 私は視線を逸らして、口笛をピーピプーと吹きました。

 明日香さん、すかさず”ゲーム実況”の欄に”△”と書き込みます。


「となると、やっぱり王道を征く”やってみた”系動画になっちゃうのかな~」

「各種魔法・スキルなんか、派手なのを動画にするというのは?」


 と、意外にもノリノリな綴里さん。


「残念だけど、上位のヴィヴィアンはたいてい”プレイヤー”だから、そーいうのは飽きられちゃってるんですよね~」


 ……いやマジで、この調子で自分たちの可能性を探っていく流れ?


「ちょいと、明日香さん」

「?」

「地道にその……オモシロ動画を作るのもいいのですが、我々だって時間が無限にあるわけではないんですよ」


 死者の蘇生は、自分のしくじりを決着させる数少ない手段だと思いますが、それにかまけて未来を疎かにするようなことがあってはいけません。

 私たち”プレイヤー”には、今も苦しんでいる数多くの人々を救う力があるのですから。


「わかってますって♪ ……でもでも私、ちょっと楽しいんです。……だって、いましているのって、世界が平和だったら大学の部活とかでやっていたかもしれないことですから。本物の青春って感じですから……」


 明日香さん、その笑顔の中に、ひとさじの陰りを見せながら。

 ……まー、楽しくて人助けにもなるのであれば、それは素晴らしいことだとは思いますけどねー。



 その後、”作戦会議”は数時間ほど続きました。


「とにかく、デビュー作はどっかーん! って、インパクトのある動画がいいな、って!」

「普通に自己紹介系じゃダメなんですか?」

「そーいうのって、たいていキャラの方向性が定まってなくて滑るハメになるんです。あとあと思い返して『ウワーッ恥ずかしい!』ってなるって相場が決まってるんですよ」

「ほう。相場が」

「そして、猫を被りまくった初期動画が、あとあと呪いのようについて回るハメになって。――ああ、恐ろしい恐ろしい……」


 ……なんか、明日香さんこそ経験者の感じがするんですけど。

 気のせい?


「でも、センパイって案外、オタク受けしそうな雰囲気あるんですよねー。話してみたら意外と楽しい根暗系女子、ていうか。『クラスでアイツに惚れてるの俺だけだろ』って、実は男子みんなが思ってる、みたいな。隠れアイドル系、みたいな……」

「はあ」


 あれいま私、面と向かって侮辱されました? 気のせい?


「だからきっと、ネタ選びさえ外さなきゃ、うまくいくと思うんですけどねー」

「ふむ」


 っていうか彼女、他ならぬ私をプロデュースする雰囲気出してない?

 私、やるとしても裏方側のタイプだと思うんですけどー。


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